1. トップページ
  2. 皆はあの子に夢中なり

有朱マナさん

性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

皆はあの子に夢中なり

15/07/18 コンテスト(テーマ):第八十七回 時空モノガタリ文学賞 【 私は美女 】 コメント:0件 有朱マナ 閲覧数:1012

この作品を評価する

 虫みたいなヒソヒソ話が教室で煩い。
「やっぱ、イオリちゃんは可愛いよね。」
「イオリちゃん、今彼氏いないんだって。」
「えー、じゃあ、俺もらっちゃう〜」
「お前なんかもらえるわけねーだろ」
「顔だけで良いなら、やっぱりサヨだけど、あいつはな…」
「…可愛げがないとでも言いたいんだろ?お前は」
「…本人に聞こえる笑」
クラスの男子のこのような会話は、サヨにとって“悪”だった。

 イオリは、クラス1と言って良いほど、モテる。顔は大したことないのに。顔であれば、私の方が上なのに。いかにも、女子らしい仕草が男にうけるらしい。サヨは周りに「美人」認識されていた。しかし、どういうわけか性格が男に受け入れられなかったようだ。

 授業終わりのこと、サヨは先生にノート運びを頼まれる。冊数は40冊。
「手伝おうか?」
クラスの男子Aが言うが、きっぱり断った。ここが、男に言わせたら、「可愛くない」ポイントなのだろう。イオリであったら、喜んで手伝ってもらっていただろうが。
 一人でノートを抱えながら歩き、階段を下りようとする。その時だった。
 バサッ………
 ノートを一気に落としてしまう。
 …やってしまった。サヨは慌ててノートを手に取り抱え込む。すると、階段の上の方から声がした。
「さっき手伝ってもらえば良かったのに〜」
言ったのはサヨ。サヨの眼差しは温かくない。
「…私が手伝いましょうか?男の代わりに」
「余計なお世話です。イオリさん。」
サヨは、イオリを無視して階段を下り始める。それにイオリはついてくる。
 イオリはサヨの背中に向かって呟いた。
「サヨみたいにしていたら、男って近づいてこなくなりますかね?」
サヨは立ち止まらず言う。
「それ、私に喧嘩売ってるの?」
敵を見つけて投げ捨てるかのように、言い放った。
「売ってないよ。寧ろ、仲良くしようと思ってるの。反対者同士。」
「反対じゃない。寧ろ、似た者同士だ。」
あっさりと二人の会話は進む。気が付けば、職員室にたどり着くことができた。ノートからやっと解放されると感じたサヨだった。
 
 高校から帰る時、にわか雨が降っていた。サヨは幸運なことに、折り畳み傘を持っていた。
 一人で帰ろうとした時に、後ろから声がする。
「サヨ、傘に入れてって!」
すぐ誰の声かわかる。わかるというより、わかってしまう。イオリだ。
「男に入れてもらえば?」
「男と相合傘なんて、嫌だよ。」
「私は、あんたと相合傘する方が嫌だけど。」
こう言ったのにもかかわらず、イオリは雨の中ついてきた。そして、無理やりサヨの傘の中に入ろうとした。
 サヨはイオリを睨み付けても、イオリは動じなかった。サヨは諦めて、途中までイオリを傘に入れていく。

 翌日、何故だかサヨとイオリが相合傘をしていたことが、話のタネになって広まっていた。
 クラスの男子が煩くしている。
「…凄いよ。あの二人の組み合わせ。なんか、美女二人って感じ。いや、イオリちゃんはオールマイティー可愛い。サヨは、顔だけ美人かな?笑」
今回のセリフは、特に煩いように感じた。虫が周りを飛行しているようだ。
 イオリがそのセリフを言い放った男のところへ突然近づいた。
「オールマイティー可愛いって、意味わかんないよ?私の全てを知らないくせに。」
突然過ぎる出来事により、その場の空気が一気に凍った。誰も何も言えない。
「…そうだね、俺は、イオリちゃんの全てを知らないもんね。」
へらへら笑うが、誰も救いの手を差し伸べなかった。
 ただ、これだけは誰が見ててもわかった。イオリが怒っていたということを。

 「あんなこと言ったら、男に嫌われますよ。」
イオリにサヨは言う。イオリは、自動販売機でリンゴジュースを買い、飲んでいたところだった。
「別に良いよ。うんざりだったから。」
イオリの髪の毛が風によって靡く。さらさらと。
「誰かと比べられるのって、嫌いだから。何の罪もないのに、何で比べられないといけないんだろうね。みんなバラバラな生き物なのに。変だよ。」
サヨは黙って聞く。イオリの姿を見ながら。
「だからね、ポイってゴミ箱の中に入れちゃった。この飲み干したリンゴジュースのパッケージみたいに。」
 サヨはイオリのセリフを噛み締めた。特別心に響いたわけではないが。何となく。

 それから、どういうわけか、二人は一緒に過ごすことが多くなった。男からは、色々な意味で怖れられる存在になったのだった。二人とも。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン