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南野モリコさん

長い休眠から覚め、再始動しました。 よろしくお願いします。 ツイッター https://twitter.com/hugo_6892

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将来の夢 一生文章を書き続けること。
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コウノトリの新サービス

15/07/14 コンテスト(テーマ):第八十八回 時空モノガタリ文学賞【 罠 】 コメント:4件 南野モリコ 閲覧数:1226

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及川ノリユキが体に異変を感じたのは、1週間以上前だった。
仕事が終わり1人電車に乗ると、立っていられないくらい体が重い。
だるさと吐き気、そして、腹部に異物感がある。何ていうか、蠢いている、というか。
先々週、同窓会に行ってから、じわじわと始まったのだ。飲み過ぎたせい?それとも、その後のあれ?

マンションに帰り、ソファに横になっていると、急に目の前が輝いたかと思うと、「ゆりかごの歌」のメロディーをBGMに、長いくちばしを持った白い大きな鳥が現れた。

「初めまして、コウノトリです。お世話になっております」

びっくりして、口が聞けなくなっている俺を無視してコウノトリは話し始めた。

「先代より、私たちは世界中のパパとママに赤ちゃんと幸せを運んできました。しかし、遠路はるばる運んでも、喜ばないママが増え、業界でも問題になっておりました。そこで、私たちコウノトリは、新サービスを始めました。様々な事情で妊娠できないママがパパに妊娠を委託できるというサービスです」
「委託ぅ?」
「出産とはパパとママ2人で行う聖なる仕事であるというのが私どもコウノトリのビジネス理念です。もちろん、出産までの医療的なケアは、コウノトリ業界が責任もってさせて致します」

俺は、同窓会の時のことを思い出した。その前日、俺は予期せぬ問題が起きたことで荒れていた。やけ酒したその勢いで、久しぶりに会ったみゆきと、一夜を共にしてしまったのだ。

「あの1回でみゆきが?俺に委託?冗談はよせよ」
「新しいサービスですので、すぐにご理解出来ないのもごもっともです。明日また参りますので、気持ちの整理をしておいて下さい」

そう言うとコウノトリは、どろんと煙を残して消えていった。

気がつくと、俺はソファの上で眠っていた。部屋にうっすらと鳥の匂いが残っている。ああ、夢ではないんだ。

出社したものの、体が気になって仕方なかった。腹を触ると、確かに日に日に育っている気がする。ここに新しい生命が宿っているんだな。俺もパパになるのか。あ、今動いたかも。なんて、感動している場合じゃない!みゆきに電話だ、メールだ。

帰宅すると、コウノトリは再び現れた。

「言い忘れたことがありました。あなたに出産と子育ての意志がない場合、お腹の赤ちゃんを誰かに委託する方法がひとつだけあります」
「どうすればいいんだ?」
「3か月以内に、及川ノリユキさん、あなたの子供を産みたいと望む女性を見付けて、その女性にお腹の赤ちゃんをバトンタッチすればいいのです。望まない妊娠をした女性と子供が授からずに悩む女性、どちらもウィンウィンのサービスだと好評を頂いております」

俺の子供を産んで欲しいのは加奈子しかいない。大学時代からつきあっている、美人で性格もいい、自慢の彼女だ。
でも、同窓会の前日、プロポーズしてふられた。

「ごめん。私、結婚はムリなの」

まさか断られるなんて。晴天の霹靂に、俺は同窓会で泥酔した。それでみゆきと、つい。

その時、携帯が鳴った。みゆきだ。



「及川君、急に呼び出して、ごめんね」
待ち合わせのカフェにすっ飛んで行くと、加奈子もそこにいた。

「さあ、これで2人は結婚できるわね」

訳が分からず、目をはとぽっぽ状態にしている俺に、みゆきは理路整然とした口調で説明を始めた。

「加奈子がプロポーズを断ったのは、自分に子供が出来ないって分かったからなのよ。加奈子の悩みを聞いた私は、コウノトリの新サービスを利用することを勧めたの。あの時は、加奈子も同意の上で、及川君をハメたってわけ。あの日が私のチャンス・デーだったから、必死だったわ〜」

それでか。やけに積極的だと思ったのだ。

「生まれてくる赤ちゃんは、遺伝子的にも正真正銘2人の子供よ。これで結婚を阻む問題はなくなったわね」

全ては女二人の手で仕組まれたことだった。俺の知らない水面下で話が進められていて、ハメられたような気もしないでもないが、おかげで、俺と加奈子は無事、ゴールイン。加お腹にはベビーもいるし、ダブルにハッピーだ。もちろん、加奈子のお腹の中に、だ。これも、みゆきが「ひと肌脱いで」くれたおかげだよな。

「でもさ、理由はあれだけどさ、みゆきが俺とエッチするの、よく許したね」
疑問だったことを聞くと、加奈子はニヤっと笑った。
「みゆきには、ペナルティーがあるからね」
ペナルティー??
「大学2年のバレンタインの時、みゆきがノリユキにチョコを渡そうとしていたでしょ。その日、私は朝一番で、風邪をひいたって嘘ついて、苦しそうな声で電話したのよ。ノリユキったら、まんまと引っかかって、アパートまで来てくれたわね。私たちがカップルになれたのは、私が罠を仕掛けたからよ。あの1回は、お礼だと思えば安いもんよ」

女ってコワい。


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このストーリーに関するコメント

15/07/19 草愛やし美

ミナミノモリコさん、拝読しました。

とても面白い設定ですね、委任できちゃうなんて素晴らしい? いや、困るかも? コウノトリとの主人公の会話が、めちゃ愉快です。

でも、これが罠だったとは、しかも複雑な罠。いやはや、やられた〜って感じです。面白かったです。

15/07/19 南野モリコ

草藍やし美さん、感想をありがとうございます。

世の中には、様々な事情で授かった命を下ろしてしまう人もいれば、授からなくて悩んでいる人もいる、
それがトレードできたならめでたしめでたしなのにな、
と思ったとこらから膨らめていきました。

グロくならないように、明るいコメディーになるよう工夫しました。

15/08/06 滝沢朱音

コウノトリの委託サービス、わあ、思いもよらない設定で面白かったです!
これ、ほんとうに実現したら、幸せな世の中になりそうですね。

15/08/06 南野モリコ

滝沢朱音さん、感想をありがとうございました。

こういうサービス?がいつか現実になるといいんですけどね〜。
少子化問題も解決しますよ(?)

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