沢藤南湘さん

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叛乱

15/07/04 コンテスト(テーマ):第八十六回 時空モノガタリ文学賞 【 掃除 】 コメント:0件 沢藤南湘 閲覧数:1278

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 ドローンの規制が、東京オリンピック・パラリンピックの前年に強化され、ドローンの事故は前年の三割に減った。一方それと反して、少子高齢化、共働きにより一般家庭でも掃除ロボットがマイカーの台数を超えるほど普及し、事故が散見し始めた。まだマスコミには報道されるのはまれであった。
また、オリンピックバブルがはじけ、企業は経費節減と社員や派遣の解雇に躍起になっていた。
 昨年、定年延長も終わった深山は、文筆活動で多少は金銭を得て、夫婦で旅行や温泉めぐりを堪能するつもりでいた。
 しかし、世間は厳しく、あらゆる小説コンテストサイトに小説を投稿するも常に落選の憂き目を見、小説では小遣いを稼ぐことができないと悟った。
 法改正により、年金の受給額も計画していた金額の八割になり、深山は、やむを得ず働くことを決意した。自動車会社で制御関係の業務を行っていた経験を生かすべく、ハローワークに履歴書を持参し面談を受けたが、期待していた職が無い。
「深山さん、ここはどうですか」ハローワークの担当者が、紹介先をクリアーファイルから出して、深山の前に置いた。
 会社名「クリーニングハウス」と書かれた書類を目で追った深山は、愕然とした。
「深山さんの立派な経歴の持ち主でも、失礼ですが、あなたのお年では、このようなお仕事か警備員ぐらいしか残念ながらありませんよ」
 それでもこのような仕事もしばらくたつと応募者が現れ、無くなってしまうと担当者が、どうするのかと急かしてきた。
 深山は、分かったといってこの会社にすると答えた。
 翌日、深山はクリーニングハウスに行って面接を受けた。
「深山さんは、ご立派な経歴をお持ちなんですね」
 深山の娘と同年代に見えた若い女社長が、渇ききった声でいいそして、掃除会社とは思えない深山の得意の分野であるコンピュータ制御やロボットについてのかなりの専門的ないくつかの質問をし、採用の要否は一週間後に連絡するといって、腰を上げた。
 一週間後。女社長が、深山がソファに腰を下ろすなりいった。
「うちは、他の清掃会社と違って、社員に掃除はさせません。掃除ロボットにさせます。その制御を社員の方にしてもらいます。その方面に明るそうな深山さんを採用させていただきたいのですが、いかがでしょうか」
深山は、唖然としながら、ただ頷いた。
 勤務先は、新衆議院第一議員会館で、担当は、八階であった。
 一年後。床、壁、天井を掃除するための二足歩行を含む四種類のロボット十二台を制御するのに同僚の中では一番上手になっていた。
 この一年で、家庭用も業務用も掃除ロボットの事故が多発し、国会では、ロボット使用の規制法案が野党の人間復活党から出されたが、与党の民自党の反対により審議がストップしていた。
 深山は今日も八時に、六階の集中オペレーションルームに入り、コンピュータの前に座った。床が動いた気がした。
(めまいか)神棚から榊が落ちた。
「地震だ」先輩社員が怒鳴った。皆、机の下に隠れた。揺れがおさまった。
「ロボット稼働停止」皆、コンピュータでマニュアル通りの操作を終え、廊下に出て非常階段に向かった。建物の被害は見当たらなかったが、他の階から悲鳴や呻き声が聞こえてきた。
「なんだ、いったい何が起こったんだ」先輩社員が叫んだ。
「みんな、担当の階を見に行ってくれ」とマネージャーがいった。
 深山は、八階に向かって、階段を上って驚いた。ロボットが、議員たちを攻撃していた。
 議員たちが悲鳴をあげながら、逃げ惑っていた。
 深山は、オペレーションルームに戻った。すでに戻っていた社員は、コンピュータに向っていた。
「早く扉を閉めて、鍵をかけてください」先輩の社員がいった。
「深山さん、ロボットの制御が効かない階がある。深山さんの階も確認してください」マネージャーの声が震えていた。
 深山は、自分の画面を覗いた。そして、各階の様子を確認した。人間復活党の議員室がある六、七、八階で、ロボットが暴走し、議員たちを追い回し、危害を加えていた。
武装したSATの隊員たちが、窓を打ち破って入ってきて、議員たちを救助しながら、ロボットに向かって次々と網を噴射している映像に変わった。
深山は、キーを間断なくたたき続け、やっと八階のロボットの動きを止めた。すぐに、六階、そして七階の担当者のところに行き、制御方法を教えた。
 その事件の一か月後、人間復活党から出されたロボット使用の規制法案が全員一致で可決され、国会は閉会した。昨日から、議員会館も静寂さを取り戻した。
 三週間前に会社から与えられた作業服に着替えた深山は、業務用エレベータに乗り八階の廊下に掃除機を運んで、コンセントにプラグを差し込んだ。


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