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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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プリンセスと自転車

12/07/28 コンテスト(テーマ):第十回 時空モノガタリ文学賞【 自転車 】 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:2784

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 亮介は駅から事業所までの近道を急いでいる。
 朝一番の会議までに資料を作成しておかなければならない。しかし、そんな慌ただしい中で思うのだった。
「今朝も彼女とすれ違うかな?」

 彼女とは、多分事業所近くに住む女性だろう。年の頃は二十五歳前後。
 きっとOLなのだろう、いつも亮介が事業所へと徒歩で向かっている時に、自転車を走らせ、軽快に駅へと飛ばしていく。
 その姿は若々しく、爽やかだ。

 亮介はそんな彼女の俊敏な・・・・・・。
 いや、まるで出陣のような勇姿を目にし、毎朝元気をもらってる。

 だが、この近道には難所がある。
 それは約30メートルの区間だけだが、道幅は極端に縮まり、その上に片側が塀。そして、もう一方が川なのだ。

 当然、立て札が立っている。
「危険! 自転車から下りろ」と。

 亮介は知っていた。彼女はこの警告を守っていないことを。
 そして他の人たちも認識していたのだろう、彼女がその難所に差し掛かってくると、そこへとは踏み込まず、手前で待つことを。
 もちろん彼女はそれに応え、スピードを落とすこともなく、ほれぼれとするカッコ良さで朝の風を切り、難所を走り抜けていく。

 亮介はそんな我が儘な振る舞いをする彼女が、どことなく愛らしく、この町のプリンンセスのように思えて好きだった。

 そして、その朝も・・・・・・。
 亮介がその難所の真ん中あたりに来た時に、彼女が猛スピードで突っ込んできた。
 万が一、こんな場面に出くわしたならば、・・・・・・。
 無論のことだ、レディーファーストで、ヤモリのごとく塀にペタリと貼り付いて、彼女に最大幅の道を確保する。これがジェントルマンとしての作法なのだ。

 しかし、その朝は違っていた。亮介も急いでいた。
 真正面に彼女と目が合った。
 どうしようかと一瞬戸惑った。
 彼女もこんな事態はきっと初めてなのだろう、「なんで? 信じられないわ」という風に、ギョッとしたのが見て取れた。 

 そして、そんな間合いのことだった。多分、彼女は急ブレーキを掛けたのだろう、スピードがぎゅっと落ちた。
 そしてその結末は・・・・・・バランスを崩し、ユラユラと揺れ・・・・・・ドボン。

 町のプリンンセスが1メートル下の川に、自転車ごと落下。
 これはまことに一大事だ。
 亮介は手を差し伸べて、めくれ上がったスカートの奥のパンツまでズブ濡れになったお嬢さんを引き上げた。

 きぅとビジネス街にある一流企業のOLさんなのだろう、通勤服といえども・・・・・・・下着まで高級そう。
 しかし、残念なことだ。ふっくらした胸のあたりに・・・・・・、川藻がへばり付いている。

 亮介はそのドローンと長くって、異様に緑色の藻を手でそっと取ってやる。
 だが、プリンンセスはよほど恥ずかしかったのだろうか、亮介の手を払いのけ、家の方へと走り去って行った。

 それから自転車は1週間ほど川の中に放置されたままだった。
 そして、それ以降は駅まで歩いて通う彼女を時々見掛けたことがあった。


 あの出来事からもう何年経っただろうか?
 亮介が川から救い上げたプリンンセス。
 これも縁なのか、今は連れ合いに・・・・・・。
 いや、女王様として我が家に君臨し、やっぱり警告無視で威張ってる。

 そして最近つくづく思うのだ、亮介は。

 自転車1台くらい川に落ちても・・・・・・プリンンセスの性格は変わらないものだと。


                              おわり


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このストーリーに関するコメント

12/07/30 泡沫恋歌

楽しく拝読しました。

確かに、自転車一台で人の性格は変わりません。
それよりも自転車一台の犠牲でプリンセスを手に入れた主人公は
幸せ者だと言えましょう!

面白かったです。

13/11/29 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

自転車一台で、女王様にかしずくことに。
人生、なにがどうなるかわかりませんね。

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