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最期の掃除

15/06/15 コンテスト(テーマ):第八十六回 時空モノガタリ文学賞 【 掃除 】 コメント:2件 るうね 閲覧数:1124

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 俺は公園のベンチに腰かけたまま、数年前の夜のことを思い返していた。


『やあ』
 夜の公園で掃除をしていた俺に、そいつは親しげにそう声をかけてきた。
 外見はクラゲのようだが、頭に二つ、緑の目がついている。その目は理知的な光を放っていた。
 宇宙人なのだろう。
 上空にはUFOらしきものも、ぷかぷか浮いていたりするし。
 俺が黙っていると、その宇宙人らしき存在は首、というか頭全体をかしげた。
『あれ、言葉が通じてないのかな』
「いえ、通じてますよ」
 俺がそう答えると、宇宙人(仮)は嬉しそうにうなずいた。
『よかった。翻訳機が壊れたかと思ったよ』
「いちおう聞きますけど、あなた、宇宙人ですよね」
『いかにも』
 (仮)が取れた宇宙人は、大仰に首肯し、
『このたび、私はソーラン星から、降伏勧告の使者として、この地球にやって来ました』
「降伏勧告?」
『我らの星の王は地球を支配下に収めたいとお考えです。ああ、抵抗は無駄ですよ。こちらは地球人の遺伝子を解析して、人間だけを消滅させる兵器を開発しました。一発で地球人全てを消滅させることができます』
「はあ」
 俺は間の抜けた返事をした。他にどういう反応を示せというのだ。
「まあ、それはいいとして。その使者が、なんで俺に声をかけたんです?」
『恥ずかしながら、この星の政治体制がよく分からなかったので……いったい地球の王、支配者は誰なんですか?』
 なるほど。たしかに、この星の支配者は、と問われるとよく分からない。
 はてさて、どう答えたものだろう。
 と、不意にある考えが浮かんだ。
 俺は宇宙人に言う。
「この星に、支配者と呼べる存在はいません。いくつもの国に分かれていて、それぞれの国に支配者がいるのですが、その支配者もころころ変わりますので」
 それを聞いて、宇宙人は困ったようだった。
『うーん、それではどうしたらいいんでしょうか』
「とりあえず、その降伏勧告は俺が承っておきますよ」
『お願いできますか?』
「ええ」
『では、地球の時間にして七十二時間後までに、降伏するかどうか、ご返答ください。返答は電波通信でけっこうです。もし返答がない場合は、勧告を無視したものとして件の兵器を使用させていただきます』
「分かりました」
『それでは』
 そう言うと、宇宙人はふわりと浮きあがり、その姿は上空のUFOへと吸い込まれていった。


 そして七十二時間後、地球人類は消滅した。


 新しく地球の支配者となったソーラン星人たちは、とてもきれい好きだった。なにより、リサイクルの技術が凄いので、ゴミ自体をほとんど出さないのだ。そんな彼らを最初、俺たちは歓迎したが、ある時からひどく虚しさを感じるようになった。不本意ながら、掃除をすることが俺たちのアイデンティティの確立に繋がっていたのだろう。地球を汚す人類を掃除≠オたことを間違いだとは思わないが、さすがにやり過ぎたかもしれない。
 毎日、俺はチリひとつ落ちていない公園を、ただベンチに座ってぼんやりと見つめ続ける。雨の日も風の日も。他にやることもない。やがて、自分のサビだらけの体を見て、気づいた。俺自身が無用の存在、ゴミになってしまったことに。
 俺はベンチから立ち上がる。そして、いまはもうほとんど使われていないゴミ処分場へ向かって、ゆっくりと歩き出した。


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このストーリーに関するコメント

15/07/04 凪野裕介

始めまして
作品・読了です。

人類・・・あっさり滅亡しちゃいましたね(笑)
そして自らゴミになってしまう所に悲哀を感じました。

ちなみにですが、よく宇宙人やってきて
圧倒的な戦力の差で地球を侵略する映画などありますが
それだけ技術が優れているという事は政治システムや社会
の仕組みも優れているという事なので

このお話のようにリサイクルシステムが圧倒的に優れている
相手なら侵略されちゃった方がいいのでは?とか
ちょっと思いました(笑)

全滅させられるのは嫌ですが(笑)

15/07/04 るうね

るうねです。
コメント、ありがとうございます。

なぜか、私の作品では、よく人類が滅んだり、滅びそうになってたりします(笑)。
掃除、ということで一番初めに思い浮かんだのが、人間の根絶でした。

「見ろ! 人がゴミのようだ!」

とは言え、人間がいなくなりゴミも出なくなれば、それを目的に作られた物は無用の存在になってしまうわけで。そのあたりの悲哀が伝わったようで、嬉しいです。
お読みいただき、ありがとうございました。

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