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冬垣ひなたさん

時空モノガタリで活動を始め、お陰さまで4年目に入りました。今まで以上に良い作品が書けるよう頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。エブリスタでも活動中。ツイッター:@fuyugaki_hinata プロフィール画像:糸白澪子さま作

性別 女性
将来の夢 いつまでも小説が書けるように、健康でいたいです。
座右の銘 雄弁は銀、沈黙は金

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アタシの消失≠スキゾフレニア

15/05/31 コンテスト(テーマ):第八十三回 時空モノガタリ文学賞 【 時間ぎれ 】 コメント:6件 冬垣ひなた 閲覧数:1412

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「玉ネギが、川に、飼ってる」
言葉のサラダと呼ばれる領域。
どうしよう?そこに辿り着いたら、きっとアタシは、アタシでなくなる。

病院の大部屋のベッドで、独りごとをこらえるアタシは改めて時計を確認する。時刻は麗しのミッドナイト。なのに、別のベッドからラジオが聞こえるのは何故?
まぁ、みんなは文句言わないけどね。
悪化と診断され、外出禁止の保護室入りは誰もが嫌う。
この精神病院でともすれば一生顔見知りという相手、無用なトラブルは避けたいのだ。かく言うアタシもスルーの方向だし。
ベッドに座り補助灯のオレンジの明かりの下で、アタシは思索にふける。
アタシ最近眠れないんだけども、今度の診察で眠剤替えてもらおう。
救急車で運ばれここに来た時は、心臓が止まる妄想で身体も痛かった。
やんごとなき方と知り合いだとか。
誰かが数字で指示を与えるとか。
天使と悪魔が戦っているとか。
そんな世界で、アタシは手帳を開き鼻歌で作った曲に歌詞をつけていく。
正しい言葉をラジオが繋ぐ。
動き出したのは、忙しさにかまけて放置し錆びついていた、アタシの脳の歯車だった。

統合失調症。
幻聴と妄想の二大症状のほか、誰かに見られている感じがする、自分の考えが他人に知れ渡っていると感じる、幻味、幻臭、体感幻覚……。
記憶や病識(病気の自覚)はある場合も多くて、今は医学が進んでるし、ひたすら予後不良は入院患者でもそういない。アタシは幻聴が音限定だったからマシだけど、口からとめどなく吐きだされる言葉にうんざりはする。
どんな治療するかって?
闘病=闘薬。
精神疾患って脳の障害だから、薬効よりバラエティ豊かな副作用に悩みながらの投薬治療ってことになる。
アタシなんか最初アゴが痺れて涎垂れて食事も出来なかった。副作用止めの薬飲んだら、その薬がまた副作用起こしてさ。
でも、先生がすぐ薬減らしたら治まった。副作用つらくて断薬=悪化のルートは経験済みだったから、助かったよ。
先生のお陰で妄想が晴れてきたアタシは、身内に平身低頭し、厨二病も裸足で逃げ出す黒歴史に凹んだ。アタシ、幾つ大人の階段のぼれば治りますか?
何とか無理なく普通の人をやれるレベルまでに回復したアタシは、黒々とした手帳を記念品に無事退院した。

でも。
脳の受けたダメージというのを、アタシはこの上もなく自覚してた。
本が、読めない。
文字が頭に入らない。
一〇ページがつらい。
これが認知機能障害ってやつ?
統合失調症は再発するごとに悪化を辿り、無論今回のように回復するという保証もない。
いつか自分が書いたものすら、読めなくなる日が来るかもしれない。
神様それはないよなぁ……。

それでもアタシ、頑張ったんだ。

日にち薬が効いたのか、それとも書く事でリハビリ効果があったのか、一年後にはようやく本一冊を苦痛なく読みとおせる位に回復したよ。
アタシに「また小説、書きましょう」と励ましてくれたのは、病院併設のデイケアの先生だった。OT(作業療法)でもしたことなかったけど、文化祭用に張り切って5万字くらい書いたら目をキラキラ輝かせて仲間たちが言ってくれた。
「面白い!」
物語を心の支えにする読者がいる、ペンネームを持って初めてその重さが分った。
それで?
アタシさ、幼稚園から続けてきた趣味としての読書はすっぱり諦めたんだ。
余力はね、書く方に回す決意をしたの。
アタシは図書館の司書になりたかった。
免許は持っているのだけど、なれなかったんだ。
でも、家の本棚に自分の作品があって、いつでも貸出できるっていうの、素敵じゃない?
世界でたった一つの図書館だよ。
それって、まだ間に合う?
YES?

そして手がける小説が30万字を越えた頃、アタシはあることに気付いたよ。
時空モノガタリ。
綺羅星のごとく2000字サイズの物語が集うそこには、病んだ脳に優しい宇宙があった。
これなら、アタシ読書やめなくていいかも。
……ん?
300000字÷2000字=150作品。
……そっか、掌編ならそれだけ多くの作品が書けるんだ!
書くうちに長くなり、未完やプロット倒れの多かったアタシにとって、その発想はコロンブスの卵だったんだよ。なんか、憑き物が落ちたというかね。
早速アタシは書き始めた。

アタシの言葉は、時に誰かの心の琴線に触れる事もあるかな?
もし神様の終了ベルが鳴ったとしても、それがサヨナラの4文字に勝るのなら。
これほど嬉しいことはない。



〈閲覧ありがとうございます〉

あなたが喜んでくれるから
今こうやって書いていられます

あなたの好きな
私の言葉が消えないように
頑張っていられます

本当に感謝しています

ドクターストップになるといけないから
そろそろ寝ます、この眠剤効きすぎ……
では、また

=冬垣ひなた=


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このストーリーに関するコメント

15/05/31 冬垣ひなた

<補足説明>
統合失調症になって6年になります、冬垣です。
幸い現在は再発もなく、健常者と変わりない生活です。
最初はメンタルへの負荷に不安がありましたが、
このペースで活動続けられそうですし、
この機会に書いてみました。
お休みする際は必ず紹介欄に書いておきますね。

スキゾフレニアは統合失調症の英語名。
左の写真はアクアリウム展で撮りました。

15/06/03 そらの珊瑚

冬垣ひなたさん、拝読しました。
辛くない病気などないのでしょうけど、辛い病気だったのでは、とお察しします。
薬の副作用のために、また薬が増えるということは私も経験済みなのでよくわかります。薬は万能ではないのだから。
書くことが何よりの薬になることもあると思いますが、どうぞご無理なさらぬように。
また素敵な作品を読ませていただけるのを楽しみにしています。

15/06/05 光石七

拝読しました。
冬垣ひなたさんの素敵な作品の数々、このような背景の元生み出されていたのですね。
私はうつで精神科や心療内科のお世話になった経験がありますが、自分のことを細かく詳しく綴るのはかなり勇気が要ります。
書くことが喜び、希望だというひなたさんの思いが伝わってきて、私も創作の原点に立ち返らせていただきました。
無理のない範囲で執筆なさってくださいね。
ひなたさんの作品はどれもどこか優しさが感じられて好きです。

15/06/08 冬垣ひなた

そらの珊瑚さん、コメントありがとうございます

妄想については良作がいくつもあったので、
違う角度でこれまでの経緯をありのままに書いてみました。
今はちゃんと働けて小説も書ける位に回復しているので、有難い話です。
睡眠不足は大敵なのでそこは気をつけたいですね。
これからも努力して書き続けたいと思います。


光石七さん、コメントありがとうございます

「アタシ」を介して自身の障害を客観的に見つめなおしてみました。
七さんも具合の悪かった時期があったのですね、ご無理のないように。
自分はこの作品書いてから、人の接し方が変わったように思います。
今が大事だと思えるようになりました。
私も七さんの作品は芯があって好きです、これからもよろしくお願いします。

16/07/13 葵 ひとみ

はじめまして。冬垣さま。
拝読させていただきました。
「でも、家の本棚に自分の作品があって、いつでも貸出できるっていうの、素敵じゃない?
世界でたった一つの図書館だよ。」や、
「そして手がける小説が30万字を越えた頃、アタシはあることに気付いたよ。
時空モノガタリ。
綺羅星のごとく2000字サイズの物語が集うそこには、病んだ脳に優しい宇宙があった。
これなら、アタシ読書やめなくていいかも。
……ん?
300000字÷2000字=150作品。
……そっか、掌編ならそれだけ多くの作品が書けるんだ!」など目から鱗がはがれるような発見が沢山ありました。

とても素晴らしい作品だと思います。
私もこのような素晴らしい作品を執筆できるように今日も研鑽させて頂きます。ありがとうございます。

16/07/25 冬垣ひなた

葵 ひとみさん、コメントありがとうございます。

この話を書き上げてから1年以上が過ぎました。経過は良好です。
しかし、一生付き合わなくてはいけないだろう脳の病なので、油断はしないようにと健康に気を遣う毎日を送っています。
時空モノガタリで書き上げた作品はもうすぐ50を超える所です。目標の三分の一に到達しましたが、評価を頂きありがたく思います。
私もこれを励みにして、これからも精進して物語を作ってゆきたいと思います。

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