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山盛りポテトさん

ショートショートがすきです。 星新一さんの小説が好きです。 社会でもがいています。 わかりやすい王道のショートショートを書きたいと思いつつ・・・脱線してます。

性別 男性
将来の夢 海外旅行!一度でいいから行ってみたかったり。
座右の銘 人見るもよし見ざるもよし我は咲くなり 跪く前に開き直る

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花の命

15/05/29 コンテスト(テーマ):第八十四回 時空モノガタリ文学賞 【 江戸時代 】 コメント:0件 山盛りポテト 閲覧数:1380

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父親の借金のカタとして遊郭に売られたハルはろくに休みも与えられずに男達の相手をしていた。
いつ返済できるかも分からぬまま、自らの身の上を嘆く暇もなくつらい日々は過ぎ去っていった。
まだ年若く、お世辞にも美人とは言えぬが肌は白く目はパッチリとしていてまるで人形のようだった。
そんなハルのもとへ旅のお侍が客としてやってきた。
「もっと顔をよく見せてくれ」
「そんなに近くで見られては恥ずかしいです」
「よいではないか、しかしわしの初恋の相手によく似ておる。名はなんというのだ」
「ハルと申します」
「ハルか、良い名前だな」
ハルは頬を赤く染めた。お侍の柔らかな口調や優しい物言いがとても心を落ち着けるのを感じだったのだった。
「そのようなことを言われたのは初めてです」
「そうか、わしもこんなことを言ったのは初めてじゃ」
二人は目を合わせて笑った。
「お侍さんは一体いつまで旅を続けるおつもりなんですか?」
「わしにも分からぬが、気の向くままといったところか。そうじゃわしがもう一度そなたの元へ訪ねる。そうすればわしの嫁になってはくれぬか」
お侍はほんの冗談のつもりであった。しかしハルという女がとても不憫に悲しげにうつりそれがたまらなく美しく見えて口からでまかせを言った。
「本当ですか?とても嬉しいです」
ハルは心が躍る思いだった。この環境から抜け出せてお侍と一緒に暮らす。なんて幸せなことなんだろうかと。
「あそこに桜の木が見えるじゃろ」
お侍は障子を開け川原沿いにある桜の木を指差した。
「ええ、それはそれはとても綺麗な花を咲かせます」
「わしはあの花が咲く頃にもう一度訪れることにした。それまで待っていてくれ」


ハルは来る日も来る日も耐えた、そうして一年が過ぎ二年が過ぎたが一向にお侍は現れない。しかしいつか訪れるお侍をじっと待った。
とうとう身体を病が蝕み、病床に臥してしまった。
いつかお侍が言ったあの言葉を思い出すと悲しくて胸が張り裂ける思いになった。桜の木は美しい朱色の花びらを咲かせた。
ハルは涙をいっぱい溜めた目で花びらが風に吹かれひらひらと散っていく様を見ていた。
「花の命とはなんと短いものなんだろう、美しい時はあっという間に一瞬の思い出になってしまう」


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