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梨子田 歩未さん

性別 女性
将来の夢
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ん、からはじまる

15/05/23 コンテスト(テーマ):第五十五回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 梨子田 歩未 閲覧数:1061

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 日曜日、特に予定もなく、果歩はソファに寝転がり、文庫本を読み、泉は床に座り、ソファにもたれかかっていた。



 何の前触れもなく、泉が言った。

「ごりら」

「ラッパ」

 果歩は、文庫本を読みながら、答えた。

 二人は大学生時代からの友人で、社会人になってから、ルームシェアを始めた。
 泉とルームシェアをし始めて、果歩が分かったこと。泉はきまぐれで、何かを急に始める。それが果歩には新鮮だった。

「パン」

 果歩は文庫本から目を話し、泉の後頭部を見た。窓からはいる光に照らされて、泉のふわふわした茶色い髪は、ところどころ光って見えた。

「そこは、パンツとかパンティとかでしょ、いや、変な意味じゃなくて、しりとり終わっちゃうじゃん」

「ん、ってさ、かわいそうじゃない?」

 泉がゆっくり言った。果歩が「どうゆうこと?」と問うと、泉は体を反転させて、果歩の方を見た。

「だって、ん、は次がないんだよ。ん、から始まる言葉が」

「いや、しりとりってそういうもの」

「キリン、パイン、ロンドン、みかん、ポンカン、公園」

 泉は指を折りながら、ん、が最後につく言葉挙げていった。
 果歩は、文庫本を膝に置くと、スマートフォンに手を伸ばした。

「アンパン、食パン、メロンパン、カレーパン、フランスパン……」

 泉が言葉を止めた。果歩が笑いながら言った。

「最後パン頼みだね」

「あー、他にある? 思いだせないよ」

 果歩は「ンドレ」と答えた。

「何? その、ン、ドレ?」

 泉が首をかしげた。

「カメルーン料理だって」

「カメルーンって、どこ?」

 泉の言葉に果歩も困って、二人とも黙り込んだ。 泉が言った。

「レンコン」

「え? ええ?」

 泉が笑った。

「続きだよ」

 果歩は慌てて、スマートフォンの画面に目を落とし、ん、から始まる言葉はないかと調べた。

 泉が言った。

「そういえば、レンコンのきんぴら食べたい。今日の夜ご飯に作ろうよ」

「ないよ。レンコン」

「ゴマあったっけ?」

「なんで急にゴマ?」

「きんぴらに、ゴマ必要でしょ」

 力強い泉の言葉に、果歩は笑みを漏らした。

「確かあるよ。だいぶ前に買ったのだけど」

「まあまあ、それでいっか。じゃあ、レンコン買いに行こう」

 泉はさっと立ち上がって、髪を一つに束ねた。果歩は寝転がったまま、面倒臭そうに言った。

「ブラ着けるの面倒」

「カーディガン羽織ったら、いいよ。だれかに会うわけじゃないし」

 泉はダイニングの椅子に掛けてあったカーディガンを果歩に向かって、トスした。

「じゃあ、買い物ついでに、明日の朝ごはんも買おう」

「だね」

 果歩と泉は、サンダルを履くと、外に出た。

「うわ、眩しい」

 太陽の光が二人の目を刺激した。



 今は、日曜日の午後二時過ぎ。



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