つつい つつさん

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15/05/20 コンテスト(テーマ):第八十三回 時空モノガタリ文学賞 【 時間ぎれ 】 コメント:0件 つつい つつ 閲覧数:1079

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 吹奏楽部の部室から、そっとグラウンドを眺める。今日は卒業式だったから、みんな先生や後輩、友達同士で別れを惜しみあっている。少しため息をつく。
 部室のドアが開いて菜月が入ってきた。
「どうだった? 小泉君にちゃんと言えた?」
 私は黙ったまま首を横に振った。
「そっか……瑞希って、変に行動力あるからひょっとしたらちゃんと告白したかなって思ったけど」
「……」
「私だったらこんな可愛い瑞穂に想われてたら自分から告るのに」そういって、抱きしめてきた。
「えー、菜月と? 断る!」
「なによっ、それ」
 私達はふざけあいながら、部室中を追いかけっこして走り回った。
 小泉君とは唯一、中学校三年間クラスが一緒だった。出席番号も近かったから、授業でも、理科の実験とか、グループで何か討論するとかでも一緒の班だったし、文化祭や修学旅行とか大きなイベントでも同じグループだった。私の中学校の思い出のほとんどに小泉君は登場する。その中でも、一番楽しかったのは、やっぱり修学旅行だ。水族館で、みんなとはぐれて、一時間くらい二人きりで廻った。運命だって思った。そんなタイミング良くはぐれるなんて、運命しかないって思った。たぶん二人はずっとずっと一緒なんだって信じれらた。だから、ひそかに同じ高校にいって、これからも同じクラスにならないかなって思っていたのに、小泉君が狙ってる高校は進学校で有名な男子校だった。三日くらい悩んだけど、さすがに一緒の高校受けるのは無理だった。今から思えばよく三日も悩めたなって、感心する。まあ、それくらい一途だったってことだ。
 だけど、もう小泉君と離ればなれになる。だから、私はずっと考えていた。悩んでいた。でも、勇気を出して告白することにした。
 それから、私はきちんと準備をした。寝る前には「私は出来る」って、何百回も唱えたし、神社にだってお参りに行った。正直、高校受験の時より真剣に祈った。お賽銭も千円入れた。それに、どうやって告白するか脳内で何回もシュミレーションしたし、菜月にも相手してもらった。やれることはすべてやった。対策はばっちりだった。完璧な作戦だった。
 手順はこうだ。教室で先生から卒業証書を受け取って、みんなばらばらっとなったら、さりげなく小泉君に近づいて声を掛ける。
「あっ、そうだ。ちょっといい? ちょっといい?」
 ここでの注意事項は、告白なんて深刻な感じをを全く出さず、借りていたものを返すくらいの、軽いテンションで話しかけることだ。これは、自分でも信じられないくらいうまくなった。女優なれるんじゃないかって思えるくらいナチュラルな演技だった。まあ、菜月相手にうまくなっても、本番で出来ないと意味ないけど。
 そこからは、こっちこっちと、相手に考える時間を与えずにすばやく廊下に出る。まあ、廊下に出てしまえばこのミッションは成功したと言っても過言じゃない。あとは、廊下の角の家庭科室に入って告白すれば終了だ。
 でも、実際はそんなうまくいかなかった。卒業証書をもらい、みんながばらけた瞬間、私は必死で勇気を振り絞った。「今日しかない!」「今しかない!」「やるしかない!」って、頭ん中で繰り返して、おもいきり両手を握って、震える足を何度も叩いて立ち上がった。なんか血が逆流してるし、目の前がクラクラして前見てるのか見えてるのかわかんないし、ドクドク、ドクドクって、超重低音で心臓は脈打ってるけど、でも、そんなのひっくるめて無視してなんとか強引に小泉君の席に振り向いた。
 小泉君と目が合った。突然振り返った私に一瞬びっくりしてたけど、すぐに微笑んでくれた。私も微笑んだ。なんか小泉君がいることが嬉しかった。三年間、教室に入るといつも当たり前みたいに小泉君がいたけど、今日も普通にいてくれて、すごく嬉しかった。
 その後のことはちゃんと覚えていない。微笑んだ瞬間泣きそうになって、思わず隣の席の歩美と抱き合って泣き合って、気づいたら吹奏楽部の部室にいた。
 なんなんだろう。なんで出来ないんだろう。ずっと悩んでたのに。考えてたのに。ずっとずっと、好きだったのに。
 だけど、不思議と悲しくなかった。負け惜しみなんかじゃない。たぶん、後悔しないって言ったら嘘になる。でも、振られても、付き合っても、なにか違う気がする。私と小泉君の三年間、私と小泉君のカタチはこれが正解なのかもしれない。この先、中学時代のこと思い出したら、いつもあの笑顔を思い出すんだ。小泉君のあの柔らかい優しい笑顔を思い出すんだ。やっぱり、これが正解なんだ。
「瑞希、そろそろ帰ろっ」
 菜月と肩を組んで学校の正門をくぐる。ほんとに中学生活終わっちゃうんだ。
 あーあ、会いたいよ。すぐ、会いたいよ。今、会いたいよ。明日、会いたいよ。あさって、会いたいよ。ずっとずっと、会いたいよ。


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