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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
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ゴミの惑星

15/05/11 コンテスト(テーマ):第五十六回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1361

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空の上から、明るいピンク色の胴体を輝かせながら何台ものゴミ取りロボットが、降下してきた。
まちにまったプロジェクトがいままさに、幕を切っておとされようとしていた。
『ゴミ一掃作戦』と命名されたこの計画は、文字通り惑星上にたまりにたまったゴミを収集して焼却までを行うロボット『ゴミクー』(ネーミングは一般公募)数万台を地上の各地点に配置することからはじまるのだった。
惑星調査船ではじめてこの惑星をおとずれたときの調査隊のおどろきはひとかたではなかった。
海も山もなにもなく、あるものといえばただ地上一面に広がるなにやらごごみした―――後でそれは正真正銘のゴミだと判明した―――ものがみえるばかりだった。ソナーを使って調べた結果、ごみは実に地上数キロの厚さに達した。
「なんてずぼらな星なんでしょう。ここの住民たちはこれまで、一度だって掃除や整頓をしたことがないみたい」
搭乗員のユーキが率直に第一印象を口にした。
彼女とならんでゴミの大地をながめていたイルスがそれを聞いて笑った。
「それにしても、このゴミをすてた連中は、どこにいったのだろう」
「ゴミで生活できなくなって、逃げ出したんじゃないかしら」
2人は他の隊員たちと、ゴミの上を歩き回り、ゴミを手にとったり、検査のために標本箱に収納したりした。
ゴミは、布類や缶ビン、食器、紙に板、こわれた家具、また車や家電製品、そのほかわけのわからないものも多々あって、実際これを捨てた住民たちには、廃品を処理する能力が皆無なのかと疑わざるをえなかった。
数時間後、ゴミのうえに仁王立ちになったゴミクーから警告を告げるサイレンが鳴り響いた。
真空ポンプの猛烈な吸塵力にとらわれたらさいご、ブラックホールのように、誰もそれから逃れることができなくなる。
ユーキたち隊員はいそいで艇にもどった。その艇が空中高くに舞い上がるのをまって、ゴミクーは仕事をはじめた。
ゴミはゴミクーの巨大な胴体の内部に吸収されていった。同時にロボットの体内にくみこまれた焼却炉が点火され、何千度の温度でたちまち吸収されたゴミは煙と消えた。
「このはんぱじゃないゴミがきれいになくなるのは、何世紀さきの話しだろう」
うんざりしていうイルスをユーキは、咎めるようにながめて、
「それはオーバーよ。ゴミクーの能力を信じなさい。ほら以前、ゴミクーの海バージョンのロボット―――ドロクーって名前だったかしら―――が、ヘドロだらけの海をおどろくほど短期間で浄化した事実をあなただって知ってるでしょう」
「もちろん知ってるけど、この惑星のゴミの量は、想像を絶するよ」
「だいじょうぶだって。それよりも、このゴミをきれいになくしたあとから、どんなすばらしい大地が出現するかを、考えるようにしましょう。ゴミのために、地面の検査はできないけれど、私の予想では、ゴミの下から、きれいな景色が、きっと出現するとおもうの」
「きれいな景色か………」
ユーキにいわれて、イルスもだんだん期待するようになってきた。
なるほど考えてみれば、ごみにおおわれていた地上は、雨風にさらされることなく、ながい歳月を無傷のまま保存されてきたわけだ。ゴミの下は案外、風光明媚な景観がひろがっている可能性もある。人体に安全な大気といい、温暖な気候といい、ゴミさえなければここは、もしかしたら宇宙の楽園ということもありえる。
「はやくゴミが一掃されるのを、祈ることにしよう」
イルスは艇の窓から地上で大車輪で働きつづけるゴミクーをみおろし、はやくもロボットの周囲のゴミが目に見えて減少しているのに目をみはった。

昼夜をわかたぬゴミクーの活躍で、ゴミは信じられないほど速く減っていった。
最初に山の頂がみえだしたのは、活動をはじめてからわずか半年のことだった。すべてのゴミが一掃されるまで、あと半年もあればいいのではと、最初の予測を撤回して、だれもがおもいはじめていた。
そしてその半年がすぎたころ、地上を検査していた科学者のひとりの顔から、サッと血の気がひいた。
「基準値をはるかに超える放射能が検出された」
そのときには全員、防護服などなにもつけずに、地上にたちつくしていた。
まんべんなくゴミを減らしていき、そのゴミの下からいま、なにか建物らしいものがあらわれるのを、だれもが自分たちの目でたしかめようと待機していたときのことだった。
科学者の言葉が全員にいきわたるのは容易なことではなさそうだった。
それでなくても、これまでゴミのほかには何もみえなかった大地に、はじめて人の手になる建築物が出現するその瞬間を、胸をときめかせながらまちかまえていたかれらだった。科学者が大声でわめきちらすのがじゃまだとばかり、ユーキもイルスも、いまそこに姿をみせはじめた建物に身を乗り出し、目をこらした。
それは半壊、あるいは全壊にちかい状態の建造群だった。
原子力にくわしい隊員がそれをみて、
「ここは、原子力発電所跡じゃないのか………これだけの破壊状態からみて、きっとメルトダウンを起こしたにちがいない。ゴミをとってはいけない!」
と、声をふるわした。
その声も耳に入らない様子でユーキとイルスの二は、パワー全開で作動するゴミクーの、さらにスピードアップしたゴミの処理に、我を忘れてみとれていた。


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