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11doorsさん

のんびりした田舎に引っ越してきました。温かな人たちとのゆったりした会話や日常は、ほんとうに宝物です。そんななか、小説という異質な空間の中で、読む人に、ちょっとでも喜んでもらえる作品が一つでもかけたなら、幸いに思います。

性別 男性
将来の夢 世界旅行
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占い師奥野と相性プログラム

15/04/12 コンテスト(テーマ):第五十三回 【自由投稿スペース】 コメント:0件 11doors 閲覧数:1269

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新聞社の事務職で働く川口美津江は、占い師奥野の自宅を訪ねた日、持病の心臓病で倒れ、それをキッカケに彼のマンションに住み続けている。美津江の同僚である丸山君子は美津江の部屋に宿泊することに…

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美津江と丸山君子は、以前、奥野の妹が使っていた部屋に、布団を敷き、ガールズ・トークを展開している。彼女たちは、奥野のタブレット・コンピューターで、彼の幼い頃からの写真をみながら、あれこれ楽しんでいる。


「ねえ、奥野さんのおばあさまって、本当に美津江ちゃんに似てるわよね。特に若い頃の写真なんて、今の美津江ちゃんにそっくりだわ」

「うん、私もそう思う。私、これから年を取ったら、こんなふうになっていくんだなって感じがしますよ。この写真なんか、おばあちゃんになった私が、小っちゃな奥野さんを抱っこしてるみたいだわ♪」

「ねえねえ、一覧表示に切り替えてみるとわかるけど、これ見て! ほらっ、おばあさまに抱っこされてる時って、いつも嬉しそうな顔してるでしょ、奥野さん」

「あっ、本当だ。お父さんやお母さんに抱っこされてるときと、顔の表情が、ぜんぜんちがうわよね。これなんかベソかいてるもの。へえ〜完全な『おばあちゃん子』かあ。そうか…、それで私がお願いすることは、ほぼ100%言うことを聞いてくれるのね♪」

「だったら、美津江ちゃんの方で、結婚式の場所とか、日取りを決めて、それで話をすすめて行っちゃったら? その方が話が早いわよ」

「そうですよねぇ、その方がいいかも♪」


美津江と丸山が、別室でそんな話をしている頃、奥野は妙な寒気を感じながらも、コンピューターの前で、プログラミングの作業をしていた。


「あいつら、また、変な会話してるんじゃないか? うちにはテレビもないから、退屈して、早く寝てくれると思ったのに、まだ、寝てない感じがするな。きょうこそは、ゆったり自分のベッドで寝るぞ、絶対!」


そんな独り言を奥野がつぶやいていると、パジャマ姿の美津江と丸山が、奥野の部屋に入ってくる。二人とも妙にニヤついた顔をしてる。すぐさま、奥野の心にある危機管理センターが、警告音を発しはじめる。


「あっ、お二人とも、まだ、お休みになっていらっしゃらなかったのですか? 明日も早いと思いますし、早めにお休みになられてはいかがですか?」

「奥野さん、お気遣い感謝しますわ。それより、奥野さんは今、何をしていらっしゃるのですか? それはプログラム?」

「はい、占いに関してのプログラムです。長野に住む知人から電話をもらいまして、その人物の依頼で、ちょっと新しい試みをしてるんです」

「えっ! そうなんですか? そのプログラムは奥野さんが、ご自分でつくっていらっしゃったんですか?」

「そうなんです。以前、いろんなソフトウェアを使ってみたんですが、どうも使いづらくて…。それなら、いっそ自分が使いやすいものを、と思って、つい、つくちゃったんです」

「それで、今はそのソフトの改良を?」

「ええっ、大運ってあるんですけど…、その部分の仕様を変更しているんですよ」

「だ、大運?」

「ちょっと専門的になるんですけど、流年が一年単位の短期運であるのに対して、2〜10年という幅のある長期運のことなんです」

「ええっと、私は3年運でしたよね、師匠」

「そう、川口さんは3年運。まあ、流派によって、いろんな取り方があるんですけど、たとえば、ある流派では、5年運というと、最初だけ5年間で、その後は10年で見ちゃうんです」

「じゃあ、最初が、数え1〜5歳で、次が数え6〜15歳?」

「うん、そのとおり。でも、僕のやり方は、数え1〜5歳で、その次を数え6〜10歳、数え11〜15歳、次が数え16〜20歳って感じで、大運をみる」

「師匠が、後の方の、やり方を選ぶのはなぜですか?」

「まあ、別に他の流派を否定するつもりはないけど、僕が鑑定してきて、経験的にその方が当たってるって思うからだよ」

「でも、師匠は、ご自分で経験してきて当たっているはずの、大運の計算の仕方に、わざわざ手を加えるんですか?」

「そうだよ。何が問題かといえば、『数え歳』の区切りに、少しだけ問題があると思うんだ」

「数え歳? 生まれた時点で、すでに1歳になってるって、あれですか」

「そうだよ。数え歳は、赤ちゃんが産まれる前、すでにお母さんのお腹の中で『十月十日』といった期間を過ごすから、その時間も含めて、1歳の子どもとして計算する考え方なんだよ」

「へえ、そうなんだ。知らなかった」

「実は、僕もその知人から教えてもらうまで知らなかったんだ。それでその期間も含めて計算してみるのは、どうだろうかと思ったんだ。それで、その日数計算の参考にと思って、今日、この本を買ったんだけどね。ほら、『280日間を妊娠期間とし、280日目が出産予定日となる』って書いてあるだろう。この日数を大運の計算にプラスしてみようかと思ってるんだ」


奥野は、妊娠と育児の本を、机の上に置いた。


「師匠、それって、師匠と私との間に産まれる子どものための研究じゃなかったんですか?」


「えっ! な、何のこと?」
「えーっ、ちがうんですか?」
「ちがう、断じてちがう!」
「別に、そんなに力んで言わなくてもいいのに…」


美津江は、すっかりガッカリして泣き出してしまう。それを見て、奥野はあわてふためく。丸山も、奥野が本を買った理由を知ってちょっとガッカリしたが、彼の気持ちも分かるので…


「ねえ、美津江ちゃん、ウソ泣きは、もうやめたら」
「は〜い」


さっきまで、号泣してたかと思った美津江が、丸山のひとことで、ケロッとした顔に戻る。奥野は目をパチクリさせながら、女のおそろしさを感じる。


「でも、奥野さん、なぜ大運の研究を今更?」
「それは…、この間の川口さんの心臓発作が原因だよ」
「私の?」

「うん、今までのプログラムで、あの日を計算すると、たしかに心臓に負担がかかる日かもしれないが、倒れて救急車で運ばれるほどのモノじゃないと思うんだ。何かズレがあるにちがいないと思って考えたら、数え歳の期間に問題があると思ってね」

「そのプログラムの修正で、私の危ない日が?」
「うん、まだ、試験段階だけど、少なくとも川口さんの体調を知るには、この新しいプログラムの計算の方が合ってると思う」

「師匠、感激です!」

「あと、相性に関するプログラムも考案したんだ。たとえば、川口さんの生年月日をここに入力するだろう。それから、丸山さんの生年月日を…。あっ、すみません、丸山さん、ここに丸山さんのを入力してほしいのですが…」

「歳がバレるわね。まあ、いいわ。おいしい夕食もご馳走になったし…。でも、これで何が分かるんですの? 何かバイオリズムの曲線みたいなものが出てますね」

「これが川口さん、それでこちらが丸山さんの運勢で、えっと、それを合わせると、こうなりますね」

「美津江ちゃんの下降するラインが、そんなに下がらないで、さっきより直線ですね。あれっ、これって今日ですか?」

「そうですね。あ…、今日は…」
「どうしたんですか?」

「この間ほどではないですけど、今日は、川口さんの身体が、ちょっと危ない日でしたね。偶然かもしれませんが、丸山さんが一日一緒だったおかげで、川口さんの運勢が、ほとんど荒れずに済んだようです」

「へえ〜、人と人がいっしょにいるだけで、荒れるはずの運勢が、荒れずに済んだりするんですか。すごい発見ですね、奥野さん」

「ねえ、師匠。この画面のメニューに、『生涯の伴侶L』ってありますよね、これって何ですか?」

「ああ…、すごいところに目を、つ、つけたね…」
「はい、よく教えてください」

「たとえば、一組の男女が結婚した場合、理想的なのは、お互いの運勢を補完し合える関係なんだよ。たとえば、夫の運勢が下がるときに、妻の運勢が上がれば、その家庭の運勢は安定する。最悪なのは、夫の運勢が下がるときに、妻の運勢も一緒に下がっていくことなんだ」

「師匠、それ分かります。バイオリズムの曲線を、ジェット・コースターのコースみたいなものだと考えれば、夫婦が一緒に下降したら助けようがないって話ですよね」

「うん、そうなんだ。もちろん、二人の間に生まれた子どもが、両親の運勢の補完をしてくれることもあるけど、基本的に夫婦が、相互補完する関係なのが、一番いいと思うんだ」

「へへへ、師匠…。私たちが夫婦になったら、どうなるのか、試しに見てみません? 補完する運勢かどうか、あっ、師匠、もう見て結果知ってるんです?」

「いや、できたばかりだし、きっと良くないかも知れないよ」
「そんな、まだ見てないのでしたら、ぜひ見てみましょうよ」
「奥野さん、もう観念しましょ!」


奥野は、とんでもないプログラムを、つくってしまったものだと思ったが、今更、引き返せないと思い、自分と美津江の生年月日などのデータを入力する。

「こ、これは…、何かの間違いでは?」

「奥野さん、これが二人の生涯に渡る相性線ですよね。すごいじゃないですか、美津江ちゃんの下がるときに、奥野さんのが上がり、奥野さんが下がるときに、ピッタリ美津江ちゃんが上がってますわよ」

「ねえねえ、師匠、この間、私が倒れたときの日のデータを呼び出してくださいよ。あの日はどうだったんですか、私たち…」

「美津江ちゃん、私がみてあげるわ。今、奥野さんが操作してるのを見てて、私、だいたいのやり方わかったから」


丸山は、器用にコンピューターを操作しはじめる。


「あの日の美津江ちゃんの運勢って、単独だとものすごく低かったのね。でも、奥野さんのデータを入れると…、ほらっ!」

「すごいですよ、師匠。さっきよりグーンと上にあがってます」
「ほ、本当だな」
「美津江ちゃんと奥野さんって、運命の二人だったんですね」
「師匠、やっぱり、今夜も一緒に寝ましょうね」

「丸山さん、あなたは川口さんの寝相を知らない! 夜中に僕が気づくと、彼女はベッドの真ん中で寝てて、すごいイビキをかいてるんです。僕といったら、彼女に毛布を全部剥ぎ取られて、ベッドの隅っこで、丸くなって寝てるんですよ」

「あ〜ら、仲がよくて、いいことじゃないですか。じゃあ、私、あちらの部屋で、ひとりで、ゆっくり寝ることにしますので、今夜も、お二人、アツアツで、お休みになってくださいね。
ウフフ」

「ウフフって…」

「師匠、本当は一緒に寝てくれる人がいないと寂しいんでしょ?いいですよ、今晩は、私がピッタリくっついて寝てあげますから、背中から張りつくのがいいですか?」

「せ、背中からって、こなきジジイか?」
「じゃあ、前から抱き合って寝ます?」
「ほ、ほかに選択肢はないのか!」
「えへへ、ないです。いいですよね!」
「ううっむ…、じゃあ、背中から…」

丸山は、ふたりの会話を聞きながら、笑みをうかべた。



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