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村咲アリミエさん

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相談其の一 つけられている青年

15/04/12 コンテスト(テーマ):リレー小説 【 相談屋ケイジロウ 〜新宿編 @】 コメント:0件 村咲アリミエ 閲覧数:1237

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 トモヤは、困り果てていた。解決策も見いだせず、しかたがないから新宿西口にある行きつけのバーに呑みに来ている自分の甘さ加減にも困り果てていた。
「ママ、口固い?」
 頼んだカクテルを呑みながら、トモヤは甘えるような声を出す。金色短髪の女性は、マスターって言えっつってんだろと、真っ赤なルージュを光らせて笑った。マスタアとトモヤが言い直すと、よし、とマスターはうなずく。
「基本的には固いよ。どうしたんだよ、今日はやけに落ち込んでるじゃないか」
 マスターは、いつもつんけんした態度をとりはするが、なんだかんだ真剣に人の話を聞いてくれる。聞き上手のマスターがいるからここに来たのかもしれないと考えながら、トモヤはありがとうと弱々しく笑った。
「なんかさ、最近つけられてるみたいなんだよ」
「おいおい、面倒くさいもんつれてきてないだろうね」
「さっきまいた。新宿駅の人の多さに感謝しなくちゃね。ストーカーかな、困った」
「それ、私に話すようなことじゃないだろ」
「他に話す相手がいないんだよ」
 寂しい男、とマスターに笑われ、トモヤは肩を落とした。同時に、カクテルの氷がからんとなり、ますますむなしい気持ちになっていく。
「トモヤ、いいことを教えてあげよう」
 マスターは、そう言ってトモヤの後ろを指差した。声を目一杯落とし、ウインクをする。
「私より、あの人がいい」
 へ、と間抜けな声を出しながらトモヤが振り向くと、ボックス席に一人の男性が座っていた。線の細い男だったが、座っていてもすぐに長身だということが分かる。店内だというのに黒い帽子をかぶり、一人でウィスキーを呑んでいる。
「誰です、あの人」
 トモヤは体を前に戻し、身を屈めてヒソヒソと言った。
「け、い、じ、さ、ん」
 マスターの言葉に、トモヤは目を丸くする。刑事!
「有名だよ。気に入られたらどんな相談にでも乗ってくれる」
「本当に?」
「とりあえず話してみなよ」
 マスターは身をのりだし、なあ、とその男に声をかける。
「聞こえてるんだろ?」
 その男は、ちらと顔をあげただけで、なにも言わない。だが、マスターはそれを肯定ととったのか、ほら、とトモヤに目配せした。行け、ということらしい。トモヤは半信半疑で立ち上がり、いそいそとその刑事に歩みより、そっと彼の前に座った。
 思わず生唾を飲む。すごい威圧感だ。深すぎる帽子のせいで顔もとがほぼ見えない。相手からは何も言ってこないため、トモヤはゆっくりと口を開いた。
「ぼ、僕はノヤマトモヤと言います。あの、えっと」
 目の前の刑事が遮るように「もういい」と言った。えっとトモヤが目を丸くすると、低い声が続ける。
「俺にとって大切なことは、それを本当にお前が解決してほしいのか、否かだ。生半可な覚悟で俺に相談するなよ」
 トモヤはえ、と困った顔をする。
「覚悟とか、相談って、えっと」
 どういうこと、と言う前に、突如刑事の腕がトモヤに向かってのびてきた。わっ、とトモヤが声をあげると同時に、トモヤの腕がしっかと捕まれる。
「おいマスター、お前は知ってるのか」
 さあね、と肩をすくめるだけのマスターの反応に、刑事ははあ、とため息をつく。その後、鋭い眼光でトモヤのことを睨み付けるように見つめた。
「お前、俺のことを警察関係の刑事だと思ってるだろ」
「え、違うんですか?」
 トモヤの反応に、にやりと刑事は口端で笑った。
「白々しさが気に入った。相談にのってやるぜ、お前、俺が刑事じゃないことも知っててなお、その反応してるんだろ、ばれてるぜ」
 なっ、とトモヤは目を丸くした。捕まれたままの腕を振りほどこうとするが、がっちり捕まれたまま離してはくれない。
「あのマスターはな、一般人も裏の家業のやつも、ほいほい俺に回してくるんだ。お前はどっちか、マスターは判断しかねたんだろう。ケイジっつって、警察関係だととびついてきたら一般人、逃げたら裏家業って見分けかたがある。逃げたら縁がなかったってだけだな。お前はとびついてきたから一般人だと思ったが、この手は普通の手じゃない。常にピストルやナイフを持っていますって手だ」
「見てわかるのかよ」
 先ほどまでのおどおどとしたトモヤはどこかに消えていた。にやにやと笑いながら、すげえじゃんと白い歯を見せる。それだけじゃねえ、とケイジはトモヤに負けないにやついた笑いを浮かべた。
「歌舞伎町で何度かお前を見かけた。見た目は大分違うが、ほくろの位置が一緒だぜ」
 トモヤはおいおい、と苦笑して、ひとつ頷いた。
「さっきの言葉、信じていいんだよな、相談屋」
「ああ。なんでお前が一般人のふりしてるのかも、何におわれているのかも」
 言って、ケイジと名乗っていた相談屋は、帽子のつばをくいと持ち上げた。

「この相談屋ケイジロウが、責任もってきいてやる」


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