1. トップページ
  2. 新宿ブレイカーズ!

クナリさん

小説が出版されることになりました。 『黒手毬珈琲館に灯はともる 〜優しい雨と、オレンジ・カプチーノ〜』 マイナビ出版ファン文庫より、平成28年5月20日発売です(表紙:六七質 様)。 http://www.amazon.co.jp/dp/4839958211

性別
将来の夢 絵本作家
座右の銘 明日の自分がきっとがんばる。

投稿済みの作品

2

新宿ブレイカーズ!

15/04/07 コンテスト(テーマ):リレー小説 【 相談屋ケイジロウ 〜新宿編 @】 コメント:6件 クナリ 閲覧数:1614

この作品を評価する

新宿の街の裏側は、雑然と汚れていた。
まだ昼過ぎなのに変に薄暗い。
雑多で歪な建物の間を縫い、私はひとつのドアの前にたどり着く。
黒ずんだ看板に、「相談屋」と書いてあるのがかろうじて読み取れた。
その時、
「何か御用ですか」
後ろから声をかけられ、私は飛び上がった。
振り向くと、私よりも一回り小柄な黒髪の少年が、こちらを見上げている。
「高校生ですよね。お客さんですか」
「あ、はい。君、ここの人?」
少年は微笑んで、
「ええ。第七ケイジロウです」

少年に案内され、私はレンガ造りの建物に入った。
一人応接セットに腰かけ、少しすると、少年が紅茶を運んで来てくれた。
「つまり、君……あなたが現ケイジロウさんなわけですか」
「現と言うか、番号は一族の中で先に名乗った者勝ちなんです。皆出払ってますけど、今は十二までいたかな。全員現役ですよ」
「へえ……」
「僕も、これでもいっぱしの相談屋です。ご相談はどんな?」
「……はい。実は」
この頃私のプライベートが、クラスメイトに知れ渡っている。
お風呂やトイレでの習慣まで含めて、主にSNSで広まったようだった。なぜ標的が私なのか、心当たりは全くない。
「もう、学校に行くのも辛くて……誰があんな……」
悔しさと羞恥心で、涙が込み上げて来る。
「――報告士の仕業ですね」
「え?」
「かつてこの国には、報連相機関という情報特務組織がありました。終戦とともに解体され、当時の各課は報告士、連絡家、相談屋に分かれて各地に散った。報告士は一方的な解体を恨んで性格がネジネジ曲がってしまい、今や特に意味もなく適当な一般市民の情報を調べ上げ、更に意味もなく方々に報告するのです」
「い、意味もなく?」
「嫌がらせが生き甲斐、ということですね」
「しょ、しょうもない!」
その時。
どごおんっ! と、外から音がした。
「報告士が、相談屋と繋がったあなたを始末しに来たようです!」
少年はそう言って、ドアの方へ走って行く。
つい少年に着いてドアまで来た私の耳に、
「『空から降って来たブツ』!」
と何者かの甲高い声が響くと、空から無数の火の玉が降って来た。
「い、隕石!?」
そう悲鳴を上げる私の横で、少年が叫ぶ。
「能力戦ですね、『蛍籠』!」
するとどこからともなく空中に広がった光の網が、隕石を包み込む。
絶句する私の肩に、誰かがポンと手を置いた。
振り向くと、昼間だと言うのにやたらと露出度の高い革の服に身を包んだ、女の人が立っている。
「……誰?」
万感を込めた私の問いにその女性は、
「第六ケイジロウよ。しくよろ」
などと答えた。
「あれは……何なんですか?」
「能力戦よ」
答ではあるけど、説明にはなってない。
路上に出た少年の頭上には、若い男が浮かんでいる。……浮かんでいる。
さっきの甲高い声の主らしい、あれが報告士のようだ。
少年がその男を指差し、
「落ちなさい、『ぐるぐる』!」
と唱えると同時、報告士(だか何だか)がバランスを崩して地面に落ちた。
「やるなァ小僧! 『影踏鬼』ィ!」
「くっ、金縛りですか! では『眠れるおひめの遠吠え』!」
赤い光線が少年の口から放たれた。報告士は両手を前に突き出す。
「『不確かな無花果』ゥ!」
赤紫の繭が報告士を包み込み、少年の光線を弾いた。
「終わりだぜ! 『葬送行進曲』ゥ!」
報告士の足元から漆黒の巨大な牙が現れて少年を襲い、
「まだです、『メランコリックペンギン狂詩曲』!」
少年の足元から無数のペンギンが飛び出てそれを受け止める。
「今だ喰らえィ、『ダンゴムシの悲劇』ィ!」
空中に無数の巨岩が現れ、
「ここは消滅術の出番ですね、『静かなる詩』!」
現れた傍から灰になって消えて行く。
「いつも無茶するから、この辺ろくな建物が残らないのよね」
私が呆然と眺めていた戦いは、陽が落ちるまで続いた。

夕暮れ時、私達三人は応接室に戻っていた。
「僕の勝利です。あなたの流出情報は、一週間以内にモノからもヒトからも消し去ります」
「あたしの『赤い滴に溶けたもの』を使えば、余裕ね」
そう言って、少年と女性は微笑み合う。
「しかしあんたが、『仕事、やめようかな……』から『世界の中心で無職が叫ぶ』に繋げて、あいつを無職にしちゃうとはね」
「これであの人、報告士じゃなくなったからもう能力は使えませんね」
「あの、ありがとう……ございまいた。報酬とかって……」
そう言うと、二人はぱちくりとして顔を見合わせた。
「そう言えば、契約書もまだなのね」
「突然、アレでしたからね。では来週またいらして下さい」

数日する内に、確かに私に関する噂は目に見えて学校から駆逐されて行った。
次の週、私は報酬の額に不安を抱きつつ、再び相談屋の事務所を訪れた。
それが、更なる異常事態の始まりになるとも知らずに――。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

15/04/07 クナリ

コンテストでないのなら、このチャンスに多少ふざけてもよいハズ…などと思ったわけではないのですが。
画像は、小説の一部を漫画みたいに描いたものですが、このサイズでは小さくて何がなんだかわからないというかもともとA4サイズなのですがスキャナとか持ってないので携帯電話で撮ったものなのですがホワイト修正の跡とかバッチリ見えてしょうもない感じなのでむしろ見づらいほうがいいかなという気もします。

能力名は、時空モノガタリ様への投稿作品から引用させていただきました。
作品名の使用を承諾してくださったCPU様、光石七様、OHIME様、ありがとうございました。
こげなものですみません…。

15/04/07 メラ

クナリさん、拝読しました。
いやあ、タイトルからインパクトがありましたが、内容はさらにぶっ飛びですね。
冒頭の漫画、ご自身で?すごいですね。
楽しまさせていただきました。

15/04/07 しーぷ

いやもう、使っていただきありがとうございますm(_ _)m

やはりブツか、、←
メランコリックペンギン狂想詩が素敵すぎてもう
イワトビ様じゃなかったのがざんn(*´∀`(C=

楽しく読ませていただきましたm(_ _)m

15/04/07 しーぷ

メランコリックペンギン狂詩曲でしたッ((((;゜Д゜)))

15/04/08 光石七

拙作のタイトルを使っていただき、光栄です。
漫画内でもありがとうございます。
この使い方は全く予想できませんでした。今後は必殺技にふさわしい、カッコいいタイトルをつけねば……! ←違うだろ

報連相機関が解体して……という設定が面白く、バトルも魅力的で、拙作の関与を抜きにしても楽しめました。
さらなる事件やケイジロウ一族の背景、連絡家や他の報告士の登場など、今後の展開に期待が膨らみますね。

15/04/11 クナリ

メラさん>
こういう登場人物が騒いでばかりの展開の話は自分としては好きなんですが、どうも我が筆では内容が無くなりまくるのでたまーに隙を見てやったりします(^^;)。
冒頭の漫画は自作でございますー久し振りに描いたのですがやはり漫画は難しいですね。
どのシーンを切り取るか、悩みながら描きました(^^;)。

CPUさん>
この度は、ありがとうございましたッ!
『メランコリック』の能力は作中出色の出来と思います。それもこれも素敵な原作あればこそですが!
ええ、やっぱりブツですね。
大変扱いやすいタイトルでしたね。ええ。
最初にこの話を思いついたのは、終盤での『仕事〜』と『無職』のコンビネイションからだったのです。
作品自体の着想と、バトルの皮切りにもなっていただき、お世話になりまして感謝感謝ッ(いえ本当に!)。

光石七さん>
こちらこそありがとうございました…!
このような使い方をさせて頂きました。そりゃ内容関係ないなって話ですね!
実際、光石さんの作品はかっこいいタイトルが多かったので助かりました(←おい)。
リレー小説を意識して色々種をまいた感じですが、こんな能力の設定じゃあリレー出来ないですねえとおわってからきづくんですよいつもうんいつも。

ログイン