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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

性別 女性
将来の夢 可愛いおばあちゃん
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ある母娘の春休みの一コマ

15/04/06 コンテスト(テーマ):第七十九回時空モノガタリ文学賞 【 通学路 】 コメント:8件 光石七 閲覧数:1241

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 義母は最後まで不満げだった。
「母親ってだけで親権はあっちだなんて。晃が引き取ったほうが経済的にも安心だし、私も面倒見るのに。学校に上がってもこっちなら歩いて五分で行けるのよ。知美さん、実家で生活するんでしょ? お母様、田舎で一人細々と暮らしてたのに大変よねえ。萌ちゃん、お友達と別れて寂しいわよ。苦労しそうだし、可哀そう」
ようやく夫と義母から解放される。春になる前に離婚が成立してホッとした。

 かつて自分が六年間通った道を萌と歩く。母には三十分後の車での迎えを頼んだが、萌の様子次第では途中連絡もあり得る。
「こんにちは!」
庭に出ていたフサさんや畑に向かうタミさんに、萌は元気よく挨拶する。私の子供時代を知っている近所の人達。出戻って二か月、周囲の変わらない温かさが有難い。
「こんにちは。どけ行っとな?」
「小学校。ママが、入学式の前に一回歩いてみようって」
「気い付けて行っきゃいよ」
笑顔に見送られながら、狭い路地を行く。集落の区切りの十字路に出ると、道幅が少し広がる。車が来ないか萌に確認させてから直進する。橋を渡り、左右に水田を臨みながら歩道の無い道を進む。稲の苗が風に揺れている。早期米が主流のこの地域では春休みが田植え時だ。
「落ちないよう気を付けて」
萌の手を強く引く。むき出しの深い側溝があるのだ。ガードレールが設置されているのは一部分のみ。
「ママは落っこちたことある?」
「風が強い日に落ちそうになったことはあるけど、落ちたことは無いよ。――ほら、車」
二人で端に寄る。車通りは少なめだし見通しもいいけれど、やはり常に周囲に気を配らなければ。
 大きなカーブを曲がると、私が下校中によくさっちゃんと四つ葉のクローバーを探した空き地がある。さっちゃんは一緒に登下校していた近所の同級生だ。今の空き地には背の高い草がびっしり生い茂り、クローバーは見当たらない。
(萌がここに寄ることは無さそう。そもそも放課後は学童だしね)
萌がどこかに寄り道して帰るのは高学年になってからだろう。今の集落には萌以外に小学生はいないけれど、その頃には一緒に帰る友達ができているだろうか。
 空き地の隣の建設会社の事務所と資材置場を過ぎると上り坂になる。左右には段々畑。途中から勾配が急になり、石垣の家々が現れる。
「萌、大丈夫?」
小一の頃の私のように、前傾姿勢で懸命に歩いている。
「もうちょっとで平らな道になるからね」
萌は頷いた。坂を上り切ると、四百メートルほど平坦な道が続く。家が並ぶ集落の中をまっすぐ進み続ける。懐かしいが、改築したり立ち退いたりした家もある。
(ここも……)
下り坂の手前の個人商店が潰れて空き家になっていた。登校中、よくおばさんに時刻を尋ねていた場所だ。
「あ、おばあちゃんだ」
車の音と萌の声が私を感傷から引き戻した。母が運転席から手を振り、通り過ぎていく。
「萌、ここを下り切って交差点を右に曲がったら、すぐ小学校だよ。最後まで歩ける?」
「うん!」
萌の足取りが軽くなった。

 疲れたのか、萌は夕食中から目をこすっていた。布団を敷いてやると、すぐ横になって眠った。
(片道五分の通学なら楽だったかも……)
義母の言葉が小さな棘として甦る。
「四十分かかったね。小柄の萌にはきつい道のりかも」
食器を片づけた後、母に漏らした。
「そのうち慣れるし体力もついてくるわよ。知美もそうだったでしょ。遠くて疲れるって初めは言ってたのに、さっちゃんと走って行くようになって」
「確かに。……二十年ぶりに歩いて思ったけど、子供には結構怖い道だね。側溝の蓋とかガードレールとか整備してほしい」
「知美の頃から変わってないね。主要道路じゃないし事故が起きてないから、ほったらかしなのかも。――アンタ、その危ない道をよく本読みながら帰ってたじゃない」
「ああ、やってたね。危ないからやめろって何度も怒られた」
思い出して苦笑する。図書館で借りた本を早く読みたくて我慢できなかったのだ。
「周りを全然見てないのに、すっと電柱避けて、溝にも落ちないで。器用さに感心したけど、あれはホント危ないわ。萌は学童に行くから、当分知美の真似はしないだろうけど」
「いや、真似しちゃ駄目でしょ」
二人で笑い合った。
「……でも、萌一人で登校って大丈夫かなあ?」
「私も知美が入学した時は心配したけどね。お父さんなんかこっそり後つけてた。だけど、ずっと親が付いてるわけにもいかないし、通学も子供の成長のチャンスだもの。道のりが長い分いろんなことを学べるし、いろんな思い出もできるじゃない。不安なら、また一緒に歩いて教えてあげたら?」
母の言うとおりだ。棘なんか気にしなくていい。
 私と同じ小学校、同じ通学路。萌はどんな思い出を作っていくのだろう。私はそっと襖を開け、萌の寝顔をのぞいた。


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このストーリーに関するコメント

15/04/06 海見みみみ

光石七さん、拝読させていただきました。
通学路というテーマに直球で挑まれた作品だと感じました。
通学路が子供を育てる。
確かにそうかもしれませんね。
これから萌ちゃんにはどんな楽しいことが待っているのでしょうか。
その後を想像するのが楽しい作品でした。

15/04/08 そらの珊瑚

光石七さん、拝読しました。

小学校の通学路、親にとっては心配ですよね。
親目線で共感してしまいました。
商店など、大人の目があるのはありがたいものですが、
それがなくなりつつある現代、
田舎だからこそかえって物騒な箇所もあったり。
息子は中学校の通学路で入学早々、田んぼにつっこみました。
田植え前だったのは幸いです(笑い)





15/04/09 泡沫恋歌

光石七 様、拝読しました。

親は子どもが小学校に入学した頃は、いろいろ心配でしたが、すぐに子どもって慣れるんですよね。
うちは家の前から集団登校で、高学年のお兄ちゃんやお姉ちゃんに手を引かれて連れて行って
貰いました。
私が働いていたので、放課後は学童保育だったしね。

通学路の描写が分かりやすくて、主人公と一緒に歩いているような気持ちになりました。

15/04/10 滝沢朱音

思いがけず、親子で同じ通学路。
「もうちょっとで平らな道になるからね」が、深いなぁって思いました。
たいへんなこともあるけど、平らかな道になるからね、みたいな。
なんとなく、「いたいのいたいのとんでけー」のニュアンスも感じます。

15/04/10 光石七

>海見みみみさん
コメントありがとうございます。
“同じ通学路を行くことになった娘に道を教える母”というイメージが浮かんだものの、なかなか話が膨らまず、まとまらず……
主軸が曖昧で、お恥ずかしい限りです。
ラストは取ってつけた感がありありですが、萌が楽しい学校生活を送れるよう私も祈りたいです。

>そらの珊瑚さん
コメントありがとうございます。
私自身は経験がありませんが、わが子の初めての学校生活・通学に親はいろいろ不安を持つものだと思います。
父がこっそり後をつけたのは私が小一の時の実話です(笑) そして慣れると本を読みながら帰り道を歩いてた私(苦笑)
大人の目、地域の目って子供の安全には必要ですよね。

>泡沫恋歌さん
コメントありがとうございます。
集団登校はうちの地域は無いですね。学童保育が始まったのも結構最近です。
作中の通学路は私が小学生の時に歩いてた道がモデルです。主人公と共に歩いてくださり、うれしいです。

>志水孝敏さん
コメントありがとうございます。
入学前に通学路を歩く母娘のイメージとかつての自分の通学路をくっつけて無理矢理話らしく仕上げただけで、自分としては主題がブレブレで深みも含みも無いと思っております(苦笑)
読み取ってくださる志水さんの感性が素晴らしいのだと思います。

>朱音さん
コメントありがとうございます。
その台詞を深く汲み取ってくださるとは…… なんか、「すみません m(_ _)m」という気持ちになってきます……
単純に自分の小学校までの道を思い浮かべて「あの坂、小さい子にはキツよなあ……」と思って書いただけでした。
いつも読んでくださる皆様の感性に助けられております。

15/04/14 草愛やし美

光石七さん、拝読しました。

自分の選んだこととはいえ新しい道を選択した主人公はどんな思いで娘さんを送り出したことでしょう、娘へ馳せるお母さんの想いが伝わってきます。娘さんはきっとドンドンたくましくなって生きていかれることと思います。

小学生であっても、遠い道のりの通学路を余儀なくされる子供達がいるのも事実。比較的都会の育った私ですが、結構近くても大変だったことを思いますと、萌ちゃんを案じられる主人公の気持ちは半端ないものだろうと察します。

15/04/14 光石七

>草藍さん
コメントありがとうございます。
離婚の理由も実家で暮らすことを選んだ理由も一応考えてはあるのですが、本文中に簡潔に入れることができずに省いてしまいました(苦笑)
道のりの遠い・近いに関わらず、親はわが子を心配するものなのでしょうね。
色々な通学路があると思いますが、願わくはすべての通学路が安全で楽しいものであってほしいですね。

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