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クナリさん

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将来の夢 絵本作家
座右の銘 明日の自分がきっとがんばる。

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大きな土地の物語

15/04/06 コンテスト(テーマ):第八十一回 時空モノガタリ文学賞 【 三匹の子豚 】 コメント:8件 クナリ 閲覧数:1363

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大きな土地に、たくさんの褐色の家族が暮らしていました。
家族達はお互いに助け合いながら、逞しく狩りをしたり、森の木の実を採って暮らしていました。
彼らは、藁でできた軽くて柔らかい家に住んでいました。
褐色の家族達は、季節が変われば住む土地を移らねばなりません。
そのためには簡単に作ったり壊したりできる、藁の家が一番よいのでした。

ある日褐色の家族達の下に、白い人々が現れました。
褐色の家族達は、新しく移り住んで来たと言う白い人々を歓迎しましたが、白い人々は大きな土地を睨みながら、
「騙された! とんだ未開地だ! 褐色の田舎者でいっぱいだ!」
と蔑みました。
その晩、褐色の家族達が寝静まると、夜中に大火事が起きました。
火炎はほうぼうの家で燃え上がり、褐色の家族達は一晩ですっかり丸裸になってしまいました。
褐色の家族達の族長は、助けを求めて白い人々の集落へ向かいました。
すると、白い人々は辺りの森の木々を散々に切り倒して、立派な木の家をたくさん建てていました。
「白い人々、いくつか家を貸してはもらえんか」
それが褐色の族長の、最後の言葉でした。
森がなくなったので動物も木の実も採れなくなり、褐色の家族達は皆息絶えました。

白い人々は家畜をたくさん飼っていたので、食べ物には困りませんでした。
大きな土地が自分達のものになったと、白い人々は祝杯をあげました。
すると次の日、鮮やかな青い民族がやって来て、大きな土地をよこせと言って来ました。
白い人々は怒りましたが、青い民族は白い人々を散々に打ち負かして、家畜を残らずさらって行ってしまいました。
白い人々の大将は、青い民族の家に家畜を返して欲しいとお願いに行きました。
青い民族は頑丈なレンガの家に住んでおり、大将は到底青い民族には敵わんということを思い知りました。
青い民族の王様は、家畜の代わりによいものをやるから皆に配りなさいと言って、たくさんの膨れた袋をくれました。
白い人々の大将は、戻って早速袋を皆に配り、白い人々はそれぞれの家の中で一斉に袋を開けました。
袋の中には、大きな顎の白アリが詰められていました。
飛び出した無数の白アリはあっという間に木の家を食べ尽くし、それでは足らずに白い人々も食べ尽くしてしまいました。
白い人々の大将は、顔中の穴という穴から白アリに侵入されながら、仲間と総出で褐色の家族達の家に火をつけて回ったことを思い出しました。

青い民族は邪魔者のいなくなった大きな土地で、白い人々から奪った家畜と共に、長いこと暮らしました。
やがて森は再び木々を蓄え、獣は戻り、大きな土地を自然がまた覆いつつありました。
レンガの家の青い民族は豊かで安全な生活を送っていましたが、敵に怯えたり戦ったりすることがなかったので、いつの間にか皆すっかりひょろひょろになっていました。
新しい若い王様は、このままではいけないと、若者達に体を鍛えさせました。
男達は狩りに出るようになり、色々な獲物を採りましたが、同時に自然の巨大さも思い知りました。
青い民族は自然と共に生きる方が立派なことだと思うようになり、軽くて柔らかい藁の家を建てました。
火をつけたり白アリをまいたりする人達さえいなければ、獣の防ぎ方を分かって来た青い民族には、藁の家で充分だったのです。

彼らは次第に、自然の気候に合わせて、季節が変われば土地を移るようになりました。
誰もがますます逞しくなり、家畜を放しても狩りと採集だけで暮らして行けるようになりました。
太陽の下で生活することが長くなった彼らは、次第に体が青色から褐色に焼けて行きました。
そんなある日、大きな土地にあでやかな緑色の種族がやって来ました。
青から褐色になった民族は緑色の種族を歓迎しましたが、緑色の種族は自然いっぱいの大きな土地を睨みながら、
「どこが新天地だ! とんだ未開地だ! しかも汚らしい褐色のやつらで一杯だ!」
と蔑みました。
褐色の民族はこれに腹を立て、
「褐色のどこが汚らしいのだ」
と怒りました。
しかし緑色の種族は手に手に松明を取ると、
「みすぼらしい家め、こうしてくれる」
と藁の家々に火をつけ、自分達は丈夫なレンガの家を建てて逃げ込みました。
今度の火は藁の家を焼いただけでは収まらず、季節風に乗って大きな土地の隅々まで広がり、森も川も焼き尽くしてしまいました。

季節風がどう吹くかを知っていた褐色の民族の内の何人かが、かろうじて逃げのびました。
火が収まってから戻ってみると藁の家は残らず焼けていましたが、レンガの家々も灰になって、中の人々ごと風に崩れて運ばれていました。

ある褐色の若者が、一軒のレンガの家の床に、何か文字が書いてあるのを見つけました。
けれどそれはもう確かに失われてしまっていて、今はどうしたって読めないのでした。


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このストーリーに関するコメント

15/04/06 海見みみみ

クナリさん、拝読させていただきました。
とても皮肉な物語ですね。
人々の暴力性が連鎖し、最後はほとんど誰もいなくなってしまう。
三匹の子豚になぞらえた物語としてはかなりスパイスが効いていました。
それにしても青色の民族が外に出たことで肌が褐色になるのが面白いですね。
褐色の肌が物語の象徴の一部になっていました。

15/04/07 クナリ

海原みみみさん>
寓話がテーマなので、じゃあそれをモチーフにした寓話を自分でも書いてみようか、ということでこのような仕上がりになりました。
内容に対して、ちょっと長過ぎたかな…と思っています。改めて、完成度の高い古典は凄いですね。
せっかく未熟ものが書くのだから、もっとぐろくとか、しょうもなくしても良かったのかもしれません。
コメント、ありがとうございました!

15/04/09 つつい つつ

 歴史はくり返す。どれだけループしても、愚かさは変わらない。
 その虚しさが読みごたえありました。

15/04/11 クナリ

つつい つつさん>
ループするタイプの話は、自分が書くと安っぽくなるというか、お話よりも書き手の着想が前に出る感じがする気がして控えていたのですが、今回は昔話風に書いてみたこともあって、試してみました。
完全なるループではなく円環の終わり(ではないのですが)にしたことで、登場人物たちのこれからに前向きな変化が産まれれば良いのですが。
コメント、ありがとうございました!

15/05/01 クナリ

志水孝敏さん>
ありがとうございます。
小説然としていない、神話とか童話みたいなかたちの物語を作ることは自分のひとつの大きな目標であります。
どうしても不自然になったり読みづらくなったりしてしまうので、まだまだ勉強が足りません。
固有名詞を出さずに、世界をこの土地に限定しつつ全体の説明をぼんやりさせることでスケール感出す…というのは今回の狙いの一つだったので、コメント大変うれしいです!

15/05/04 光石七

なんとも皮肉でもの悲しい寓話ですね。
人間の侵略性と暴虐性、自然の力の大きさなど、歴史の縮図のようにも感じました。
レンガの家の床に書かれていたのは一体どんな言葉だったのでしょう……
クナリさんがこのようなテイストで書かれるとは少し意外な気もしましたが、読み返してみるとやはりクナリさんらしさも随所に感じられ、すごい書き手さんだと改めて思った次第です。
素晴らしいお話をありがとうございます。

15/05/08 クナリ

光石七さん>
自分としては珍しいアプローチでした…が、絵本的な文章も書けるようになりたいので精進あるのみですね。
無理に2000字にこだわる必要もなかったのかもしれません。
もっと簡潔に、テンポよくまとめられなかったのかなと、いまさら思うのです(^^;)。
コメント、ありがとうございました!

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