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レイチェル・ハジェンズさん

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性別 女性
将来の夢 冒険家
座右の銘 人生は上手くいくことばかりじゃない

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そんな君は

15/04/02 コンテスト(テーマ):第七十九回時空モノガタリ文学賞 【 通学路 】 コメント:1件 レイチェル・ハジェンズ 閲覧数:1591

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 僕の家は小中高どこへ行こうにも歩いていける距離にあった。地図で学校を直線に結んだら三角形が出来て、その内に僕の家がすっぽり入る感じだ。


 僕の家は恵まれた所にある。特に凄いのが中学の時だ。
 10分寝坊をしても、走れば間に合う距離にある。
 20分寝坊をしても、出勤中の親父の車に乗せてもらえたら間に合ってしまう。


 だから高校に入った時――。
 授業中に「遅れました」と入ってくる君の姿が新鮮に見えた。男の子ならともかく、女の子だ。遅刻届けを手に教室に入ってきて、先生の視線をすみませんと言って交わす。


 遅刻届けを教卓に置いて、出席簿を訂正する先生の後ろを颯爽と通って行く。そして窓側の一番前の席に座り、数秒ガサガサという音をたてて教科書を出す。そして、授業は何事もなかったように進められて行く。


 彼女は遅刻の上級者だ。遅刻のスペシャリストだ。


 周りの皆が彼女は落ちこぼれと決めつけている訳ではない。
 ただ僕が呼んでいるだけ。

 彼女は色白美人だし、いつもシワのないカッターシャツを着て来るし、ミニスカートをしたって下品に見えないし、詳しく性格は知らないが不良のように荒れてはいなさそうだし、成績も上の中だ。おまけに中学の時はバスケで県内トップ5に入ったと聞いた。


 遅刻はいけないこと。
 だけど、僕は彼女が授業中に入って来て席に着くまでの10秒間が好きだった。
 教卓に登って背中を向ける、あの後姿をじっと見てしまう。


 夏を思わせる涼し気なショートカットの高低が絶妙で、うなじが見えるか見えないか……思いっ切り掻き揚げて見てしまいたい、もどかしさを誘る。
 シワのないカッターシャツの中に映るのは女性らしい華奢な身体。スカートの下から伸びている脚はしまっていながらも、程好く筋肉がついていて。
 誰もが頷く絶世の美女なのだ。


 彼女はどうやら同性にも異性にもモテるらしく、よく2年生の教室の前をウロウロする1年生の姿が見られた。それはそれは、滅多なことでは動揺しない俺すらも結構ヒいてしまう数が。



 3年生になりゴールデンウィークが開け、僕は久し振りに登校していた。家と学校が近いため相変わらず徒歩通学だが、彼女に会えるのであればそれも苦にならない。
 今日は初夏を思わせる良い天気で、仄かに吹く風にも微笑みが漏れる。


「おはよっ」


 そう声がかかり、背中をぽんと誰かが押した。彼女だ。肩につくかつかないか位の髪の毛を揺らし、俺の横にすたっと現れる。色白の肌が眩しい、紛れもない彼女だ。


「おはようございます」
「うん、おはよう」


 1,2年と同じクラスだったものの、話した事もない僕と彼女。しかも彼女はあまり喋る方ではなくて、俺もそれは同じだ。
 顔と名前と誰かから聞いた情報と、そんな関係の僕達が今何故か話している。


「今日は電車もバスも乗り遅れなかったからね、調子いいんだ!
 テンションあげあげっ。なんちゃって」
「そうなんだ。良かったね」


 彼女のハスキーボイスが間近で聞けていることが幸せ過ぎて、心臓がバクバクだ。


「いつもはね、ほんっとに分刻み! 移動は全部走って行かないと直ぐ遅刻になっちゃうし、乗り遅れたら次どれ乗るか調べなきゃならないんだけど、今日は3分くらいバスが遅れててね、順調にこれたんだなー、これが。よゆー、よゆー♪」


 僕の3分と彼女の3分。僕の3分じゃ何も変わらない。
 ふと疑問に思う。彼女は定期券を鞄から提げているが、電車やバス、色々ある。


「いつもどれくらい乗り換えたりしてるんです?」
「えっとね、いつもはー……遅刻すると最悪でも7回かな。今日は5回!」
「え、いつもそんなに移動してるんですか!」


 電車オンチな僕は彼女の言葉に度肝を抜かれる。ましてやバスなんて余計に無理な存在である。彼女の地元の高校は廃校になったと聞いてこっちの学校に来ていると聞いたが、そこまでしないと来れないなんて。


 そうそう、5回だったんだよね〜と得意気に自慢する彼女の笑みが可愛い。思ったより身長のない君が可愛い。サラサラの髪の毛に触りたい。うなじを思いっきりみたい。


 君をジロジロ見ていると、
 君は周りを見渡して、


「遅刻せずに来れたら、ここの通りってこーんなに人がいて賑やかなんだね。
 私、鍛えてもっと速く走れるようになろうかなっ」


 ってニコニコ笑った。君が気付いた大発見は僕の毎日の光景で。腕をぐるぐる回す君は、太陽の光を浴びてキラキラ輝いている。


 僕の見飽きた光景に心躍らせる君は、もう遅刻はしないのだろうか。
 そう残念に思った時、


「これから遅刻せずに来るからさ、一緒に学校行かない?」


 僕はまたしても度肝を抜かれる。


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このストーリーに関するコメント

15/04/02 海見みみみ

レイチェル・ハジェンズさん、拝読させていただきました。
高校生特有の甘い恋愛に胸がキュンとなりました。
最後のオチもいいですね。
可能性を感じさせるオチなので、妄想が捗ります笑
七本もの電車やバスを乗り継いでくる彼女。
彼女と主人公の今後に期待です。

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