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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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あるテーブルの一生

15/03/24 コンテスト(テーマ):第八十回 時空モノガタリ文学賞 【 テーブルの上 】 コメント:14件 海見みみみ 閲覧数:1772

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 僕の名前はテーブル。佐藤家の食卓をやっています。しかしそれも今日でおしまい。佐藤家が引っ越しをする事になり、僕は処分される事になったのです。

 佐藤家の皆さんとは沢山の思い出があります。
 家具屋さんで展示されていた僕を佐藤家のお母さんが見つけてくれた事。あの時「これからは毎日このテーブルの上にご馳走を並べよう」とお父さんに言ってもらえたのが嬉しくて忘れられません。
 息子のタカシ君の誕生日には沢山のご馳走が用意されました。僕の上に並ぶご馳走をタカシ君とお父さんがおいしそうに頬張ってくれます。お母さんと一緒に僕も誇らしい気持ちになりました。
 そんなタカシ君もご両親に叱られて、夕ごはんを抜きにされたことがありました。「お腹が空いたよう」と涙ながらに僕の上でため息をつくタカシ君を見ていると、僕まで切なくなってきます。すると頃合いを見て、お母さんが夕飯の残り物を僕の上に置いてくれました。それを見て、お母さんに感謝しながら、箸を手に取り、おいしそうにご飯を食べるタカシ君。僕まで幸せな気持ちになりました。
 ところがタカシ君が大人になった頃。悲しい事が起きました。ご両親が揃って事故で亡くなってしまったのです。それからタカシ君は毎日暗い表情で過ごすようになりました。僕の上に置かれるのもコンビニのお弁当やカップ麺ばかり。とてもさびしい気持ちになりました。
 しかし止まない雨はありません。タカシ君に彼女ができ、彼女さんが毎日料理を作ってくれるようになったのです。僕の上に並ぶ温かい料理。タカシ君はもちろん、僕もまた暗い気持ちが吹き飛んでいきました。
 それからすぐにタカシ君は彼女さんと結婚し二人の生活が始まりました。仲睦まじい二人の日常。それを僕は見守っていました。
 そんな日々に変化が起きたのは、奥さんのお父さんが倒れた時の事です。奥さんはお父さんの介護をするため実家に戻りたいと言い始めました。タカシ君もそれに同意。この家を売り払い、引っ越しをする事になりました。

 そして今日、引っ越し業者がやってきて、家具が運ばれていきました。大半の家具がその役目を終え、粗大ごみとして処分されるとの事です。その中には僕も入っているようでした。
 今日でこの家での暮らしもおしまいか。僕はセンチメンタルな気持ちになりました。佐藤家の皆さんとの沢山の思い出。それを思うと、僕はテーブルのくせに泣きそうになるのです。
 すると引っ越しの準備をしていたタカシ君がやってきました。タカシ君が僕の事を優しく撫でてくれます。
 タカシ君ともこれでお別れか。寂しいな。
 そんな事を考えていると、驚くべき事がおきました。タカシ君が急に泣き始めたのです。
「今まで、本当に、ありがとう」
 そう言って泣きながらタカシ君は僕を撫でてくれます。僕も耐え切れなくなり、涙は流せないけど、タカシ君と一緒になって泣きました。
 ありがとう、タカシ君。僕はこの佐藤家での出来事をずっと忘れないよ。今まで本当にありがとう。さようなら。

 それから僕は車に乗せられ倉庫のようなところに連れて行かれました。その後も処分される事はなく、倉庫の中で放置され続けます。時々僕の前を人が通ることはあるけど、見向きもされません。僕はどうなるのだろう。そう不安に思いながら倉庫の中での日々を過ごしました。

 倉庫の中に置かれてから一年が経った頃でしょうか。幼い子供連れの家族が僕の前に現れました。何やら話し合った後、頷き合います。
「このテーブルにします」
 お父さんらしき人が倉庫の管理人さんにそう言うと、僕の上に『売約済み』という紙が張られました。
 もしかして。僕の胸は高鳴ります。
「これからは毎日このテーブルの上にご馳走を並べよう」
 そうお父さんが口にした時、過去の出来事と重なり、僕は自然と泣いていました。目の前には幸せそうに笑顔を浮かべる家族の姿があります。
 今度もまた大事にしてもらえると良いな。そんな事を思いながら僕は新しい家族に引き取られていきました。


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このストーリーに関するコメント

15/03/24 泡沫恋歌

海見みみみ 様、拝読しました。

ほのぼのとした、テーブルのお話良かったです。
最後に新しい持ち主が現れて、お払い箱にならなくて安心しました。

けなげなテーブルさんに幸多かれ♪

15/03/24 海見みみみ

泡沫恋歌さま>
ご覧いただきありがとうございます。
テーブルの物語、楽しんでいただけたようで何よりです。
今回も幸せな気持ちでまとめたくなり、このような終わり方になりました。
それが好評で嬉しいです。
それでは感想ありがとうございました!

15/03/24 草愛やし美

海見みみみさん、拝読しました。

心があったかくなるお話ですね。きっと、テーブルさんは再び、素敵な持ち主さんと楽しく過ごせることと思います。ホッとする終わり方で笑顔になりました。良いお話をありがとうございました。

15/03/24 海見みみみ

草藍さま>
ご覧いただきありがとうございます。
今回はほのぼの路線を目指してみました。
おっしゃる通り、テーブルさんは再び素敵な持ち主さんと楽しく過ごせると思います。
笑顔を届けられて何よりです。
それでは感想ありがとうございました!

15/03/27 戸松有葉

テーブルの耐用年数を調べている最中にどうでもいいことだと気づきました。終わり方が素敵で読後感がいいです。ありがとうございます。

15/03/27 海見みみみ

戸松有葉さま>
ご覧いただきありがとうございます。
テーブルの耐用年数に関してはフィクション故のマジックということで^^;
終わり方を褒めていただき光栄です!
今回の終わり方は私自身も気に入ってます^_^
それでは感想ありがとうございました!

15/03/30 つつい つつ

別れと出会いが優しく描かれていて素敵な作品だと思いました。
ストーリー全体が温かさに包まれていて心地よかったです。

15/03/31 海見みみみ

つつい つつ様>
ご覧いただきありがとうございます。
別れと出会いの物語というのは死と再生の物語に通じる普遍性を持っていますよね。
今回は童話のようなテイストを目指していたので、温かくて心地よいと言っていただけて良かったです。
それでは感想ありがとうございました!

15/04/05 海見みみみ

宮塚 梢さま>
ご覧いただきありがとうございます。
家族とともに過ごしてきたテーブル。
きっと梢さんの言う通り磨かれて素敵なテーブルになっていることでしょうね。
家具とは人間の生活に密接に関係するもの。
ぜひ皆様に大事に扱っていただきたいものです。
それでは感想ありがとうございました!

15/04/07 メラ

海見みみみさん、拝読しました。
心温まるお話ですね。なんでも大事にしたいものです。
新しい家族と、楽しく過ごせるといいですね。

15/04/07 海見みみみ

メラ様>
ご覧いただきありがとうございます。
家具でもなんでも物は大切に扱いたいものですね。
きっとこのテーブルは新しい家族と素敵な時間を過ごせると思います。
感想ありがとうございました。

15/04/20 光石七

拝読しました。
家族を見守ってきたテーブルの純粋な心に胸を打たれますね。
新しい家族に大事にされますように。
心が温かくなるお話をありがとうございます。

15/04/20 海見みみみ

光石七さま>
ご覧いただきありがとうございます。
読んでくれた人に少しでも優しい気持ちになって欲しかったので、温かくなるお話との評価、とても嬉しく思います。
きっとこのテーブルは新しい家族のもとでも幸せに過ごすことでしょう。
感想ありがとうございました!

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