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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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ガリバーな男

15/03/23 コンテスト(テーマ):第七十八回 時空モノガタリ文学賞 【 嫉妬 】 コメント:8件 泡沫恋歌 閲覧数:1949

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「ヨッ!」
 挨拶とおぼしき掛け声と共に、いきなり髪の毛をワシャワシャされた。
「な、何するんだ」
「おまえのつむじ可愛いなあー」
 友人の石田君は僕よりずっと背が高い。
 たぶん185p以上はあるだろう。どこに居ても頭一つ高いので目立つ。僕は心の中で『ガリバー』と呼んでいる。
「もぉ! 身長差を使った冗談はやめてくれる」
 クシャクシャにされた髪を手クシで直しながら抗議する。
「スマン、スマン。おまえくらいの身長の女の子って理想だよな」
 女の子? その言葉にムカッときた。
 僕の身長が165センチしかないから、女みたいってことか。
「背が低いからってバカにすんなっ! 牛乳は毎日欠かさず1リットルは飲んでる」
「牛乳なんか飲んでも背は伸びないぞ」
「へ?」
「牛乳は骨密度が上がるだけ、身長は遺伝子で決まる」
「遺伝子?」
「そう、両親の身長だな」
 父160センチ、母152センチ、うちは両親そろって背が低い。僕にはノビシロがない!
 石田君の言葉にズ―――ンと落ち込む。

「ん? どした? 背が低いこと気にしたのか」
 僕のコンプレックスに気付いた石田君は、俯いた僕を上から覗き込む。
「落ち込むなって! 俺なんか小五で170センチもあったから小学生割引が利かなくて苦労したんだぜ」
 170センチの小学生の石田君より今の僕の方がチビなんて……悔しい、よけいに傷ついた。
「チョコやるから機嫌直せ」
 そう言って鞄からきれいな箱を取り出した。
「これって、もしかして?」
「ああ、バレンタインに貰ったチョコだ」
 長身イケメンの石田君は大学の腐女子に人気がある。バレンタインには食べきれないほどチョコを貰っていた。
 無類の甘党なので、女の子よりチョコの方が好きみたい。
「これ、ゴディバのチョコじゃん」
「美味いから最後まで取ってた」
「本命チョコだろ?」
「俺は女となんか付き合う気ない。おまえにやる」
 石田君の本命チョコなんかいるか!
 今年のバレンタインは母と姉と保険のおばちゃんがくれただけ。小学生の頃はチョコ10個は貰ったんだ。だんだん貰えなくなったてきたのは……僕の背が低いせいかもしれない。高校時代に付き合ってた女の子にフラれた理由が、「チビの彼氏なんて、カッコ悪いもん」その言葉は今も胸に突き刺さっている。
 やっぱり男は身長なのか? 朴念仁の石田君がモテるのは背が高いせい?
「ホワイトディーはどうするの?」
 チョコいっぱい貰った奴は、ホワイトディーにスッテンテンになぁれ。
「ああ、全員に俺が折った紙飛行機あげるつもりだ」
「マジか!? ゴディバのチョコにも同じ物で対応とか……」
「俺からチョコくれとは言ってないぞ。そっちが勝手によこしたんだ。誰がどのチョコくれたかなんて覚えていない」
 うわーっ! なんちゅうゾンザイな対応なんだ。
「去年は俺が着てたセーターを解いてボンボンにしてあげたら全員に感謝されたぞ」
「まるで教祖様みたい……」
 モテモテの石田君が癪に障る!

 数日後、石田君が珍しく大学を休んだ。
 お勉強大好き、滅多に病気しない彼はいつも講義には出席している。その石田君が僕に連絡なしで休むなんて……。
 身長の件でムカついていたが、ちょっと心配になってメールをしたら、昼過ぎに返信がきた。
『ケガをして入院している。鶴屋八幡の最中が食べたい』
 入院だって? だが、見舞い品を指定してくるあたり、大したケガではなさそうだ。大学が引けてから、石田君が入院している病院に向った。
 なんと病室の前で驚愕した、『面会謝絶』の紙が貼ってある。どうしようかと迷っていたら、ドアが開いて石田君が出てきた。
「そろそろ、おまえが来ると思ってな。さあ中に入れよ」
 石田君の頭には包帯が巻かれていた。
「面会謝絶だけど、大丈夫?」
「これか? 面倒臭い見舞客が来ないように、俺が書いて貼った」
「勝手にそんなことしたら怒られるよ」
 あははっ、と石田君が元気に笑った。

「そのケガどうしたのさ?」
「祖母の茶室で鴨居に頭をぶつけて、脳しんとうを起こして救急車で運ばれたんだ」
「茶室って、あんな狭い所は無理だろう」
「うん。茶室破壊しておばあちゃんに大目玉喰らった」
 やっぱりガリバーだ! 
 情けない顔の石田君を見て、溜飲が下がる思いがした。僕が持っていった最中を美味そうに食べている。
 何やら病室の前が騒がしい。
「石田君のケガは大丈夫ですよ」
 ドアを開けて石田ファンの腐女子たちに告げたら、中から「止めろ!」という制止の声がした。その瞬間、彼女たちが雪崩れ込んできた! 
 お菓子の箱を持って、みんなで石田君を取り囲む。まるで教祖を崇める信者のようだった。――その光景を茫然と見ていた。
 
 断じて僕は、石田君に嫉妬なんかしていない!


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このストーリーに関するコメント

15/03/23 海見みみみ

泡沫恋歌さん、拝読させていただきました。
石田くんのモテモテっぷりに驚愕ですね。
やはり男子は身長なのでしょうか……。
なんだか複雑な気分です笑
それにしても石田くんと主人公の関係がまるで恋人みたいですね。
主人公が実は女の子なんじゃ……と少し疑ってみました笑

15/03/24 草愛やし美

泡沫恋歌さん、拝読しました。

おお、石田君シリーズですね。さすが石田君、おもてになりますね。嫉妬するわよなあ、男性にとって背の高さは重要なモテ要素ですから。先日、テレビで面白い番組をしていました。街中で背の低そうな男性に声をかけ、身長を聞きその場で、計測するという企画です。ほとんど全員、サバよんでました。女性は体重企画でしたが、サバよみたくなる気持ちわかります。身長などは自分の努力では何ともできないものですから、辛いですよ。

ところで、牛乳は、背を伸ばすのでなく、骨密度をあげるものなんですか、目からウロコでしたので、そこが大変印象に残った私です。苦笑 

15/03/25 メラ

恋歌さん、拝読しました。
コメディタッチで、筆休めにくつろぐ作品でした。
ちなみに私は177センチ。それなりに高い方。古い家に行くとよく鴨居に額を打ち付けます。背が高くて得をしたなぁと思うのは、満員電車の中です。まあ、今は田舎暮らしなので満員電車とは無縁ですが。

15/03/27 そらの珊瑚

泡沫恋歌さん、拝読しました。

このシリーズは二人のキャラが立ってて、その掛け合いもとっても面白いです。
相変わらず石田くんはひょうひょうとしていて、女の子よりチョコの方が好きって、石田くんらしいです。
そんな石田くんへの嫉妬もなんだか微笑ましく感じました。

15/03/29 鮎風 遊

なるほど、最後の言葉が面白いですね。
やっぱりそう言い切らないと、やってられないですね。

嫉妬、その構造は嫉妬されてる石田君はそれに気付いてないことかな。
頑張れ、僕!

15/04/03 泡沫恋歌

海見みみみ 様、コメントありがとうございます。

いつも読んでくださり、感謝しています。
男子の魅力のすべてが身長ということもないと思いますが、見た目だとやはり長身の方が
有利かもしれないね。
この二人はBLではないけれど、それに近い友情があるようです。


草藍 様、コメントありがとうございます。

石田君シリーズは作者が楽しんで書いてる分野です。

牛乳を飲むと背が伸びるというのは、単なる思い込みなんです。
というか、昔の日本人はカルシュウム不足で本来伸びるはずの身長に達してなかったのです。
それが、牛乳を飲むようになって、カルシュウム不足が解消されて、本来のDNAまで
身長を伸ばすことができたのです。
いくら頑張って牛乳飲んでも両親が小柄だと限界があります。


メラ 様、コメントありがとうございます。

箸休めというか、コメディタッチの作品なので理屈抜きで楽しんで貰えればいいと思ってます。
そうそう、長身の人に聞きましたがあっちこっちで頭をぶつけるので、結構痛い思い
をするらしいですね。
メラさんの頭気をつけてね。

15/04/03 泡沫恋歌

志水孝敏 様、コメントありがとうございます。

この二人はお互いを気に入ってるようで、なんだかんだ言っても、腐れ縁というか
仲良しさんなんです。
私、こういうBLっぽい男子の友情モノを前から書いてみたかったので楽しんでいます。


そらの珊瑚 様、コメントありがとうございます。

石田君のボケと僕のツッコミがいい感じになってきました。

こういうキャラものって書いてる内に、どんどんキャラが自分から動き出すんですよ。
だから、彼らに勝手に喋らせて、それを書き写すようなものです。


鮎風 遊 様、コメントありがとうございます。

この話は「嫉妬」といっても、微笑ましいお話です。
最初から、この二人は同じ土俵には上がっていません。
圧倒的な石田君のモテキャラに僕は太刀打ちできませんが、実は石田君は・・・
女の子なんかよりも、僕に対して好意を持っているのです(笑)

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