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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

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紙達の夜

15/03/19 コンテスト(テーマ):第七十八回 時空モノガタリ文学賞 【 嫉妬 】 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1801

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 今夜も、何やら紙達が騒がしい。
 ◇
「今は昔、鶴女房という憐れな物語ありけり。なぜか縁あってこの本の主人公様にお仕えすることはや二年……」
「何、ぶつくさ言ってるのよぉ、聞いてるカー君」
「あっ、はい、聞いていますよ。白雪姫は、毒をもられて死ぬのですぞ、それは苦しいこと、ハタを織っている方が楽かと……」
「そっか、苦しむのはヤダなぁ」
「でしょ、姫といっても皆様ご苦労なさっております。シンデレラとは、灰被りという意味ですぞ、土間に這いつくばって家事にこき使われるのです。親指姫は、気持ちの悪いヒキ蛙とあやうく結婚させられそうになり嘔吐しながらも、本の中では笑顔を絶やさずという大変な役どころ。決して嫉妬に値するような役どころではないようです」
「でも、あの人達は姫なのよ。私には逆立ちしたって与えられない身分。古女房なんてなりたくなかった。しかも一方的に別れも告げず逃げ出す役割よ、どう考えても情けないじゃない。嫉妬してないけど、姫になりたいの」
「ここ数年ご自身の本の利用者がおられないので、他の主人公様方に嫉妬されるのは理解できます。私の本とて同じ運命、埃を被ったまま何年も、誰の手にも触れていただいておりませんので」
「やっぱり、姫様は人気があるのよ」
「執事のカーとしましても、懸命に交渉に駆けずりまわっておりますが、皆様、姫の地位は譲りたくないようです」
「私だって児童書の主人公のひとり、姫になりたかったのに、民話の鶴女房。ハタ織って飛んで行くだけってパッとしない役割。もっと、煌びやかな主人公になりたかった、シンデレラはお城の王子様とダンスして、ガラスの靴がピッタリ合う場面で、読者の注目。的でしょ。映画にもなって羨ましいったらないわ。白雪姫も小人に囲まれて大切にされていいよねえ。だのに、なんで、私は姫にもならず女房なの」
「でも、おつう様だからこそ、私が執事でおれるのですぞ」
「そうよね、ツウといえば」
「カーですから、イソップ童話内のおしゃれカラスの話に出ております私が抜擢されてしまった……」
「かぐや姫の交渉はどうなったの」
「かぐや様で、本当に良いのですか。冒頭で狭い竹の節内に入らなければなりませんよ。確か、おつう様は、閉所恐怖症、唯一交代を許された、鉢担ぎ姫で、パニックを起こされ大騒ぎされたのでは?」
「姫だけど、鉢担ぎは最悪よ、鉢の中は真っ暗で狭くて、到底耐えられない、無理! かぐや姫も却下」
「では、もう嫉妬などせず、凛として鶴女房の世界にお留まりになってはいかがでしょうか?」
「でも、私みたいにパッとしない主人公いないわよ。美貌、財産、恋愛どれをとっても読者の憧れの的になる要素がない。私はボロボロの羽根で飛び去って終わり。この図書館に並んでいる児童書コーナーで一番惨めな主人公よ。同じコーナー住まいしているのに何て不公平なの。この五年、借り手が誰も現れないなんて、惨めすぎるわ」
「では姫様役の女性でなく、男性方ではいかがでしょうか? 男の方々なら、女性にお優しいので即交代して下さると思いますよ。桃太郎はいかがですか? カーのメモによりますと、おつう様は財産の良しとか」
「ダメ、あれ強奪してきたものよ。逮捕されちゃうって浦島君が言ってたよ」
「では、その浦島様ではいかがでしょうか。華やかな乙姫様と婚活体験など楽しいのでは?」
「捨てられて爺さんなんてまっぴらよ」
「ダイダラボッチは?」
「あの体系じゃ、ダイエットボッチになるだけ」
「三年寝太郎は?」
「寝るだけなら、眠り姫のほうがまだましよ。わくわく感半端なく眠れるもの。でも、眠り姫は駄目よ、それでなくても、おとぎ話は、読者が減る一方なのに、百年も寝ていたら、その間に見向きもされなくなるわ」
「的を得ておられますなあ」
「ああ、図書館中の主人公達から嫉妬されるほど貸出いっぱいの主人公になってみたいものだわ。目を引く容貌も輝かしい未来もない鶴の私……何て惨めなの、ぼろぼろになった羽根で山の向こうに飛び去るだけ。慕ってくれるのは覗き見する旦那だけ」
「おいたわしや、おつう様。同じ鳥類仲間としてこのカラスの私がイソップより出て参って何とかならないものかと頑張っております。いっそ、入り口付近のベストセラーコーナーにある推理小説の殺され役にでも交代されますか? あれらの者ならば、毎日、誰かに貸し出されていると聞いておりますが」
「……」
「はいはい、わかっております。あくまでも、児童書コーナーに拘られるのですね」
 ◇
──図書館の片隅に日本の民話コーナーがある。海外児童書である「イソップ物語」が並んで数年経った。誰かが間違えて入れてしまったようだが、隣に並ぶ「鶴女房」共々、ずっと借り手がいないため間違いに気づかれないままだ。
 ◇
 紙達の騒がしい夜はいつまで続くのだろう。


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このストーリーに関するコメント

15/03/19 海見みみみ

草藍さん、拝読させていただきました
紙たちの軽妙な会話が実に楽しいですね。
嫉妬というテーマからこう言った面白い会話劇を作り上げる手腕はさすがだと思います。
果たしておつう様が誰かに借りてもらえる日はくるのか。
それまでの間、紙たちの騒がしい夜は続くのでしょうね。

15/03/20 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

とっても楽しいお話でした。
まさかつうとカーだとは(笑い)
個人的にはつるなのに人間になって子供まで産んじゃうおつうさんは、スゴイひとだと思うけれど♪
今は民話とかははやらないのかなあ? ちょっと寂しいですね。

15/03/20 泡沫恋歌

草藍 様、拝読しました。

いつもながら、驚くような着眼点! このユニークさが真骨頂!
それにしても、日本の昔話の主人公たちって・・・なんか、微妙な終わり方するのが多いよね。
雪女も子どもを残して、雪山へ帰っていくし、ハッピーエンド感がないのが昔話の特徴かしら?

おつうさんとカーくんの会話、楽しく読ませていただきました。

15/03/22 鮎風 遊

日本の民話コーナーにイソップ物語、これはややこしいことになりますね。
まるでたこ焼きの中にシュークリームが混じったようなもの。

でも、どちらも好きですが。

15/03/24 滝沢朱音

タイトルから「神々たちの遊び」というコントを思い出しました。
つうとカーで、ツーカーかぁ(笑)
夜の図書館、そこらじゅう登場人物が抜けだして騒がしそうですね!
公の機関だけに、借り手のないまま死蔵されてる本もたくさんありそうですよね。

15/04/01 草愛やし美

>海見みみみさん、登校してすぐにお読みいただきとても感激しました。創作者にとって読んでいただけることは大変な励みになります。海見さんは投稿されたみなさんの作品にコメントを入れられていて、凄いなあと驚いています、なかなかできないことと思います、投稿されている作品は全て、みなさんが懸命に書かれた作品だと思いますので、それを大切に思っておられるのだろうと考え、頭が下がる思いです。
嫉妬はやはり自分のそのもの、いわゆる自分を見透かされる課題だと思いますので、どういう設定で挑むのかとても難しいと思いました。この作品は軽いイメージの嫉妬で書いてみました。嫉妬にも恨みになる深い物と、悔しいけど憧れを感じるような軽めの嫉妬があると思います。どちらも挑戦したいと思い、軽いイメージはこれにしてみました。コメントありがとうございました。

>そらの珊瑚さん、いつもお読みいただき嬉しいです。コメントありがとうございます。
そそ、「ツウトカー」のおやじギャグから思いついた作品です。これで、やっぱり草藍はおやじギャグ好きだったということがバレバレになりましたよねえ。って、もうバレテいるかもですね。苦笑

>泡沫恋歌さんお読みくださってありがたいです、コメントたいへん励みになります。ありがとうございます。

日本の昔話は教訓なので、女性が結構不幸になるように感じます。かぐや姫だって、好きな方と添い遂げたかったはずと密かに思う私です。西洋の昔話はお姫様になったりして女性が幸せになるので、どうしても嫉妬されるかもですよね。イソップのカラスはあまりいい結果じゃないものばかりですので、出演してもらいましたが、真意はツウとカーのギャグ成立のためだけかもです。大汗

>鮎風游さん、たこ焼きにカスタード入りって最近見ましたよ、チョコ入りもあるようです。でも青のりは合わない?苦笑 楽しいコメントに笑顔いただきました、ありがとうございます。

>滝沢朱音さん、お忙しいと思いますのに、いつも私のようなものの拙作にお立ちよりいただきほんとうに嬉しいです。コメント凄く励みになります、ありがとうございます。

紙の本が流行らなくなっているとよく耳にしますので、図書館も死蔵している本が多いかもしれません。読んで貰える日を夢見て、毎夜話しているかもしれません。きっと騒がしいことかと……。爆笑

16/01/24 やっちゃん

夜の図書館は騒がしいですね。
草藍さんの巧みな着眼点に驚かされます。
電子書籍など流行っているそうですが我々はやっぱり紙の本がよろしいですね。
嫉妬から出た素晴らしい小説に魅せられて読ませていただきました。

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