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リアルコバさん

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真夏の夢

12/07/16 コンテスト(テーマ):【 水族館 】 コメント:4件 リアルコバ 閲覧数:1892

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「うわぁ大きいねぇ ママあれなんてお魚?」
女の子は巨大な水槽に顔をつけるようにして聞いた。
「ん?マグロじゃない」
水族館に来てまでスマホを弄らなくてもと思うほど無関心に母親が答えた。
(違う それはカツオだ)
ほの暗い館内はまるで水の中に居るように、通路を除き天井までぐるりと水槽に囲まれている。
「ねぇママ あのちっちゃいのは?」
女の子の顔はもうガラスに張り付いているようだ。
母親がそれを無視して
「ほら 鮫さんもいるよ」
指を指してまたスマホに目を向けた。
「わぁ鮫さんだぁ」
(違う それはエイだ)
よほど解説に行こうかと思ったが、都会ではそれが要らぬお節介で有ること位はわきまえている。
女の子はキラキラの眼にゆらゆらする水の明かりを写してゆっくりと歩いて行った。

「ほらあんたの好きなトロが泳いでる」
「どれどこ?」
「ほら大きいね 美味しそう」
(おいおい トロは泳がないだろ)
会話の通りふくよかな親子である。
肥満気味の男の子が身体を揺するように海亀を追いかける。
「ほらカツオも 脂が乗ってそうね」
息子に輪をかけた体つきの母親は食べ物の事しか頭にないのだろうか。

それにしても快適なほど涼しく、大海原の中のベンチに居るようだ。
とてもじゃないが炎天下の地上に出る気はしない。
マグロの群れがひっきりなしに右回りに泳いで行く。
それを追い抜くようにカツオが群れてUターンする。
その規則正しそうで実は不規則な動きは、見ていて飽きない。
あぁ生まれ変わったら魚ってのもいいなと思う。

水の中を游ぐ夢を見た。
ガラス越しに同じ顔した人間を見た。
何度も何度も同じところをグルグルと回っていた。
鮫に追われても生き延びた。
群れの中から遅れておいて行かれた。
結局岩影のウツボの隣で地砂地に隠れる名も知らぬ魚。

「ねぇあのオジちゃんまだ居るね」
スマホを仕舞った母親がちらりと此方を見て、娘の手を引いて出口へ向かった。
いつの間にか館内には蛍の光が流れている。

今日も再就職先は見付からなかった。


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このストーリーに関するコメント

12/07/17 汐月夜空

リストラされたおじさんが水族館で周りのお客さんの声を聴いて心の中で突っ込みを入れていく。
どことなく現実から逃避して、水槽の中や夢に集中しているところがリアルで良いなと思いました。
>都会ではそれが要らぬお節介で有ること位はわきまえている
元の会社で何かあったのかな、と思わず考えてしまう思考ですね。

12/07/20 桐原草

都会の孤独なおじちゃんの気持ちがラストの一文に現れていて、思わずうっとなりました。

12/07/22 リアルコバ

汐月夜空様
コメントありがとうございます
深読み頂き痛み入ります(笑)

12/07/22 リアルコバ

桐原草様
コメントありがとうございます
そんなオジサンが書いてます

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