W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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12/07/16 コンテスト(テーマ):【 花火大会(花火) 】 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:2013

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サワオは反射的に銃をかまえた。
銃といってもそれは、相手を気持ちよく失神させることができる、いわゆる天国鉄砲といわれているしろものだった。
前からココがさっと腕を伸ばして、逸る彼の気持ちを制した。
「よけいな騒ぎをおこしたら、手がつけられなくなるから」
サワオは素直にうなずいた。はじめてやってきた惑星の、荒々しい自然に圧倒されておもわずうろたえてしまった。ココはさすがに二度目だから、腹がたつぐらい落ち着いている。
「かれらはそんなに、凶暴なのかい」
「とんでもない。カナカ人たちはみな、素朴で、心優しい人たちばかりよ」
「だっていまきみは、手がつけられなくなるっていわなかったかい」
「興奮すると、変化するのよ。その様子をまぢかでみたら大変。だからわたしたち、これかぶってるんじゃない」
と彼女は、ヘルメットの顔の部分を覆うスモークを、これみよがしにいじくった。
「そのことはおれも、ここにくるまえに教わった。だけどまだ、よくわからないんだ。かれらのおこす、化学反応ってやつが―――」
「それは実際に、その目でたしかめないことには、理解できこっこないわ」
サワオが混乱気味にヘルメットの上から頭をかいたとき、にわかにココの態度がこわばっこれでた。
「あらわれたわ」
サワオもすぐ、数十メートルさきの岩場に姿をみせたふたりの、男女とおもわれるカナカ人をみとめた。これだけはなれているにもかかわらず、その均整のとれた優美な姿は見栄えがした。
「ゆっくり出ていくのよ」
いいながらココは、ヘルメットに装備された言語変換装置がオンになっているのをたしかめた。
少しはなれた場所にとめてある、ココたちが乗ってきたスペースボートには、カナカ人の大好物の蜂蜜が積載されていた。いま彼女の手にも、とろりとした液体のはいったタッパが携えられている。
「ニコニコと、愛想よく」
宇宙祭実行委員会におけるシミュレーションでサワオは、そのことをくどいぐらい頭にたたみこまれていた。繊細で、理知よりも感情面に重きをおくカナカ人に対する、それが心構えだった。
相手もすぐに、茂みからあらわれたココとサワオに気づいた様子だった。
「こんにちは」
ココの言葉はただちに、かれらに理解できる言語となって発せられた。
「わたしは、宇宙連邦都市からきたココと、こちらはサワオです。前回は大変お世話になりました。前回もちらといいましたが、きょうはみなさんにお願いがあってやってまいりました」
つづいてサワオが、
「みなさんの、そのすぐれた体質をお役にたてていただけないでしょうか」
前回ココから少しなりとも話をきいているかれらは、意外に冷静だった。が、ココがつぎにいった言葉には、二人とも狂喜した。
「これはおみやげの蜂蜜です。ボートには、もっとたくさんの蜂蜜が用意してあります」
カナカ人たちは文字通り、空を飛ぶようにやってきた。かれらの特異体質のひとつは、実際に空が飛翔できることだった。
「おれがわたしてもいいだろ」
とサワオがココから手渡されたタッパをもって、数歩前進したとき、いきなり枝のうえから、ムカデヘビとよばれるグロテスク極まりない生き物が、ばさりと彼の肩の上に落ちてきた。
「ひぇっ」
おどろきたまげた彼は、極楽鉄砲をむちゃくちゃに撃ちまくった。威力はしれているその武器の、唯一の欠点はすさまじい音をたてることだった。
たちまちパニック状態におちいったカナカ人たちは、いっせいに空の上に飛び上がっていった。
「あー、やっちゃった」
観念したようにココがいった瞬間、上空で色とりどりの光がさく裂した。その輝きは、何百メートルもはなれた大地を、明々と照らし出した。
「ごめんなさい。悪気はなかったのよ。どうか機嫌をなおしてください」
空に向かってひたすらなだめすかすココだった。
幸いなことに、カナカ人たちの興奮はあまりながつづきしなかった。最初に蜂蜜をみせていたのがよかったのかもしれない。ココたちの願いをかれらはうけいれてくれた。
後日、迎えにいった宇宙船に50人のカナカ人たちが乗って、宇宙連邦都市にやってきた。
宇宙都市建設100周年を記念して開催される宇宙祭の、幕開けにふさわしいイベントがこれで用意されたというわけだ。
さっそくカナカ人全員が都市上空につぎつぎと飛び上がっていった。
大気におおわれた広大な都市上空の、夜の闇のなかにかれらの姿がかき消されたとおもえたそのとき、いっせいにかれらの姿が強烈な光を放った。そのあまりにまぶしく、また美しい輝きは、都市周辺のすべての小都市からも、はっきりながめられた。
はるか歴史のかなたにみとめられる『花火』というものを再現しようとした宇宙祭実行委員会のもくろみは、こうして達成させられた。


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このストーリーに関するコメント

12/07/17 汐月夜空

W.アーム・スープレックスさんの作品は壮大なお話が多いですね。
カナカ人の体質とそれを利用した宇宙の花火大会が面白かったです。
ハチミツ好きなどの特徴も一体どこから発想したのか興味がそそられます。
本来理系の私としては、カナカ人のエネルギー源がなんなのかが気になりますね。驚き、でしょうか?

12/07/18 W・アーム・スープレックス

汐月夜空さん、ありがとうございます。
カナカ人のエネルギー源が驚きという発想はおもしろいですね。そこらあたりを、もう少し具体的に表現できればよかったのかもしれません。二千字内でとにかく、人を花火に昇華させたいと、そのことばかりに気をとられていました。夜空に燦然と光り輝く様子なども、もうちょっと美的に描けていればと、後になって悔やむのはいつものことです。

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