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汐月夜空さん

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悪夢のささやかな嫉妬

15/03/11 コンテスト(テーマ):第七十八回 時空モノガタリ文学賞 【 嫉妬 】 コメント:4件 汐月夜空 閲覧数:1406

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 悪。私はこの言葉が大嫌いです。
 私は人々に『悪夢』と呼ばれる存在。今日も安らかで柔らかな眠りにもぐりこんでは、あなたの中で眠っている激情を揺さぶりささやかな覚醒へと導きます。
 私、前にもあなたに会ったことがありますよね? 今だから言えますが、あなたがバクバクと鳴る鼓動と漠々とした思いで目を覚ます時、私はあなたの瞼の裏でひっそりと隠れていたのです。
 何ですか? 迷惑ですって? いや、そうですよね。私もまったくその通りと手を叩きたい限りです。まあ、私、手、無いんですけどね。あはは。私、黒いもやのような外観に砂のような光を撒き散らした存在で、良く例えるなら星空、あなたの知ってるものに例えるなら金箔入り羊羹……あれ、見たことないです? おかしいですね。3日前の夢で確かに見せたはずですが。まあ、いいです、どうでも。どうぞ、召し上がれ? 食べたくない? ですよね。
 で、なんの話してましたっけ。ああ、そうです。私が『悪』を憎んでいる話です。自分の名前を憎むのか、ですって? 当たり前じゃあないですか。あなたたちの世界にもあるでしょう、変わった名前、キラキラネームって言うんでしたっけ? あれと同じです。ドロドロネーム。私たちの中でも忌み嫌われる悪という言葉を使う時点で、私の両親の感性を疑いますよ。某鉄腕ア〇ムからでももじったんでしょうか。センスないです。
 まあ、ふざけるのもいい加減にしましょう。なんにしても私、悪って言葉、大っ嫌いなんです。良い印象無いですし。だって、世の中、悪ってだけで悪者じゃあないですか。私がなぜ皆さんに夢を見せるのか、それすら知らないで忌み嫌うなんて酷い話です。私はこんなにもあなたのことが好きなのに。あら、顔が赤いですよ? 照れましたか? あ、怒っただけですか、これは失敬。おっと、またふざけちゃいましたね。仕方ないんです。私、無形ですし、夢系ですから。
 え、なぜあなたに夢を見せるのか、ですって? それはまあ、夢を見せることは私の仕事ですし、アイデンティティですから。見せないと……消えちゃいますし。生きるために仕方ないんですよ。なら良い夢を見せろ、と? 残念。それは私、出来ないんです。それは同期の良威夢子ちゃんの仕事ですから。知ってます、夢子ちゃん? 超可愛いんですよ。皆魅惑される、魔性の人なんです。私も大好きです。ま、仕事は邪魔しますけどね。
 なにはともあれ、私、悪、って納得いかないんですよね。そりゃ、夢子ちゃんが仕事してるところに土足で踏み込んで仕事を横取りする時は自分が悪い事してるって思うんですがねえ。大抵の場合違うじゃないですか。あなたが夢を見ていない時に、言わば他の同期が仕事をさぼっている時に、私が一生懸命仕事をしているわけです。ニッチ産業ですよ。仕事の内容もそう。楽しい夢を見せる同期ばかりの中、辛い夢を押し付けるんです。
 なぜそんなことをするのかって? 本当はあなたも知ってますよね? 私が必要だってこと。あなたも起きているときに思ったことがあるはずです。あっちの世界が悪夢のようだって。ほら、定期的に私を見とかないと、例えるものが無くなって辛くなりません? なりませんか、そうですか。ですよね。
 まあ、冗談です。戯言です。私、存在自体が悪夢ですから、気にしたら負けですよ。あ、外が明るくなってきましたよ? そろそろ起きなきゃじゃないですか? え、今日は体調辛いから休む? まあそんなこと言わずに、起きましょう? その方がきっと心地よいですよ。悪夢を見せるのが私の仕事。言うならば、あなたを覚醒させるのが私の仕事ですから。ぜひぜひお仕事させてください。ほら、そう考えたら良い存在っぽくないですか? あなたが永遠の眠りに落ちてしまわないように番をしているのですから。お呼びじゃない? でしょうね。あなた、寝るの大好きですもんね。いや、あっちの世界、大嫌いですもんね?
 あっちの世界、私は大好きですが。ほら、あなたも含めて手があるし、足があるし、頭もあるし、なにより心があって、しっかりした思考がある。私とは大違い。羨ましいとんで恨めしく……この気持ち、なんて言うんですかねえ。嫉妬、が一番近いのでしょうか。だからほら、起きてくださいよ。安らかで柔らかな眠りから。他の同期の誘惑から。あっちの世界のあなたを終わらせてしまうのはまだ早いでしょう? 後悔しないように、ほら起きて。
 ……やれやれです。いつかあなたが私のことを良い夢だと、必要だと思ってくれるといいのですが。
 え、なぜ、って? そりゃあ、親に褒められて嬉しくない子供は居ませんから。
 あ、驚きました? 私の両親と言ったら『あなた』ですよね。
 ふふ、おはようございます、私の御両親さん。
 今日もそっちの世界で頑張ってください。
 あなたの悪夢の、私、より。


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このストーリーに関するコメント

15/03/12 海見みみみ

汐月夜空さん、拝読しました。
悪夢が語るマシンガントークにたじたじです笑
ところどころユーモアがあって、と楽しく読めました。
それでいてテーマは哲学的。
なんだか不思議な小説ですね。
こういう作品も良いと思います。

15/03/23 汐月夜空

海見みみみさん、コメントありがとうございます。
みみみみみさんという読み方で良いのでしょうか? 印象的な名前ですね。
キャラクターにずっと喋らせる話は書きやすいのと、自分自身こんな話になると思わないという意外性があって好きです。
夢の世界がいいことばかりだったら、永遠に夢の世界に生きたくなるだろうなー。悪夢もあるからバランスが取れるのかなー。なんて思いながら書きました。

15/03/25 光石七

拝読しました。
悪夢さん、結構ユーモアがありますね(笑)
確かに、いい夢ばかりだと夢の世界から出たくなくなりますからね。イヤな夢で目が覚めると気持ちもどんよりしてしまいますが、そうか、こういうふうに考えればいいんですね。
面白かったです。

15/04/05 汐月夜空

光石七さん、コメントありがとうございます。
悪夢さん良いキャラクターですよね笑 頑張ればいくらでも喋らせられそうな気がします。
面白かったといわれるのって本当に嬉しいですね。
ありがとうございます。

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