しーぷさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 疲れない程度にがんばる

投稿済みの作品

3

散歩

15/03/01 コンテスト(テーマ):第七十八回 時空モノガタリ文学賞 【 嫉妬 】 コメント:4件 しーぷ 閲覧数:1208

この作品を評価する

ここはシプノ動物園。
毎年冬の時期。雪が積もる頃に行われる園でも人気のイベントがある。
ペンギンの散歩だ。
散歩をするのはキングペンギン。彼らは集団で行動するという習性があるので散歩にはもってこいなのだ。

今日は今年の散歩初日。




「ペギ沢さん!」

俺は名前を呼ばれてよちよち歩きをピタッと止めた。しかし、すぐに後ろから続く同胞に急かされてまた歩き始める。

よちよちよち

歩きながら声のした方をきょろきょろと探してみる。
「こっちです」
先程と同じ声が聞こえた。さっきより近くなっている。

見つけた。

檻の中のハクトウワシが白い頭をこちらに向けていた。
雪の上でよちよち歩きを続けながら、飼育員のすぐうしろ、列の最前を歩くペギ沢が「どうした?」と訊いた。

「ペギ沢さん達はいいなぁ……と思いまして」
ハクトウワシのワシ田は太い枝の上でそう言った。

ペギ沢は言われている事の意味がいまいち理解できず、無言のままよちよち歩く。
すると、ワシ田はさらに続けた。
「ほら。そうやって外に出れるじゃないですか」
ワシ田は大きな翼をバサリと動かし、ペンギンの列を指す。
「僕は生まれてからずっとこの檻の中。だから、そうやって外に出れるペギ沢さんたちがうらやましいんです」

「ハクトウワシにはフライトショーがあるじゃないか」

飼育員の指示で空を豪快に舞う、シプノ動物園でとても人気なショーのひとつである。

「僕は体も小さいし、あんなにかっこよく飛べないから」
ハクトウワシの檻の隣にある広場では、ちょうどフライトショーが行われていた。


ペギ沢さんはよちよち歩きながら青い空を見上げる。
左右から人間の声がうるさく飛んでくる。
シャクシャクと雪を踏む感触が伝わってくる。


「お前にはそんなに立派な翼があるんだ」
ペギ沢さんは自身の細い羽でワシ田の翼をビッと指す。


「お前次第だ。全部」


広場では、空中でエサをキヤッチしたハクトウワシに向けて歓声が響く。


ペギ沢さんはよちよち歩く
飼育員の後ろについてよちよち歩く。


「俺たちはいつだって自由だぜ」

もうずいぶん遠くになってしまったハクトウワシの檻に声を飛ばす。

ワシ田がなにか言っているようだったけど、もう聞こえなかった。


ペギ沢さんは振り返らずによちよち歩く。


歩き続ける。


どこまでもどこまでも。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

15/03/01 海見みみみ

拝読させていただきました。
動物の可愛い話のはずなのに、すごくロックです!
ペギ沢さんに漢気を感じました。
よちよち歩いているだけなのにこの格好よさ!
素敵でした!

15/03/24 光石七

ネーミングに最初笑ってしまいましたが……ペギ沢さん、カッコいい!
ヨチヨチ歩きのペンギンのはずなのに、なんですか、このハードボイルド臭。
思わず1voteしちゃいました。
渋いねぇ。
しびれるねぇ。
面白かったです、ハイ。

15/04/03 しーぷ

海見みみみさん

ペンギンですのでね、歩くしかないんですよ彼には
つらくてもね
漢気、、感じていただけましたか。よかったです(*´∀`人)

コメントありがとうございましたm(_ _)m

15/04/03 しーぷ

光石七さん

笑った、、Σ(゜Д゜)
人の、、ペンギンの名前で笑うなんて!
お父さんとお母さんからもらった立派ななま、、、、
、、、ペン沢って名字かな?←

渋い、、
ええ、そうなんです
流行りのギャップ萌ってやつです←古くねぇか?(笑)

コメントありがとうございましたm(_ _)m

ログイン