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ゆうか♪さん

埼玉在住で、気が向いたら小説や詩やエッセイなどを書いています。                                                                                          下手の横好きで未熟者ですが、読んで下さった方がほっとするようなものをメインに書いていきたいと思っています。                                                                                                 たまに気分が沈んでいる時は暗いものも書いたりして、読者の気分を落とす危険性も……汗                                                                                                        こちらでは短編しか投稿できないので、その他の長編などは、ノベリストに投稿しています。                                                http://novelist.jp/member.php?id29090

性別 女性
将来の夢 色んな想いを描きたい。そして、それを読んだ方が何かひとつでも心の糧になるものを得てもらえたら・・何よりの幸せです。ヽ∩_∩ノ
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藍の夜空に

12/07/16 コンテスト(テーマ):【 花火大会(花火) 】 コメント:6件 ゆうか♪ 閲覧数:2142

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 あの日、あなたと見上げる藍色の夜空に、打ち上げられる花火の赤や青や黄色や紫。その色とりどりの映像が、今も脳裏にくっきりと刻まれているのに……。

 大勢の観客に混ざって、砂地に敷いたシートに座り込んで眺めたよね。覚えてるかな?
「わあ! 綺麗だー」「素敵だね!」なんて歓声も上げながら。

 あの時約束したよね。
 来年も、そのまた来年も、ずっとずっと来年も、こうして一緒に花火を見ようって。

 ドドーン!!

 ほら、花火の打ち上げが始まったよ。

 たこ焼きを1パック買って、二人で半分こして食べた時、たこ焼きがコロッと脱走して、私が着ていた白地に黄色い向日葵模様の浴衣の上にポロッと落ちたでしょう?
 あの時、慌てて取り出した藍色のハンカチで、あなたはゴシゴシ擦って拭いてくれたよね。
 そしたら却ってシミがくっきり着いちゃって、あなたはゴメンゴメンと頭を掻きながら謝ったよね。落とした私が悪いのに。

 仕方ないからその後クリーニングに出したら、ラッキーなことにすっかり綺麗になった。だから今年も着てきたの。見えてるかな?
「この浴衣、君にとっても似合ってる」って言ってくれたよね。
「そうぉ? もっと大人っぽいのが着たかったのに、お母さんがこんなの買ってきてくれて」
 私が照れてそう答えたら、
「向日葵のように、周囲の人に明るく微笑む君が好きだから。だから君にはぴったりだと思うよ!」
 そう言って優しい笑顔を向けてくれたよね。

 ドドーン!!

 ほらまた、今度はハート型の花火だよ。
 去年同じのを見た時、
「あのハートとぼく達のハート、どっちが大きいと思う?」
 そう聞くあなたに、私はふふふと笑っただけ。そしたらあなたは、
「絶対ぼく達のハートの方がでっかいぞ!」
 そう言って力瘤を見せて笑ったね。
 時々子供のように、そしていたずらっ子のように微笑むあなたが好き。
 そして時には、ずっと年上の人のように優しく言葉をかけてくれるあなたが好きだった。
 たった一つしか違わないのに。
 だから私はいつだって、そんなあなたの大きな愛に包まれて幸せだった。
 でもそのことを伝えないまま……。

 ドドーン!!

 ほら見て!
 今度は大きな枝垂れ柳だよ。
 色に派手さはないけれど、このシンプルだけど、雄大な感じが好き。
 そう、派手じゃなくてもシンプルな、素直で正直な愛が好き。

 本当は、もうあなたのことは忘れなくちゃいけないのかも。
 でも、もうしばらく――もう数年くらいはいいよね? あなたとの思い出に浸っても。
 だって、今年はあなたの新盆なんだもの。
 あの日、突然逝ってしまったあなた。私には何も言わないで。
 私がいくら泣いても戻ってはくれなかった。
 言おうと思ってことがあったのに、言えないままで……。

 だから今言うね。ちゃんと聞いて。
「あなたと付き合えて幸せだった。あなたに愛されて幸せだった。あなたが好きだった。とっても!! そしてあなたに愛される自分が誇りだった」
 堰を切ったように頬に熱いものが伝わる。
「――だからもう少し、あなたを好きでいさせてね。空の上から今も、私に微笑を投げかけてくれてると信じてるから」

 ドドーン!!

 今年最後の花火が上がったよ。
 でも来年も、そのまた来年も、きっとこの浴衣を着て花火を観に来るから。
 きっと来るから、ひとりでも――。

       ――お盆に思いを馳せて――


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このストーリーに関するコメント

12/07/17 汐月夜空

切ないお話ですね。
幸せだった二人が、突然の死で裂かれてしまう。もし、自分がなったらきっとこの作品の「私」のようになかなか忘れることはできないでしょう。
忘れなければならない思いなんて、たぶんないと思います。
最近災害が続いたり、突発的な自殺や殺人が相次いでいますが、その事件が起こるたびにこのように誰かが悲しんでいることを私たちは忘れてはいけませんね。
思い出の浴衣を着て見る花火、情景が浮かぶようで綺麗でした。

12/07/17 ゆうか♪

汐月さん 優しいコメントありがとうございます。m(_ _)m

今回は敢えて亡くなった彼の死因については書きませんでした。
それは読者の想像に任せようと思ったからです。

確かに最近は自然災害も多くて、予期せぬ大切な人を失くすという事態が図らずも多いですね。そんな人の周りにはこんな悲しみも少なくないことでしょう。そういうことへ思いを馳せてくださる汐月さんは本当に思いやりのある方なのだと感じました。
ありがとうございました。

12/07/24 かめかめ

新盆…。始めて聞く言葉。うちとこでは初盆と言います。

12/07/25 ゆうか♪

かめかめさん こんばんわ。

えっ? そうなんですか?
新盆〔にいぼん〕と、読みます。これって方言なのかしら?
もちろん初盆とも言いますよ〜。(*゚ー゚)v

いつも読んで下さってヾ(*´ー`*)ノ゛ありがとう♪

12/08/18 郷田三郎

読ませて頂きました。若い二人の会話だったのでしょうか。ちょっと赤面してしまうような甘い台詞たち。でも、恋愛MAX状態だとこんな台詞もスラっと出てしまうかも知れないですね。
そして唐突な別れ。この想いを生涯抱き続けるのか、それとも折り合いをつけて新しい人生を見つけるのか、ひとはそれぞれですがいずれにしても痛みは無くならないのだろうな、と思いました。

12/08/20 ゆうか♪

郷田三郎さん こちらにもコメントヾ(*´ー`*)ノ゛ありがとう♪

そうなんです。あえて年齢などには触れませんでしたが、私の中では20歳前後の女性が主人公のお話でした。
切ない想いを感じていただけたようで嬉しかったです。
心の傷は、あまりに深いと生涯消えない場合もありますが、それでもその傷を抱えながらも人は前進していくものだと思います。

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