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ジェラシックパーク

15/02/25 コンテスト(テーマ):第七十八回 時空モノガタリ文学賞 【 嫉妬 】 コメント:9件 るうね 閲覧数:2097

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「昨日、あの娘とデート、だったんだ?」
 ちょっと上目づかいでにらむような仕草。
「そ、そうだけど」
 そんな彼女に気圧され、思わずどもってしまう。
 彼女は、ふーん、と面白くなさそうにつぶやいた。
「ふーんふーん」
 ふーんを繰り返す彼女。教室の窓から差し込む西日で、その整った顔立ちが半分だけ照らされている。
「デート、って言っても、ちょっと買い物に付き合っただけで」
「デートじゃん」
 それってデートじゃん、と彼女は唇を尖らせる。その目に、うっすらと涙がにじんでいた。
 思わず、僕は彼女を抱きしめた。
「な、ちょ」
 戸惑う彼女。僕の腕の中から逃げ出そうとじたばたするが、僕はしっかりと彼女の身体に腕を回し、逃がさない。
「ごめん」
 その一言で、彼女の動きが止まった。
「ごめん。もう行かない。君を不安になんて、させない」
「……ばか」
 こつん、と。
 彼女は僕の胸に頭を埋めた。


「いいじゃないですか」
 疑似体験ホログラフィ装置の電源を落とした博士に向かって、僕は言う。
「これならきっと、人々に受け入れられますよ」
「そうかね」
 と、博士は満足そうだ。
 僕は、装置を手で触りながら、
「これは、いったい何を参考にして作ったのですか?」
「太古の昔、流行ったライトノベル≠竍漫画≠ニいったものだよ」
「見たところ、そういった文献はこの部屋にはないようですが」
「うむ。知人のところに預けてある。というか、大半の文献はその知人のものだ」
「なるほどなるほど」
 僕は手帳を取り出し、
「後学のために、その知人のお名前を教えていただいてよろいしでしょうか」
「よいとも」
 と、博士は数名の名を上げた。装置が完成した興奮からか、いつもより博士の口はなめらかだった。驚いたことに博士の口にした中には、現役の大学教授や政治家までが含まれていた。
 僕はその名前を手帳と心に刻みつけると、携帯電話を取り出した。
「ええ、はい。総監。ついに組織の全容をつかみました。突入部隊を」
 博士が呆気に取られた様子で、僕を見つめている。
「君、まさか」
「ええ、潜入捜査官です。博士、社会秩序紊乱罪によって、あなたを逮捕します」
「馬鹿な、私はただ、太古の昔に滅んだ嫉妬≠ニいう感情を復活させようとしただけで……」
「それが社会秩序の紊乱に当たるのです」
「人間が本来持っていた感情を取り戻させることの何が悪い!」
「嫉妬などという感情は、世界には不要です」
「先ほどの、先ほどのホログラフィ装置を使った時に、君は何も感じなかったというのか。甘酸っぱいなにかを!」
「あいにくと、そのような感情は持ち合わせておりませんので」
 無機質な僕の瞳を見て、博士はあきらめたように床にへたり込んだ。
「嫉妬という感情が失われたことで、ツンデレという概念もなくなり、ラブコメもただ延々といちゃらぶを続けるだけの駄ジャンルに成り下がった。この装置さえあれば、それを食い止め得たものを……」
 なんだか訳の分からないことを、ぶつぶつとつぶやいている。
 僕は無視して、装置の方に銃を向けた。
『昨日、何してたの? 何回も電話したんだよ』
 ホログラフィの少女が、ぷうと頬を膨らませる。
 僕は無視して、装置に銃弾を撃ち込んだ。


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このストーリーに関するコメント

15/02/25 草愛やし美

るうねさん、拝読しました。

なるほど、嫉妬は社会の秩序を乱すものなのですね。ないほうが人間関係はスムーズに回るに違いないのかもしれません。でも、なければどうなのだろうと……読後しばし考えてしまいました。

恋愛小説が成り立たなくなるのは顕著なように思います。そうなると、一番困るのは、物書きさんかもです。苦笑 自分には考えつかない嫉妬の捉え方、面白かったです。

15/02/25 るうね

るうねです。
コメント、ありがとうございます。

嫉妬が原因のいじめや殺人事件は、けっこう多いですからね。
嫉妬の感情がなくなれば、そうしたものは激減するでしょう。
でも、たしかに物書き、というか創作者全般は困るでしょうね。我々創作者は人間の心の闇を糧に、創作という行為を行なっている、と言えるかもしれません。
お読みいただき、ありがとうございました。

15/02/25 海見みみみ

拝読しました。
嫉妬のなくなった世界というのは、私も書く候補の中の一つに入れていたので、興味深く読ませていただきました。
なるほど、嫉妬と言えばやはりやきもち、ツンデレですよね。
それが無くなった世界とは実にもったいないと思います。
こういったディストピアものは長編にも向いていそうですね。
この物語の続きが読みたくなりました。

15/02/25 るうね

るうねです。
感想、ありがとうございます。

実は今作品、最初はタイトルに引っかけた一発ネタのつもりだったので、それほど深いテーマはなかったのですが、書いているうちにあれよあれよと。
しかしこうして見ると、人間は肉体的にだけでなく精神的にもよく出来てるなぁ、と感心させられます。
嫉妬という感情一つなくなっただけで、欠落感がハンパないですからね。
お読みいただき、ありがとうございました。

15/02/28 水鴨 莢

読ませていただきました。
わけのわからんもの悲しさがありますね。
ギャグだと思います。そんな装置いらん、ぶっ壊しちゃえ、って読んでて
思いましたし。
なのに最後まで読み終えるとなぜか悲しい・・・もし自分が捜査官だったら
任務遂行後は人知れず涙を流してしまうパターンに思います。
面白かったです。

15/02/28 るうね

るうねです。
コメント、ありがとうございます。

もともとはシュールギャグのつもりで書いたのですが、書いてみたらなんやら切ない風情が漂う作品となってしまいました。
やはり、人間には、というか創作物には嫉妬の感情が必要だということでしょうかね。
博士のコメントがまるっきりオタの言動なのは仕様です。
お読みいただき、ありがとうございました。

15/03/09 るうね

るうねです。
コメント、ありがとうございます。

嫉妬→ツンデレ→オタ文化、という発想しか浮かびませんでした。笑ってやってください。
ショートショートSFと言えば、博士ですよね。技術力の無駄遣い感がハンパないですが、現在のオタ文化もそういった面があるかもしれません。
お読みいただき、ありがとうございました。

15/03/23 光石七

拝読しました。
私も嫉妬の無い世界を考えてはみたのですが、全然書けませんでした。
ツンデレ、ラブコメ再興のために発明したというのにはクスリとしましたが、あの良さを理解しない主人公が怖いというか、哀れというか。
嫉妬によるいじめや事件も多いですが、嫉妬はその方向性によっては向上心につながると思います。
面白く、同時にいろいろ考えさせられるお話でした。

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