1. トップページ
  2. 女武将は刀を包丁に持ち替え戦う

草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

投稿済みの作品

7

女武将は刀を包丁に持ち替え戦う

15/02/23 コンテスト(テーマ):第七十六回 時空モノガタリ文学賞 【 戦国武将 】 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1560

この作品を評価する


「やめときな、板前は男の世界だ、苦労するだけだ、念寧はお家に帰ってネンネしときな」そう言ってよく苛められた先輩板前の洋平が前列に座っているのが見えた。手に持つ「念寧ガッツだ!」と書かれた応援プラカードを千切れんばかりに振っている。念寧の目頭が熱くなった。{先輩の厳しい指導のお蔭です}と念寧は心で感謝していた。
「念寧、大賞だ、よくやったな。お前ならできると思っていたよ。だからこそ、厳しく接してきたんだ。いつか女でも凄いって言われる料理人になるんだというお前の夢は天下取りの武将のそのものだ、さしずめ、お前は刀の代わりに包丁を携えた女武将ってとこだな」
 ◇
「リッチカネトンホテル主催の創作料理コンテスト、2015年カネトン大賞が今宵決定します。和食であればスタイルは問わずどんなメニューでも応募を受け付けてきましたカネトン大賞の今年のテーマ『戦国武将』には、総数二千百七十八の応募がありました。半年間に渡り各地で予選を実施、本日の決勝に秀養子(ひでようし)さんと高台念寧(こうだいねんね)さんが選ばれています。メニュー名は秀養子さんが城をイメージした「絢爛豊臣御膳」、念寧さんは戦国武将の好物を再現した「戦国パノラマ御膳」です。大賞レシピは当ホテルのメニューに採用されます。その他、協賛会社より特選戦国赤米や、戦国小判レプリカなど多数の賞品もございます。審査員には、料理評論家の法度鳥九(はっととりく)さん。カリスマシェフ山越立身(やまごえたつみ)さん、フランス出身の有名ソムリエ、ミッシュウラン(和名は密集乱)さん、愛知より戦国研究家の織田信短(おだのぶたん)氏もお呼びしています」
 カネトン大賞は年を重ねるごとに評判を呼び、今や国際的なレシピ公募大会として注目されている。

 まず、絢爛豊臣御膳の登場に会場は驚きにどよめいた。何と、大阪城をイメージしたという、大きな盆に城のように御飯が盛り上げられ、鰻や海老など様々な食材が飾りつけられたものだ。鯛や海老などの天麩羅が串に刺され御飯のあちこちに突き立てられている。串天の他に大阪名物串カツもある。まるで樹木のように乱立している。お堀を模し城の周りには石庭の如く流水状に抹茶塩やカレー塩が敷かれ、所々に焼鳥や一口ステーキなどが配されている。

 次に念寧が戦国パノラマ御膳を運んできた。盆の上に乗せられたそれは、見た目は質素に感じるものだが丁寧に作られていた。念寧がメニュー説明を読み上げる。
「先付は味の濃いものを好んだ織田信長に由来する焼き味噌です。
向付は、縁起物の鯛と出世魚の鰤を刺身、あしらい一式は紅白大根。
椀物は加藤清正が、朝鮮出兵のおり大変気に入って朝鮮半島から持ち帰ったとされているセロリを使い、虎狩にちなみ縞模様に仕上げました。
揚げ物は家康の好物であった鯛の天麩羅に三つ葉葵の家紋をイメージした三つ葉天麩羅も添えています。
煮物は武田信玄の好物、煮貝を提供しました。アワビの栄養価に目を付けた信玄は煮貝を戦場での保存食として用いたそうです。
焼き物は石田三成由来の鮎の塩焼きを、また伊達正宗より伊達巻を供しています。政宗のグルメ通は有名で午前と午後の二時間トイレで朝夕の献立を考えていたとか。伊達巻きは政宗の好物だったことから伊達巻と呼ばれるようになったそうです。
締めの御飯物としまして豊臣秀吉由来のひき割り粥にしました。白米を臼でひいて粥状にしたもの。上杉謙信が好んだとされる梅干も添えています。
水菓子代わりに真田幸村由来のこねつけ餅にしました。関ヶ原の戦いを控えたある夜、密かに幸村の訪問を受けた兄の信幸が深夜であるので飯を炊く訳にもいかず、残っていた冷や飯を丸め味噌で味付けした餅を、幸村に土産として持たせたといわれている品です。兄との思い出がつまった食べ物という訳です」
 ◇ 
「私がこの献立を考えましたのは、今の平和な世で戦国の時代に戦った武将たちが、ひとつの膳の中で集い、安らかに語り合っている姿を描いてみたかったからです。戦国時代は男社会でした。でも、周り全てが敵と思える緊迫した日々を過ごす武将たちをの歴史を作ってきたのは決して男性だけではないと思います。様々な形で、彼らを支えた女性の力も大きかったと思います。和の料理人の世界も戦国武将の世界と似ていると私は考えます。板前は女性には向かないと早くやめるようにと幾度となく言われました。でも、女性にしかできない料理もあるはず、細やかな心配りは和のおもてなしに通ずるものと考えています。今日、十歳の時に抱いた夢へ一歩踏み出せた気がしています。この想いが少しでも伝わるようにこれからも修行に励みたいと思います、ありがとうございました」

 受賞の喜びを語る女料理人の顔は、刀を包丁に持ち替え和食世界に新しい1ページを切り開いて行く武将そのものだ。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

15/02/24 滝沢朱音

秀吉とねねの、時空を超えた料理対決?!
包丁で戦う合戦っていいですね。その御膳の中には、武将たちの語り合う姿があって、平和で。
戦国パノラマ御膳、おいしそう。食べてみたくなりました。
歴史を舞台にしたレストランとかあったら面白そうですね!

15/02/24 鮎風 遊

受賞を祝福させてもらいます。
刀を包丁に持ち替えてよくぞ戦ったと。

さしずめ我々は…刀をペンに持ち替えて戦う創作武士か、
それとも、刀をマウスに持ち替えて戦う創作…身を削る鰹節か、
なんて思考が、制御不能になりました。

いずれにしても、偉大なる者はいつの世も女性です、よね、と納得。

15/02/24 泡沫恋歌

草藍 様、拝読しました。

なるほど、草藍さんの食文化に対する造詣の深さが伝わる作品でした。

女板前が包丁で戦国武将をイメージした献立を創り出すというのは斬新なアイデアだと
感心させられました。

想像しただけでヨダレの出そうな美味しいお話でした♪

15/02/24 光石七

拝読しました。
初めネーミングにクスリとしたのですが、料理の説明や受賞コメントにだんだんジーンときて……
料理界の女武将にこれからも頑張ってほしいです。
素敵なお話をありがとうございます!

15/03/01 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

戦国武将たちの食へのこだわりが様々で、面白かったです。
結構グルメだったのですね。
食は厳しい世界を戦っていくための重要なものって
分かっていたのかもしれません。
女料理人の今後の活躍、期待できそうです!

15/03/10 ドーナツ

おもしろい」!
このコンテスト 出てみたいです。

受賞の喜びを語る最後の台詞、100% 同意します。
歴史を見ても、男尊女卑だったものね。
細やかな心配りは女性ならではのものだと思います。

これからもがんばって!女料理人にエール送ります。

15/03/20 草愛やし美

>滝沢朱音さん、お読みくださってありがとうございます。

今回の戦国武将は難しかったです、朱音さんの作品を読んで唸りました。あのように素晴らしい作品を書ければなあと思いましたが、私には時代小説の設定はハードルが高いです。何とか、好きな料理の話でひとつでも書くことができほっとしています。コメントありがとうございました。

>鮎風游さん、今回はテーマにはこちらが、のたうち回らされました。なかなか書けず、美味しいもの好きな私は食べ物に走りました。苦笑 刀を包丁に持ち替えて勝負は恰好いいなあと自分で気に入った部分です。コメントありがとうございました。

>泡沫恋歌さん、食はなんとか書けました。滝汗 戦国武将というか時代小説は私には荷が重いです。時代設定や背景など、でたらめは書けないので、非常に苦しみました。拙作にコメントいただけてとても感謝しています、ありがとうございました。

>光石七さん、嬉しいコメントに頭が下がりました。汗 お言葉に励まされました。
今回の課題はほんと、苦しかったです。とりわけ、戦国時代は人間交差が激しく、どこがどなっているのかさっぱりわかっていない私です。そんな拙作にも温かいお言葉いただけ、本当に嬉しかったです、ありがとうございました。

>そらの珊瑚さん、戦国時代の食文化はユニークなものでした。食べることには興味がわきましたので、楽しく調べることができました。困難で書けないかもと思った課題でしたが、何とか形にすることができ嬉しいです。拙作にもかかわらず、温かいコメントをありがとうございました。

>ドーナツさん、来てくださって嬉しいです。
面白いコンテストですよねえ、ユニークな料理をされるドーナツさんなら、優勝間違いないと思いますよ。料理人の世界、とくに和食界では、まだまだ男性社会だと言われていますので、こういう女性がどんどん現れていくことを願っています。確実にこのような女料理人が増えているのも事実ですので、エールはリアルにも可だと思いますよ。コメントありがとうございました。

ログイン