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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

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九分九厘あり得ぬ話

15/02/22 コンテスト(テーマ):第七十六回 時空モノガタリ文学賞 【 戦国武将 】 コメント:17件 光石七 閲覧数:2668

時空モノガタリからの選評

猫に助けられるという発想がとてもユニークすし、「あり得ぬ話」と見せかけて、現代へとつなげてしまう構成が素晴らしいですね。歴史的な重大事件といっても、その裏にある動機は案外、冗談みたいなものだったりするのかもしれませんね。読みやすくとても面白かったです。

時空モノガタリK

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 あの男がこのような暴挙に出ようとは。秀吉の援軍に向かわせたはずが主君を奇襲。信長は歯噛みしつつ、なだれ込んでくる兵に矢を放つ。
(光秀……!)
弓が折れ、信長は薙刀に持ち替えた。近づく兵を切りつけ、突き刺す。鉄砲の弾が信長の肩をかすめた。敵勢は更に押し寄せてくる。信長は応戦を諦め部屋に下がった。寺に火を放つよう蘭丸に言いつけ、奥の小部屋に向かう。
(ここで果てようぞ)
戸を閉めようとした瞬間、一匹の白猫が入り込んできた。
「どこから来た? 早う逃げよ、火が回って来るぞ」
信長は猫を追い出そうとした。ところが猫は信長の背に飛び乗り首筋に噛んだ。信長の体が縮み、全身毛むくじゃらになっていく。
(なんじゃ、これは)
信長は小さなトラ猫になった。白猫は信長の首皮を咥えて駆け出し、炎に包まれていく寺から脱出した。
「ほう、大した親猫よ」
猫の姿に気付く者はあっても、気に留める者はいなかった。

「……というわけで、信長の死体はみつからなかったんだよ」
話を一旦区切り、空井はコロッケパンを頬張った。
「ヤブの脱線話から、よくそこまで妄想できるね」
口の中のいなり寿司を飲み込み、常木は穏やかに笑った。ヤブとは日本史の教師のあだ名だ。
「信長が猫になるって、意味わかんねえ」
並野は母の手弁当をつまみながら言う。
「同感。なんで猫が信長を逃がすんだよ?」
既に食べ終えた持田は缶コーヒー片手に反論に加わる。
「コマ子――あ、これ白猫の名前ね。コマ子は昔、川に落ちて流されていたところを信長少年に助けられたんだよ。長く生きるうちに神通力を身に付けたコマ子は、信長の危機を察知して本能寺に駆けつけた。恩返しするために」
空井の説明に、並野と持田はツッコミを入れる。
「コマ子ってどこから出てきた名前だよ?」
「神通力って……その思考回路が逆にスゲーわ」
「まあまあ。で、猫になった信長のその後は? 生き延びたなら、天下統一を再び目指しそうだけど」
常木が二人をなだめ、空井に続きを促した。
「信長は猫のままさ。コマ子は自分の命を削って信長を猫に変えたんだけど、人間に戻す術も余力も持ってなかった」
「……その設定、苦しくね?」
並野の呟きを無視して空井は続ける。
「信長は怒った。中途半端な助け方をするな、と。あと一息で天下を手中に収められたのに光秀に裏切られ、自害しようとしたら猫如きに邪魔された。武将として恥だ、と。そんな信長にコマ子は息も絶え絶えに言った。ならば猫の世界で天下をお取りください、と。そしてコマ子は息を引き取った。――やがて信長は旅に出た、猫界の天下統一の旅に。オス猫と出会えば戦い、屈服させていく。元々有能な武将だし、信長の勢力はどんどん広がった。――旅を始めて七年目、信長は一匹のブチ猫と対峙する。かつて自分に反旗を翻した明智光秀と」
「光秀も猫に?」
常木が驚きの声を上げた。
「光秀は秀吉に負けて逃げる途中、農民に竹槍で刺されて自害したって言われてるけど、首や遺体が本当に光秀だったのか疑問が残ってるだろ? 生存説もあるし。光秀も縁あった猫に助けられてておかしくない。そして猫の姿で衝突した信長と光秀は、死闘の末に相討ちしたのさ」
自分の考えを一通り話し終えたのか、空井は満足げだ。
「新説だね。根拠がみつかったら学会で発表したら?」
常木は柔和な顔で言う。
「何が学会だよ。話が滅茶苦茶すぎる」
持田は呆れている。
「これが事実だったら、俺、空井に百万やるわ」
「並野、本当? 持田も常木も聞いたよな?」
「聞いたけど、並野が百万払う日は永遠に来ねえよ」
「ひどっ! 持田、頭から否定?」
傷付いたように振る舞う空井だが、本人も自分の話を本気で信じてはいない。そのことは他の三人も承知している。仲間内の一つのネタだ。
「寄るな、馬鹿がうつる」
「この線からこっちに来るなよ、空井」
「小学生かよ!?」
友人たちのじゃれ合いに常木は微笑んだ。

「ミッチー、ただいま」
帰宅した常木は、テレビの前のブチ猫に声を掛けた。猫は常木を睨む。
『その呼び方はやめろ』
常木には鳴き声が意味のある言葉として届く。
「光秀だからミッチーでいいじゃん。……空井の奴、結構いい線ついてたな。本当に猫になって今も生きてるとは思わないだろうけど」
『学校で儂の話が?』
「空井の妄想さ。信長は猫になって本能寺から逃げた、後日猫の光秀と相討ちしたって」
『本能寺の後お館様がどうなったかは知らん。……お前、アレを喋ってないな?』
「まあ、自分の秘密もあるからね」
実は常木は人間ではない。狐だ。祖父の代から人間として生活している。光秀は三百年前に常木の先祖と出会って以来一族と同居している。
「言わないよ。お宝春画を横取りされた恨みから信長を討ったなんて」
『言うな!』
光秀は毛を逆立てた。


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このストーリーに関するコメント

15/02/22 海見みみみ

拝読させていただきました。
九分九厘ありえない話、そうわかっていても期待してしまいますよね。
その期待をオチに持ってきた手腕はお見事の一言です。
それにしても本能寺の変の理由がまさかこんなものだったとは。
笑わせてもらいました笑

15/02/23 夏日 純希

猫好きですね。最後のオチもGoodです。にんまりしてしまいました。
「その設定苦しくね?」がなんか三石さん自身への突っ込みっぽくて、
ちょっと執筆中の三石さんを勝手に想像して微笑ましく思ってしまいました(すいません)。

15/02/24 滝沢朱音

えーっ?!トラ猫になって本能寺脱出?!笑
しかも猫の世界の光秀と相打ちですか?こんな展開、絶対想像つかない。ぶっ飛んでて最高です!
コマ子に運ばれるのぶニャー(ΦωΦ)が様?!を想像すると、かわいくて癒やされました。
300年生きてるミッチーは化け猫さんなのかな? 最後、シャーッとなるミッチーがかわいい。
面白かったです!

15/02/25 泡沫恋歌

光石七 様、拝読しました。

戦国武将たちが可愛い猫ちゃんになってたなんて想像しただけで楽しい。
信長猫が全国を武者修行するなんて、きっと猫の世界で「天下猫」と呼ばれたことでしょう。

猫好きの私としては、このお話楽しめました♪

15/02/25 草愛やし美

光石七さん、拝読しました。

よくまあ、ここまで奇想天外な設定を考えられたことと笑いながら感心して読み終えました。

もしや、光石さんの飼い猫も、誰ぞが変身したものだったりして、ということは、光石さんは、ええーー、あのお方様でしょうか。なんて考えて楽しくなりました。  とても、面白かったです。

15/02/26 光石七

>海見みみみさん
コメントありがとうございます。
戦国武将にあまり詳しくない(日本史苦手)ため正攻法ではまず書けないだろうと思っていましたが、いろんな意味であり得ない中途半端なバカ話になったため、「ありえねー!」という自分の心の叫びをタイトルに使いました(苦笑)
本能寺の変の理由はとにかくバカバカしいものにしたくて、こんなのを持ってきました(笑)
笑っていただけて、ホッとしました。

>夏日 純希さん
コメントありがとうございます。
猫は大好きです^^ かわいいですよね。
オチににんまりしていただけて、よかったです。
「……その設定、苦しくね?」は単に空井の妄想へのツッコミ台詞のつもりで入れたのですが、確かに何よりも自分へのツッコミですね(苦笑)

>朱音さん
コメントありがとうございます。
ぶっ飛んでますか? 自分では中途半端なぶっ飛び方だと思っていますが。もっと突き抜けた話を書けたらいいのになあ、と。
猫になった信長と光秀に萌えて頂けたようで、うれしいです。
ミッチーは猫に変身させた猫又の妖力が強すぎて長生きしてるという設定です(本文に入れられませんでしたが)。

>泡沫恋歌さん
コメントありがとうございます。
ねこ武将たちが日本一を目指す『のぶニャがの野望』というゲームがあるみたいですよ(笑) 『信長の野望』の猫版のようです。
天下猫、いいですね。ボス猫の中のボス猫、といったところでしょうか。
猫は癒されますよね。
楽しんでいただけて何よりです。

>草藍さん
コメントありがとうございます。
あまり詳しくない苦手分野なので、真正面からぶつかって書くのはできなかったのです(苦笑)
「本能寺なう」とか武将たちにツイッターさせる案もあったのですが、人物像や相関図を整理できなくて諦めました(苦笑)
我が家のちーちゃんが誰かの変身後の姿だとしたら……うーん、千姫あたりかな? 光石が変身できるのは、ナーナ・レイザーストーンくらいですが(笑)

>OHIMEさん
心情的には“九割九分九厘”と表記したかったですね(笑) いやいや、こんな整合性を無視した中途半端なバカ話にロマンを感じてはいけませんよ(苦笑)
ネーミング、気付かれたのはさすがです。まさに“狐”から付けた名前でした。ちなみに空井は“空言”から、並野はいたって普通の反応をするから、持田は並野の意見に「もちろん」と賛同するから、という安直なネーミングでございました(笑)
本能寺の変の変な話(笑)への温かいコメント、ありがとうございます。

15/02/26 光石七

>志水孝敏さん
コメントありがとうございます。
戦国武将ってウィキペディアで調べても更にわからない人物や合戦などが出てくるし、整理して理解するのは自分には無理だと思ったんですよね。変化球で行くしかない、と。
中途半端なナニコレ話になってしまいましたが、楽しんでいただけてよかったです。
長編は、自分的にはあり得ないです(苦笑)
面白かったとのお言葉、ありがとうございます。

15/02/27 光石七

>リュウの助さん
コメントありがとうございます。
冒頭をもう少しシンプルにして、猫の姿での再会の様子(の妄想)を具体的に書いたほうが良かったかもしれませんね。
猫能寺の変、いいですね。思いつけなかったことが悔やまれます(苦笑)
励ましのお言葉、ありがとうございます。

15/02/27 冬垣ひなた

光石七さま、拝読しました。

猫の世界で天下取り。
自分も猫好きなんで、このありえない話はものすごく読みたくなりましたし、読み返して常木の言動も楽しめました。
それにしてもミッチー…オチで最初の緊迫感を崩壊させるあたり、やっぱり凄いと感じます。
楽しい話をありがとうございました。

15/02/28 光石七

>冬垣ひなたさん
コメントありがとうございます。
猫はかわいいですよね。
タイトルに“あり得ない”を使ったことで、「こんな変な話でも、あり得ないんだから別にいいじゃん」と開き直って投稿した部分も無きにしも非ず……(苦笑)
中身の無い、中途半端なおバカ話ですが、楽しんでいただけてよかったです。

15/03/01 そらの珊瑚

光石七さん、拝読しました。

戦国時代といえばあまりに有名過ぎるあの場面から
どう料理されるのだろうと思いましたが、まさかこのようなストーリーとは、面白すぎます!
もうこうなったら、狐でもたぬきでも、千客万来っていう気になっちゃいました。

15/03/01 光石七

>そらの珊瑚さん
コメントありがとうございます。
ええ、こうなったら狸でも猪でも鹿でも何でもwelcomeですね(笑)
本能寺の変は他の方と被りそうで本当は避けたかったのですが、戦国史がイマイチ理解できない自分の頭と、その死に疑問が残っている武将ということを考えた結果、やはり使ってしまいました。実際被ってしまいましたね。
少しでも笑っていただけたり、楽しんでいただければ幸いです。
こんなヘンテコ話を評価してくださり、逆に皆様に申し訳なくなってきます……

15/03/28 水鴨 莢

読ませていただきました。
オチは終わりぎわに若干つめこんできた感を受けました。
世界観にふくらみをもたせて終わる感じは悪くなかったんですけど、個人的な好みでいえばもう少しすっきり締めてくれても良かったかなーと。

単純ないち読者のわがままなんですけど、でもこの作品はそこじゃないってのがわかりきっているので先に書いてしまいました。
この発想と、そしてそれをオチにするでなくそこメインで書き切ってしまう手腕、内容の楽しさ、実に良かったです。
自分だったら発想を出し惜しみしてしまい、ここまで楽しい話にはできないだろうな、こういう書き方もあるんだな、と知った感じでした。

あと変なとこかも知れませんが、個人的に妙にツボったのは、
>空井はコロッケパンを頬張った。
というこの、戦国の世の不思議から一転、現代の日常にきました感のはんぱない文、コロッケパンの説得力がおもしろかったです。
ユーモラスでありながら、パッてしっかり場面の切り変わる感じが、なんだか。

15/03/29 光石七

>水鴨 莢さん
コメントありがとうございます。
ご指摘の件はおっしゃる通りだと思います。オチもキャラ設定もその場しのぎで、しっかり構想を練ったとは言えないので。
世界観とか全く考えていませんでしたし、もっと洗練された文章・構成でとことんぶっ飛んだ話に仕上げられれば良かったのですが。
皆様からの意外な高評価に戸惑っている次第です。見合った技量を身に付けられるよう、精進しなくては。
コロッケパンは意図的に出したので、そこに注目してくださりうれしいです。
時間軸(現代、学校の昼休み)や登場人物の立場(中学生or高校生)を間接的に伝えられるかなあ、と。
私は書く際の読者目線や客観性が不足しているので、ご意見やご指摘はとてもありがたいです。

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