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つつい つつさん

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15/02/22 コンテスト(テーマ):第七十七回 時空モノガタリ文学賞 【 渋谷 】 コメント:1件 つつい つつ 閲覧数:1368

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 くそっ……緊張する。約束の時間まで三十分もあるけど俺はどきどきしながら周りを見渡した。ハチ公の前には何人もの人が立っていたけど、それらしい子は見つからなかった。
 その日、俺は栃木から二時間かけて東京の渋谷まで来ていた。それも、女子に会いに。彼女の名前はルール、もちろん本名じゃない。

 彼女との出会いはネットゲームだ。それはモンスターを倒しながら進むRPGで、中高生に人気があった。俺は、その時モンスターに取り囲まれて死ぬ寸前だった。するとルールが颯爽と現れ敵を次々と薙ぎ倒した。それも、ぐちゃぐちゃに完膚無きまでに。
 でも、最初、俺はルールを嫌な奴だって思った。ルールのキャラはイケメンの戦士だったし「まだ、お前にはこのエリアは早いよ」なんて偉そうに言われたからだ。俺は「でしゃばっんなよっ!」って文句言ってやりたかったけど、どんな奴かわからないし怖かったから「ありがとう」だなんて答えてしまった。ルールは、ちゃんとお礼を言われたのが初めてだったらしく「まあ、気をつければいいよ」なんて、とまどっていた。
 それから、同じ高校生でゲームする時間がかぶっていたのもあって毎日顔を合わすようになった。そして、だんだんゲーム以外のことも話すようになりネットの中の友情なんてもんもいいなって思い始めた頃、ルールは自分が実は女なんだって打ち明けてくれた。その時は「そうなんだ、そんなのどっちだっていいよ」って、平然としてたけど、内心は、あせりまくっていた。俺は今まで女子と気軽に話したことなんてないし、話しかけられることもなかった。そんな女子とどうやって話したらいいかわからない俺は、それから二、三日は動揺しまくっていた。だけど、それは最初だけで、ゲームの中なんて顔もわからないし声が聞こえるわけでもないから、女子か男子かなんて、たいした問題じゃなかった。それにルールが自分で女子だって言っただけで本当かどうかもわからなかった。
 だけど、実際に会うことになった。それは、俺が何気なく東京に買い物でも行こうかなってつぶやいたとき、ルールが「だったら会う?」ってさらっと返してきたことで決定した。

 それまでの会話の中でルールが同じ高校生でしかも渋谷生まれ渋谷育ちってことがわかっていた。東京女子ってだけでもハードル高いのに、渋谷なんて俺にはレベルが違いすぎた。難易度が高すぎる。ゲーム初めて二時間くらいしか経ってないのにもうボスキャラに遭遇したようなもんだ。たぶん実際に会ったら俺みたいなダサい奴幻滅されてネットでも無視されるんじゃないかって思ったけど、それ以上に会いたかった。彼女いないどころか女子の友達いない歴十六年の俺に初めての女子友が出来るチャンスなんだ。男ならどんなリスクを背負ってでも立ち向かうべきだって自分に必死に言い聞かせた。ルールはさすがに東京女子の余裕ってやつか会う日が近づいても「じゃあ明日二時ね」って、普段と全然変わらなかった。

 時計を見ると約束の十五分前だった。ちょうど高校生くらいの女子が一人歩いてきたけど、あれは違うだろう。黒髪にメガネにロングスカート、どう見ても渋谷じゃない。あれは田舎の子だ。まあ、こんなメジャーな待ち合わせ場所じゃ、次から次と人がやって来るから見ただけで自分の待ち合わせ相手かどうかなんてわかるはずがなかった。スマートフォンを確認したけれど、まだルールからの連絡はなかった。
 それにしても、渋谷の女子か。ここで立っているだけで何人もの女子が通っていったけど、やっぱり違う。地元にだって派手な子とかスカートの短い子、金髪の子とかいっぱいいるけど、感覚自体はそんな変わらないって気がする。でも、東京女子は感覚というかレベル自体が違う。住んでる世界が違うから今まで見てきたこととか、してきたこと自体が俺の想像を越えている気がした。もうすぐルールと会うけど、会ってすぐにがっかりされてバイバイなんてことだけはないように祈った。

 約束の5分前になる。スマートフォンが鳴った。俺が電話にでると、すぐ隣から「もう、着いた?」って声が聞こえた。俺が「うん。来てるよ」って答えると、となりの地味で黒髪メガネの女子が「私も」って返事した。
俺がびっくりして振り向くと、彼女も驚いて目をぱちくりさせた。そのあと、堪えきれないように彼女が笑った。そして、俺もつられて笑った。俺らは、しばらくただ笑い合っていた。
 初めての女子友、それも東京女子、それは俺の想像なんかはるかに越えていたけど、今日はすごく楽しい日になる、そんな予感がした。


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このストーリーに関するコメント

15/03/21 海見みみみ

つつい つつさん、拝読させていただきました。
とてもさわやかなお話ですね。
読後感が大変素晴らしかったです。
ネットゲームを通じた友情、それも男女のものとなると色々夢が膨らみます。
ルールが地味な普通の女の子だったところが印象的です。

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