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海見みみみさん

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歴史が僕に教えてくれたこと

15/02/20 コンテスト(テーマ):第七十六回 時空モノガタリ文学賞 【 戦国武将 】 コメント:10件 海見みみみ 閲覧数:1621

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 幼い頃から僕は同性に興味があった。もちろんそれが普通でない事も理解している。でも僕が好きになる相手は決まって男の子だった。
 同性愛者である事を誰にも打ち明けられず、自分は異常者なのだと苦しむ日々。そんな日々を変えてくれたのが、茶沢君との出会いだった。

 茶沢君とは中学校の同じクラスで知り合った。当時からなよなよとしていて体の弱い僕に男の友達は少ない。対して茶沢君も友達が少なく変わり者扱いされていた。
 茶沢君が変人扱いされる理由。それは極度の歴史オタクである事だ。茶沢君に話しかけても、彼は戦国武将の話しかしない。
 自然と余り物同士の僕らは一緒にいることが多くなった。
「前田利家の妻まつは、わずか十三歳にして一児の子を産んでいるんだ」
「明智光秀は本能寺の変から、十一日後に豊臣秀吉との戦で敗れている。三日天下の語源とも言われているんだ」
 茶沢君と話していても僕は退屈だった。茶沢君の話が僕にとって興味のないことばかりだからだ。僕はいつも適当に相づちを打って茶沢君の話を聞き流していた。

 そんなある日。その日も茶沢君は戦国武将について淡々と語っていた。
「織田信長は女性関係のスキャンダルがあまり残っていないんだ」
「そうなんだ」
「むしろ織田信長が愛したのは森蘭丸のような小姓だと言われている」
 その一言に僕は驚いた。思わず話に食いつく。
「小姓って、男の子のことだよね?」
 すると普段は話に入り込んでこない僕に驚いたのか、茶沢君は目を白黒させた。
「そうだよ。当時は同性愛が普通だったからね」
 茶沢君の言葉はあまりに衝撃的な物だった。同性愛が普通とされる時代があったなんて考えたこともなかった。自分は異常者だ、そう思い込んでいた心が楽になる。
 僕は茶沢君の言葉に救われたのだった。

 それから僕は茶沢君の話を真剣に聞くようになった。茶沢君の語る戦国武将たちのエピソードは勇ましいものが多い。僕は男らしい戦国武将に思いを馳せながら話を聞き楽しんでいた。

 放課後。その日は特に話が盛り上がり、僕たちは教室に二人きりになっても話を続けていた。
「上杉謙信は戦国武将でありながら一人も妻をめとらなかったんだ」
「それは何でだい?」
「一説では、上杉謙信が同性愛者だったからだと言われている」
 茶沢君の口から発せられた『同性愛者』という言葉。それに僕の胸は高鳴った。
「そうか、上杉謙信も同性愛者だったんだね」
「上杉謙信も?」
 その言葉に僕は思わずしまったと青ざめる。これではまるで自分から同性愛者だとカミングアウトしたようなものじゃないか。
「吉田は同性愛に興味があるのか」
 そう言って茶沢君が僕の手に自身の手を重ねてくる。熱く濡れた瞳。
 この時、僕は茶沢君もまた同性愛者である事を悟った。瞬間、僕の体がウソのように熱く燃え上がる。
「吉田、実は俺も……」
 茶沢君がその言葉を口にしようとする。けれど僕はそれが怖かった。これ以上言葉を続けたら、僕たちは引き返せないところへ行ってしまう。その時の僕にはそこから先へ行く勇気がなかった。
「茶沢君、僕たちは親友だよね?」
 茶沢君の言葉を遮り発した言葉。それは僕たちの関係が先に進まないよう鍵をかける呪いの言葉だった。
「……そうだな、俺たちは親友だ」
 茶沢君が渋い顔でそう応える。僕は自身の臆病さに泣きそうになりながら、茶沢君とこの呪いの契約を交わした。

 それから数年後。僕は新宿のゲイバーで働いていた。今ではカミングアウトも済まし、ゲイとしての道を歩んでいる。しかし様々な男性と寝た今でも、あの日、茶沢君と見つめ合った時ほどの情熱を得られずにいた。これはあの時逃げ出した臆病な自分への罰だ。そう自分に言い聞かせ続けた。

 通勤の途中、僕は書店に立ち寄った。歴史関係の本を買うためだ。
 茶沢君の影響で僕はすっかり歴史オタクになっていた。違う高校に進学したきり茶沢君とは会っていないが、彼は今ごろ何をしているのだろう。
 そんな事を考えても無意味な事はわかっている。今更何ができるのか。何もできるわけがない。
 そう考えていた時、一冊の本が目に入った。
『戦国武将と同性愛 著・茶沢祐介』
 最初僕はその目を疑った。それはまさに茶沢君が書いた本だった。思わず本を手に取る。すると最初の一ページ目にこう記されていた。
『唯一無二の親友Yに捧げる』
 それが僕に宛てたメッセージだと気づいた時、体が熱くなった。もう我慢できない。これ以上言い訳するのはやめた。
 ケータイのアドレス帳から茶沢君の番号を見つけ、電話をかける。この一回だけ。この電話にもし茶沢君が出たら、僕はちゃんとこの気持ちを告げよう。そう思いケータイを握りしめる。するとケータイからぷつりという音がした。

「もしもし、茶沢です」


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このストーリーに関するコメント

15/02/21 海見みみみ

>志水孝敏さん
ご覧いただきありがとうございます。
今回『戦国武将』というテーマからどれだけ変化球が投げられるか考え、この切り口で作品を描いてみました。
こういったマイノリティーである人が『常識』から開放される話が好きなので、書いていて楽しかったです。
感想ありがとうございました!

15/02/22 草愛やし美

海見みみみさん、初めまして拝読しました。

戦国武将には同性愛者が多かった、ハッとしました。なるほど、きっとそうに違いないと思う史実もありますから。そこから、更に進み、側室制度は単なる子孫繁栄のものだったとすれば、女性にとっては失礼な話ですが、ある意味、その武将は大変な苦労をしたのか、あるいは、戦地に赴いても、蘭丸のように手元に愛人を置くことが可能であったとすれば、世間体も良く、その武将にとって良かったのかもしれぬではないか、とか……読後、あれこれ心配で考えを巡らしてしまいました。苦笑 (余計なお世話でしょうが……)

研究したことを一冊の研究書にしたためた茶沢君、素晴らしいです、愛の告白までやっちゃってですよ。凄いかもですね。面白かったです。

15/02/22 海見みみみ

>草藍さん
ご覧いただきありがとうございます。
戦国武将の性事情、いろいろ根が深そうですね。
この辺りを茶沢君のように本当に研究してみるのも面白いかもしれないですね。
『面白かった』の一言、大変嬉しく思います。
この度はコメントありがとうございました!

15/02/23 石蕗亮

海見みみみさん
拝読いたしました。
上杉衆の話は割りと有名ですね。
それをモチーフに山田風太郎や桑原水菜などの作家さんも作品を書かれていますね。
私も学生時代よく同姓に告白されたことを思い出しました。
否定はしませんでしたが想いに応えることはできませんでした。
歴史ネタを対象に現代の話を書くという作品造りが良かったです。

15/02/23 海見みみみ

>石蕗亮さん
ご覧いただきありがとうございます。
同性から告白を受けられたのですか。
きっと同じ男から見て石蕗さんが魅力的に見えたのでしょうね。
時代劇は書いた経験がないので現代劇として描きましたが、その点を褒めていただけて嬉しかったです。
感想ありがとうございました!

15/02/24 滝沢朱音

わあ、戦国武将の男色×現代の同性愛、このコラボがいいですね!
目の付け所が違うなと思いました。
当時は当たり前で奇異に思われなかったことが、現代では声をひそめがちであること、
そしてその中で、先を恐れる普通の恋愛模様が語られていて、興味深かったです。

15/02/24 海見みみみ

>滝沢朱音さま

ご覧いただきありがとうございます。
目の付け所が違うとの評価、大変嬉しく思います。
現在では声が潜められる同性愛。
その儚さや切なさを楽しんでいただければ幸いです。
それでは感想ありがとうございました!

15/03/01 そらの珊瑚

海見みみみさん、拝読しました。

森蘭丸は信長のお気に入りっていうのは、有名ですよね。
(もちろん学校では教えてくれませんでしたが)
テレビの影響もあり、昔に比べるとかなり同性愛者は市民権を得つつある気もしますが、やはり普通の人にとっては、かなりハードルが高いのかも。
さらりと描かれていて、爽やかな読後感でした♪

15/03/01 海見みみみ

そらの珊瑚さん>
ご覧いただきありがとうございます。
こういう学校では教えてくれない歴史って面白いですよね。
同性愛に関してはまだ偏見があるのも事実です。
よりマイノリティーが生きやすい世界になるといいですね。
感想ありがとうございました!

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