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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
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魔王殺しの連鎖 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

15/02/05 コンテスト(テーマ):第七十五回 時空モノガタリ文学賞 【クラシック音楽 】 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:2202

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 夏の始まりだというのに、森林公園の月が異様に青い。そして木々の葉がざわざわと揺れる。多分悪霊が息を吹き掛けたのだろう。
 その紺青の闇を破るかのように、激切なピアノの三連符が響き渡る。
「いよいよ始まったか」
 噴水の縁に立つ霧花圭は野外舞台へと振り返った。その動作に間髪入れず、甲高いテノールの歌声が――
 ♪ Wer reitet so spät durch Nacht und Wind?(夜の風をつき、馬で駆けるのは誰だ?)
 シューベルトの歌曲『魔王』だ。圭は神足なテンポに魂を震わす。

 しかし、なぜ?
 7年前市職員の圭が中心となり、町おこしのため管弦楽団を結成させた。その後一流にするため頑張ってきた。その結果が今宵の催しだ。
 されども心奥にしまった思いがある。ちょうど5年前、幼子・翼がこの噴水の近くで倒れた。
「お父さん、お父さん、魔王が僕をつかんでくるよ」
 救急車の中で翼が訴えた。だが、これに応えられず、腕の中で冷たくなった。
 その日から圭は悲嘆の淵を彷徨うこととなる。そんなある日、友人が音楽鑑賞会に誘ってくれた。
 ♪ Siehst Vater,du den Erlkönig nicht?(お父さんには魔王が見えないの?)
 圭が耳にした歌詞、それはまさに可愛い息子からの阿鼻叫喚だった。
 そして心に誓う。もし魔王があの森に棲んでるならば、いつの日か歌曲『魔王』を轟かせ、我が子の復讐をしよう、と。

 ♪ Erlkönig hat mir ein Leids getan!(魔王が僕を痛めつけてくるよ!)
 今、特設会場から、助けを求める歌声が圭の心胆に届いてくる。もう理性を抑えられない。圭は奥深い闇に向かって、「魔王、ここへ現れよ。殺してやる!」と声を張り上げた。
 その瞬間だった。鬱蒼とした木々をすり抜け、鏃(やじり)をキラリと光らせた矢が一直線に、心臓を貫いた。

『クラシック音楽の夕べ、市職員が射貫かれる』
 本演奏会の責任者・霧花圭が森から放たれた矢により殺害された。犯人は闇に紛れて逃走。
 翌朝新聞は大きく報道した。
 もちろん百目鬼刑事も、部下の芹凛(せりりん)こと芹川凛子刑事も捜査に加わった。
「これはアーチェリーの名手の仕業だな」
 検死に立ち合った百目鬼、開口一番唸った。これに相棒の芹凛が「凶器は音を発しない弓矢、犯人はきっと被害者の顔見知りだわ。だけど、なぜ歌曲『魔王』の演奏中なの?」と首を傾げる。ベテラン刑事の百目鬼であってもこの答えを持ち合わせていない。謎は解かれないままに、二人は捜査本部へと引き上げた。

「お疲れ様でした」
 芹凛が差し出したコーヒーカップを百目鬼が無言で受け取る。こんな無愛想は何かに熱中している時。そしてやっぱり…、いや驚いた、〈You Tube〉に見入ってるではないか。芹凛が「勤務中ですよ」と諭そうとすると、その前に百目鬼はニッと笑い、口を開く。
「歌曲『魔王』は、語り手を別として、ファーター(父)とキント(子)とエルケーニヒ(魔王)で構成されてんだよな。圭介殺害の構図は『魔王、その後』の父、子、魔王の関係が当てはまりそうだ」
 百目鬼は不躾なオヤジだ。しかし芹凛にとってこの奇想天外さが堪らない。あとは「親族を当たってみま〜す」と本署を飛び出すしかなかった。

 夜遅く戻った芹凛、まず百目鬼に報告する。
 圭と妻・蘭は3年前に離婚。理由は息子の死の悲しみを夫と共有できなかったことと、心を歪めた夫からのモラハラ。その後心労で入水。こんな不幸を突き付けられたのが蘭の実父の優一。かって洋弓の選手だったとか。
 そして芹凛が言い切る。
「霧花圭殺人事件における『魔王、その後』のキャスティングは…優一が父、蘭は子供、圭が魔王。つまり蘭の父・優一が魔王・圭を射貫き、復讐を果たしました」
 この推理は100%当たってるだろう。だが百目鬼は「ならば次の魔王役は誰だ?」と厳しく問う。ここは女刑事の意地だ、芹凛は頭を捻り…
「次の父役は圭の実父で、子供役は圭、そして復讐されるであろう魔王は…圭殺しの犯人の優一となります。まさに魔王の乗り移りです」
 こう主張し、身体を震わせる芹凛に、百目鬼は結論付ける。
「圭の息子・翼の死亡原因は多分落雷事故だった。だがその死で圭は心を病み、森に棲む、空想の魔王に立ち向かおうとした。だがその過程で、妻の蘭を死に追い込んだ。結果、圭に対し、蘭の父・優一に復讐心が生まれ、殺害を執行した。不幸なことだ。だが次は、圭の実父が蘭の父に気を狂わせる番だ。憎まれ役の魔王が人から人へと乗り移っていく。さっ芹凛、魔王殺しの連鎖を止めに行くぞ」
 こう指示を飛ばした百目鬼刑事、鬼の目をギョロッと剥いて、闇に向かって走り出すのだった。


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このストーリーに関するコメント

15/02/05 鮎風 遊

みな様へ

参考に。
物語の中、百目鬼刑事が観ていた〈You Tube〉は
シューベルト「魔王」
投稿者:kuhaitumogennki さんです。
興味ある方は、下記URLをコピー、貼り付けで入ってください。
https://www.youtube.com/watch?v=zCNDBNQj868   


また、表紙の写真は
GATAG|フリー画像・写真素材集 2.0
著者:LGEPR
からお借りしてきました。

よろしくご理解ください。

15/02/05 そらの珊瑚

鮎風 遊さん、拝読しました。

「魔王」は、人の心に棲む憎しみが悪魔のように育ってしまった結果、産まれたものなのかもしれませんね。
 連鎖が終わって良かったです。

15/02/06 泡沫恋歌

鮎風 遊 様、拝読しました。

シューベルトの「魔王」はあまりよく知りませんでした。
歌曲集の「冬の旅」はものすごく暗い曲ばかりで聴いてると鬱になりそうですよ。

シューベルトは「死と乙女」が好きです。
って、シューベルトの話になっちゃった(m´・ω・`)m ゴメン

「魔王」を詳しく調べられてて勉強になりました。

15/02/07 草愛やし美

鮎風游さん、拝読しました。

今回の推理は凄く緻密ですね、魔王になぞらえた事件を見事に推理された百目鬼刑事、素晴らしい。魔王は、学校の音楽で習いました。迫力ある曲はいかにも魔王が迫ってくる感じで感心して聞いたこと思い出しました。
しかし、芹凛さんよく動きますね〜〜それに比べ、百目鬼さん、あなた運動不足なりますよ。苦笑

15/02/21 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメント、ありがとうございます。

その通りです。
「魔王」は人の心に棲みます。
それに操られた連続殺人事件、百目鬼と芹凛が挑戦しました。

15/02/21 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメント、ありがとうございます。

紹介させてもらった「魔王」、
鬼気迫る音律で、ゾーとします。

シューベルトもシュークリームもいいですね。

15/02/21 鮎風 遊

草藍さん

コメント、ありがとうございます。

確かに百目鬼刑事、ちょっと運動不足かも。
今度はもう少し動いてもらいます。
よろしく。

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