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 さらだせんべいさん

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将来の夢 ナニモ ミエナイヨ
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おならで空を飛ぶよ

15/01/25 コンテスト(テーマ):第七十四回 時空モノガタリ文学賞 【 空港 】 コメント:0件  さらだせんべい 閲覧数:1180

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カルマ星の空港でボクは、整備士から高濃縮なゼリーを飲まされている。

 コースのほとんどは無重力だけど、宇宙には慣性質量ってのがある。小さくて軽い方が加速しやすく、小回りもきくんだ。
 地球人のボクは小柄だけど、さらに身体を軽くするため、空港にたどりつくたび手術を繰り返し、先ほどついに両手も取り外してしまった。
 獲得賞金で元に戻せると信じて、生命維持に不必要な臓器も、ほとんど摘出しつくした。こうして腸から栄養を吸収できるゼリーだけが、ボクの食事だ。
 だったら点滴のがラクそうだけど、ダメなんだ。このレースはHeジェット・エンジンでの飛行が義務づけられている。
 Heはヘリウムじゃないよ。屁だ。オナラさ。だから、大腸は残してある。

「このレースで優勝すれば、奴隷から解放される。きみと結婚できるし、子どもだって作れる」
「わたしは、あなたが無事でいてくれたら充分なの」
「サッカーチームが作れるくらい子どもをつくろう」
「うん……。無理はしないで」

 彼女を納得させられないまま宇宙に飛び出したボクの腸内は、ストレスでガスが絶賛発生中。
 ガスは肛門にずっぽり埋め込んだ呑酒器(てんしゅき)によって増幅され、その力で人が飛ぶ。
 簡易な宇宙服だけ着て、小惑星群を抜けながら、次の空港を目指す過酷な宇宙レース。
 気持ちは逸るが、チェックポイントたる空港では、それぞれ1週間の休養が義務づけられている。

 向こうでテレビを見てるのは、ベータ星の選手だ。やつらは尻穴が二門ついているから、直線はやたら速い。
 とはいえ、やつらのケツ穴は総排出口なんで、ガスに不純物が混じりやすい。攻略法はいくらか考えてある。

 おっと、呼び出しのアナウンスだ。
 一足先に空港についたボクは、誰よりも早く空港を出発する。追われる恐怖と戦いながら、真っ暗闇の宇宙を疾走するのだ。

『ぷひゅ』
 スタート位置で軽く一発。
 この段階では、腸内ガスのほとんどは、吸い込んだ空気がたまったものだ。つまり吐き出されるのも窒素と酸素の混合ガス。

『ぷひゅひゅひゅひゅ』
 小さいすかしっ屁が連続的に放出され、

『ぶびゅるるるっるうううううううううううううう』
 だんだんと放屁の音が高くなる。
 さあ発進だ。

 宇宙空間に出ると、空港の人口重力から解放されて、腸内細菌が活性化する。
 ようやく引火性ガスが生産されていく。純粋な水素とメタンから成る屁で、やはりまったくの無味無臭だが、こちらの推進力はケタ違いだ。

 一週間をかけて腸が本調子になった頃、はるか後方からの接近信号が鳴った。十万km後方に、センサーが岩石惑星の代表をとらえたのだ。
 脳内モニタに映し出されたのは、鉱物に包まれた巨大な体躯。堅牢な身体には、大出力の呑酒器をそなえているはずだ。
 とはいえ、小惑星群を抜けるには、機動力に勝るボクのほうが、圧倒的に有利だったはず。どうして、ここまで追いつかれたのだろう。
 ……まさか。なんてこった。やつは満身創痍だ。
 とてつもない体重ゆえ回避能力に劣るが、そのタフさを生かして小惑星にぶつかるの厭わず突っ込んできたのだ。やつもまた、命を捨てる覚悟でいる。

『へいボーイ、そろそろ空港だ。今日のところは減速するが、次は追い抜くぜ』
 ライバルのメッセージを無視して、ボクはますますスピードを上げる。
『おいおい、その速度じゃチェックポイントを突き抜けちまう!』
 最高スピードでラインを通過したボクは、そのまま宇宙の彼方に吹っ飛びそうになる。その身体を、空港からの牽引ビームがとらえた。
『ようこそ、第6小惑星空港へ。歓迎しますよ、火の玉ボーイ』
 わずか数秒の引き離しだったが、それでも無いよりマシだった。

「ポイントを稼いだな。この空港じゃ、そのポイント使ってHeエンジンを追加できるぜ」
 整備士が足のないボクの身体をストレッチャーで運ぶ。
「この星は宗教上の理由で、整形外科手術は禁止じゃあ」
「なんだ、代理人から何も聞いてないのか。いや、サプライズって趣向か」
 整備士は思わせぶりに笑った。

 空港のゲートを抜けると、
「あなた!」
 地球に置いてきたはずの恋人がいた。ボクが逃げ出さないよう、人質として軟禁されていたはずなのに。

「エンジンを増やすためだって、連れて来られて」
「なんの話だろう」
「なんだ、女の方も何も聞いとらんのか。地球人は、いつもこれだ」
 整備士が、説明してくれる。
「ここでは、子どもを作っていいんだ。投薬と電気刺激で胎児を急成長させ、早期の出産が可能だ。保育器で急速成長させ、呑酒器をつければ……」

 なんてこった。
 ボクにはもう彼女を抱きしめる腕もなければ、駆け寄る足もなく、子を宿らせるための生殖器すら残されていなかった。


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