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糸白澪子さん

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性別 女性
将来の夢
座右の銘 死ぬこと以外は、全部経験しておけ

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私たち

15/01/20 コンテスト(テーマ):第七十四回 時空モノガタリ文学賞 【 空港 】 コメント:0件 糸白澪子 閲覧数:1076

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女の子は単純だ。好きな人を見つけると無意識に笑顔になっているんだから。それだけでテンションが上がってたりするし、そうかと思えばにやついた笑顔のまま何も話さなくなる。かなり分かりやすい。
あと、好きな人の関連した何かを見つけると友達にそれとなく報告したりする。例えばこんな感じ。
「あ、カリフラワー」
いや、単に昼ごはんのタコライス定食に付いていたサラダの中にカリフラワーがあっただけなんだけど。前に座っている家野ちゃんは
「え?あー、せやな」
と言って沖縄そばを啜る。そして私を見て、
「で、どしたん?」
と聞いた。
修学旅行の最後のイベント、自由散策中に国際通りのお店で家野ちゃんと昼食を摂っていた。
えっと、これはーそのー…
「いや、あいつの中学んときからのあだ名やねん。カリフラワー。あんたもお土産買いに歩いてる間は『あっこに柊がおる!』ってうるさかったやん」
「あー、なんやそういうことか」
家野ちゃんは納得してくれたらしい。
思えば家野ちゃんと二人っきりって久しぶりな気がする。自由散策のあとすぐに大阪に帰るというスケジュールで、家野ちゃんも私も関空行きではなく伊丹行きの飛行機で帰るから自由散策をご一緒するのを誘ったのだ。でもクラスが同じ訳でもなければそれまで一緒に遊んだ事もないし、唯一の接点が部活だったから、こうして二人っきりで居るのは珍しかった。
「前に好きな人おるって言ってた家野ちゃんこそ、片思い相手とは今どうなん?」
タコライスを口に運びながらぼんやり、あくまでぼんやり聞いてみる。家野ちゃんが言いたくないなら聞かない。だけど気になる。それくらいの心配と好奇心である。それに彼女は自身の好きな人が誰かすら教えてくれていない。だから「どうなん?」という抽象的な聞き方なのだ。
まあ、家野ちゃんが誰を想っているのかなんて今さっき見当がついたけど。
「うーん、進展は全くない」
「ふーん」
「三谷はどーなん?」
「え、あたし?」
家野ちゃんは言いたくない…か。私はというと…ね…まあ家野ちゃんだし、言ってもいいか。
「エット、でーと誘ッタヨ」
あかん、めっちゃ棒読みやん、もうこんな自分に内心笑えてくる。家野ちゃんはぴたりと箸を止め、口を半開きにしたまま私を見て
「よぉ頑張ったな」
と左手を伸ばして私の頭を撫でた。
「うん…この修学旅行終わってすぐの日曜日に行ってくる」
「そか、ふぁいと」
家野ちゃんの『ファイト』には平仮名みたいな柔らかさがある。ありがとう家野ちゃん。
家野ちゃんは一口だけ水を飲んでから、ちらっと私を見て言った。
「あたしが好きな人、誰か分かる?」
そんなのだいぶ前から勘付いている。それにさっき確信したのだ。家野ちゃんの好きな人は絶対、
「柊やろ?」
家野ちゃんはちょっと目を見開いてから俯き、
「えー…なんで分かったんよ」
なんて恥ずかしそうにしている。
「だって家野ちゃんがお土産買いに歩いてる間は柊のことでうるさかったのんと、あたしがカリフラワーに気がいったのんが同じ意味やって認めたやん」
「わぁぁぁぁ…ボロ出てたか」
「うん」
家野ちゃんはずずーっと一口啜ってから一息付いて、いや、溜息なのかもしれない。丼を見下ろしたまま小さく言った。
「でもな、あたし実は一回柊に告ってフラれてるねん。でもやっぱり好きやしさあ。せやけど自分のことフった人を好きでいても疲れるだけやん?せやからちゃんと柊から離れようとしてみたけど…無理やったわ…」
最後の方は溜息交じりに家野ちゃんは心を零し、こう付け加えた。
「まあ今は取り敢えず、柊があたしらと違って関空行きの飛行機に乗って帰ることを祈るわ。今は柊と顔合わせても喋られへんから」
「せやな」
「三谷が伊丹行きで帰るんなら、某カリフラワー君も伊丹行きで帰るん?」
「いや、ちゃうんちゃう?あたしも今鉢合わせたくないわ」
家野ちゃんは私をみてニタッと笑い、
「ちきん」
と小馬鹿にした。家野ちゃんだってチキンのくせにっ。
しかし家野ちゃんが強気になれない理由だって知っている。柊は未だに元カノへの想いを引きずっているようだ。自分を全く見てくれない人に無理やり付き合ってもらったってきっと、幸せにはなれないのは見え透いている。きっと目では自分を見てくれていても、心はそこに無いんだろうから。
でも、だからこそかもしれない。家野ちゃんだってサクッと切り替えるのは出来ないのだ。その気持ちは、よくわかる。
家野ちゃんは美味しそうな音を立てて沖縄そばを啜っている。彼女の恋のために私が出来ることなんてないんだけど、とりあえず今は。
左手を伸ばし、家野ちゃんの頭をポンポンと撫でた。家野ちゃんはちょっとの間キョトンとして、その後優しく笑う。
頑張れなんて言えない私の精一杯のエールだ。

私たち女の子は、フクザツである。


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