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リアルコバさん

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待ち人

15/01/18 コンテスト(テーマ):第七十四回 時空モノガタリ文学賞 【 空港 】 コメント:0件 リアルコバ 閲覧数:1211

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 エスカレーターを上がると真っ青な空に白く輝く機体が滑走路へ降りてくる。(やはり飛行機には青空が似合うわ)何度来てもワクワクしてしまう。(あの飛行機に乗っているのかしら?)暫く着陸の風景を眺めてからいつものレストランに向かった。

「いらっしゃいませ、あっ北条様おはようございます。」
 彼女はこの店の4代目のマネージャー、赴任当初はおどおどした娘さんがすっかり立派になって。
「今朝はお寒いですね」
「ほんと、池の水が凍ってたわよ、空は大丈夫なのかしら?」
「はい、気象条件に問題はないそうです。本日はお戻りになるとよろしいですね」
 午前10時、店もひと段落したこの時間に私はいつもの席に腰を下ろして珈琲を飲むの。

 搭乗待ちの若者達が、顔を突き合わせて行き先の楽しみをガイドブックでなぞっている。いいわね、若い人は何をしていても楽しそう。
「いらっしゃいませ、お一人様ですか?こちらへどうぞ」
 不安そうに店を見回してからか細い声で女性のお客は言った。
「いえ、ふだり・・・」
「かしこまりました、どうぞこちらへ」
 地味に見えるけど千鳥格子のオーバーの中はチャコールグレーのツーピース、シックな余所行きを久しぶりに見たわ。
「いらっしゃいませ、お一人・・・」
 彼女は即座に手を挙げてその男性を手招きした。あら待ち人ほもう現れたの?
「やっぱし広いなぁ、搭乗口やっと分かったよ、こんでもう大丈夫だ」
「ねぇホントに1年なの?わだしやっぱし怖ぐて・・・」
「今更しゃぁんめよ、工場長は知ってる人だし、新婚なんだからって社長の特別計らいなんだがら」
「でも私英語もでぎねし東京だって緊張すんのに外国・・・」
「俺だっでそだ、でも工場長の奥さんもいっがら・・・」
 こちらは転勤かしら、大丈夫よ、同じ地球なんだから、気楽にしてればすぐ慣れるわよ。

「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」
 ほんとあの娘の声は爽やかに響くわね、あら渋いお兄さん、出張?お忍び?なにかしら。
「モーニングは間に合う?」
ひっきり無しに携帯電話を操作して、あなたも待ち人なのかしらね。
「いらっしゃいませ、お二人様ですか?」
 無愛想に頷いた女性が早足で席に着くなりまくし立てている。
「もう最低、幻滅よ、なんなのよあなた、やっぱり無理やめましょう」
 あらあら穏やかじゃないわね、格好からして新婚旅行?
「まったくビクビクしてタクシーにはボッタクられるわ英語は喋れないわ、全然 話が違うじゃない、そこまでは我慢したわよ私だって、挙句バックは盗まれるし機内で酔っ払って吐く人なんか初めて見たわよ、今だってそう、なんで荷物受け取りの場所を間違えられるわけ?」
 よくそんなに息が続くなぁと云うくらい責め続ける聡明な彼女とは対照的に、うな垂れた彼の白いジャケットが妙に不似合いだった。
「いつかは海外転勤だって・・・呆れたわよ、3流大卒にしては一流企業に居て強気で私に声かけたから若しかしたら有望株?って思ってたのに話が違うじゃない」
「お前だって嘘つきじゃないか、海外なんて初めてとか言って、英語はペラペラだしいったい誰と行ってたんだよ」
「はぁ?今時海外初めての子なんていないでしょ、チェックインすら出来ないくせによく云うわ、じゃもう一つ訂正してあげるわよ、私は秘書専門学校卒じゃなくてソフィアの英文卒」
「ソフィアって・・・?」
「もういいわよ、もうおしまい」
 あらら、太刀打ちできないわね、そんなもんよ、いずれ二人共身の丈にあった人に巡り会えるわよ。

「珈琲おかわりいかがですか?」
「そうね、頂くわ、それとランチにはあのサンドウィッチいいかしら?」
「かしこまりました、いつものですね」
 迷惑は承知でもう20年も前のランチメニューを頼んでしまっているの。
「北条様、ご無沙汰しております」
「あらぁ金森さんお久しぶりね、どうしてますの?」
「お陰さまで系列全店統括しておりますので全国飛び回っておりますハハハ」
 この人はここの初代店長、そうあの頃はそう呼んでいたのよ。
「あらそれはお偉くなりましたのね・・・」
「まだお戻りになりませんかご主人は?」
「えぇそろそろ待ちくたびれましたわ、でもねこのお店があるとつい、ね」
 彼は後継のマネージャーに私のことをどの様に伝えたのだろう、主人を待ってる事は皆きちんと理解しているようだけど。
「なんだか北条様はお若くなりましたね」

『28日午前着の便で帰る』
 20年前エアメールが着いてから私は毎月こうして空港で待つの。
 最初は泪にくれていたけど金森さんはいつも言ってくれたの。
「きっと戻ってきますよ」って。
 だから主人を見送る時に一緒に食べたサンドウィッチを食べながら待つの。
 だって広い窓から見える銀翼は今日も綺麗なんですもの。



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