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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

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人面蜂(じんめんばち)

15/01/08 コンテスト(テーマ):第七十三回 時空モノガタリ文学賞【 隣室 】 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2160

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 駿(すぐる)は長い一日の業務を終え、オフィスを出た。すでに12時半、今から走れば終電に間に合う。しかし、そのエネルギーは残っていない。
「今夜はホテルに泊まるから」 妻の夏希に連絡を入れた。
 こんなことはよくあること、夏希は「あら、そうなの」と返し、「明日は帰ってきてよ、由佳の学校のことで相談したいから」と必要時のみの出番を要請する。
 駿には二人の娘がいる。長女は来年中学、私立に入れようと妻は目論んでる。安い給料、それでも子供の教育に一所懸命な夏希、そのやり繰りの苦労がわかるため「出来るだけ早く帰ります」と電話を切った。

 初夏の夜風は芳潤だ。その湿りが街の灯りを煌めかせる。駿は遅い食事を終え、その光の粒を浴びながら、余程需要があるのだろう、ビル一式がカプセルの、町の巣へと入って行った。
 そこではまず自動販売機で入室券を購入する。それから受付でカプセルキーを受け取る。あとは1階のロッカーで服を脱ぎ、バスローブ姿となる。そして貴重品だけを持って、指定のフロアーへと上がる、そんな順番だ。
 もちろん今夜もその手順に従って、駿はエレベーターの前に立った。その時だった、黄と黒の縞模様の、ちょっと異様な男が脇を通って、先に乗り込んだ。駿があからさまにムッとすると、不作法を反省したのだろう、深く頭を下げた。そして「8階ですよね」と念を押してくる。
 お前がなんで知ってんだよ、そう聞き返してやろうと思った時だった、男がボタンをD、A、Gと捺し込んだ。
 Gの前に、D、Aなんて要らないんだよ、と駿が注意しようとした瞬間、エレベーターは上昇し始めた。そして途中グラグラと一度揺れたが、トラブルもなく8階へと到着した。
 しかし、降り立ったフロアーはいつもと雰囲気が違う。ボンヤリと薄暗く、甘い香りがする。駿が訝しがってると、横の縞男が「お一人様、お連れしました!」と奥に向かって声を上げるじゃないか。
「お前は店側の人間だったのか」と駿が口を尖らせると、同じ模様のヤツが現れて、「同志に、健やかな進化を」と意味不明なことを宣う。それでも駿はこの男の案内で、カプセルへと進んだ。
 しかし、入り口が普段と違う。四角形でなく六角形。そう、そこに並んでいたのはハニカム構造のカプセルだったのだ。この不思議な光景に、目を白黒させる駿。息つく間もなく、「早く成長するんだぞ」と黄黒男に中へと押し込まれ、バシャッと乳白色の板で蓋されてしまった。
 内部は完璧に密室。「俺は蜂の幼虫か!」と唸る駿に、さすが六角形構造、カプセルの周りに六つの隣室がある。
 まず右上のお隣さんから「ここは快適空間だよ」と慰めがあり、左下から「使命は女王蜂さまへのご奉仕」と通告され、最後は上から「高等生物、人面蜂へと進化するんだよ」と励ましがあった。
 それにしても…人面蜂って?
 よく理解できないが、どうも男が捺したボタンのD、A、Gで、時空の壁を突き抜けて、奇妙な世界へ迷い込んでしまったようだ。そこで駿はハッと気付く、あれは「Go to 蜂界」だったのだと。

 蜂界なりの1週間が流れた。駿は見事に、顔だけそのままの人面蜂へ、EVOLUTION!
「さっ、女王蜂さまのために、貴金属を集めて参れ!」
 六角カプセルから抜け出した駿に早速指令が飛ぶ。えっ、蜜じゃないのか、と首を傾げるが、背後からドンと蹴られ、駿はいきなりの…、羽をブンブン回して初飛行。そして向かった先はやっぱり自宅。
 その途中下界を眺めてみると、ママ友たちがお茶してる。その中に、妻を見つけた駿、この不幸を伝えておきたい。急降下し、テーブルの花へランディング。
「ねぇ、この蜂、あんたのダンナに似てない?」
 指差す友達に、「ヤダ、似すぎてるわ。写メ撮っちゃおう」と、さすが夏希、動じない。そして心の呟きを、「パパも同じ働き蜂ね。感謝してるわ」と。
 これを耳にした駿、愛する家族の元へ帰りたい、いや絶対に戻ろう、と決意を新たにする。
 そこから駿は急ぎ巣へと引き返し、警備の隙にエレベーターに乗り込む。そしてG、H、A、@とボタンを捺す。つまり「Back to ヒト界」と。するとどうだろうか、身体の黄黒縞は消え、エレベーターは時空の歪みをガタガタと下降し、人間界の翌朝の1階へと、駿は帰還できた。

「ただいま」
 駿は一日の仕事を終え、土産を抱えて無事帰宅。すぐに娘二人がスイーツの袋を取り上げて、「パパ、この写メ、見て、ママが撮ったのよ。蜂の顔、パパそっくりでしょ」とキャッキャと大騒ぎ。この様子を見ていた夏希がしみじみと言う、「パパ、蜜は甘くて美味しいけど、やっぱりお金がいいわ。だからもっと頑張って」と。
 これじゃ人面蜂の女王さまと同じじゃないか、と駿は叫びたかった。しかし、なぜかほんわかと、妻の期待が嬉しかったのだった。


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このストーリーに関するコメント

15/01/10 そらの珊瑚

鮎風遊さん、拝読しました。

紫式部市民文化特別賞受賞、そして出版おめでとうございます!

人面蜂って面白い発想ですね。
人間の男も結局は働き蜂とあまり差はなかったりして(笑い)

15/01/11 草愛やし美

鮎風游さん、拝読しました。

人面蜂、なんという面白い設定なのでしょう、一時流行りましたね、人面なんとかって、鯉に始まった人面ものは、はては蜂に行き着いたのですか。
働き蜂にすぎない男性諸氏、大変でしょうが愛する(誇張!)家族のために、今日も頑張るのであります。って、これじゃ、まるで、トーキー時代ですか。面白かったです、この設定絶対、長編もいけますよ、待ってます。

15/01/12 鮎風 遊

志水孝敏さん

コメントありがとうございます。
書籍の方は、店頭にはないかと思いますので、
もしご興味あれば、本屋さんで注文頂ければ光栄です。

人面蜂、実はおりまして、
春先からお花畑を飛んでおります。

是非見つけてやってください。

15/01/12 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

ありがとうございます。

そうですね、結局は働き蜂。
しかし、その中にいるのですよ、人面蜂が。

今年の私の写真テーマは、人面蜂を撮ろう、です。
こうご期待を。

15/01/12 鮎風 遊

草藍さん

コメントありがとうございます。

そうです、人面ものの究極は人面蜂です。
まだ世の中では知られていませんが、
数枚激写されてます。

今年は絶対に撮ってやります。
親戚のオッサンに似ていたりして。

15/01/12 泡沫恋歌

鮎風 遊 様、拝読しました。

なぜか、この作品を読んで『ハエ男の恐怖』という大昔の映画を思い出しました。

働き蜂でも、ちゃんと帰る巣(家)があるのだから、幸せなお父さんだとおもいますよ(笑)

15/01/21 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメント、ありがとうございます。

ちょっとした異様さを感じて頂ければ、光栄です。
今年は人面蜂を探してみます。

どんなヤツかな?

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