1. トップページ
  2. クリーチャー、クリーチャー

W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

投稿済みの作品

0

クリーチャー、クリーチャー

15/01/06 コンテスト(テーマ):第四十八回 【自由投稿スペース】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1324

この作品を評価する

 企画部長のバンサンは、エノミが自信をこめて創作したクリチャーのスケッチを一目みるなり、
「インパクトが足りない!」
 一言のもとに、却下してしまった。
「これで、だめですか」
 さすがにエノミは、むっとなっていいかえした。
 三日の間、頭をかきむしりながら考えに考え、描きまくったラフスケッチは二百枚はくだらなかった。
 快心作だと確信していただけに、企画部長の反応には心底、腹が立った。
 じぶんでいうのもなんだが、今回創作したクリチャーは、それはそれはおぞましい姿をしていた。
 次回制作予定の、惑星に、未確認飛行物体が不時着し、中からあらわれた身の毛のよだつような生き物が、つぎつぎに住民たちに襲いかかるというSFホラー映画で、まあストーリー的にはありふれたものだがそれだけに、クリチャーの創造にこの映画が成功するかどうかの命運がかかっていた。
 クリチャーデザイナーのエノミの腕に、すべてがかかっているといっても過言ではなかった。
「一目みて、怖気がふるうような、内側から邪悪さがにじみだしてくるような怪物クリチャーにしてくれといったのを忘れたのか」
 不満もあらわに、バンサンはいった。
「要求にこたえたつもりだけどな」
「まだまだ手ぬるいよ。こんなもんじゃ、観客に恐怖と戦慄、それに、泣きたくなるほどの絶望感をあたえることはできない。おそろしさのあまり、失神するほどの衝撃度満点のクリチャーをかいてくれ。エノミ、きみならできる」
「わかった」
 エノミは、まだおさまらない憤懣にふるえる声で、答えた。
 バンサンが部屋をでていくとエノミは、くそっと声をあらげて、制作机を力まかせにたたきつけた。
 三日の間、ほとんど寝ずにきただけに、疲れは極限にまできていた。
 あらたなクリチャーの原案を描こうにも、目はとろんとしてくる、頭はおがくずを詰めこんだようにくしゃくしゃするときては、なにひとつとしておもいうかんでこなかった。
 十分もしないうちにかれは、うとうととまどろみはじめた。
 ―――じぶんのうめき声に、ハッとしてエノミは目をさました。
 ひどくうなされていたようだ。
 額のあたりに、脂汗がにじんでいる。
 すさまじい悪夢をみた。
 おそらく、企画部長の話が、夢に形となってあらわれたのにちがいない。
 生っ白い、異形の姿の生き物が、ゆらゆらと目覚めたばかりの彼の意識のなかにゆれうごいた。
 とたんにエノミは、悲鳴をあげそうになった。
 これまで、数えきれないほどの魔界の怪物や凶暴なエイリアンを描いてきた彼でさえ、二度とおもいだしたくないほどの、それはすさまじい形相の生き物だった。
 だが、これこそバンサンが望んでいるクリチャーだと直観したエノミは、すぐに机にむかうと、ペンを手に、いま夢のなかにみたものを、いそいで描きはじめた。
 描きおえた生き物を、あらためてみなおした彼は、ふたたび恐怖と嫌悪感に総毛立ちながらも、これだという達成感に満足をおぼえた。
 彼はすぐに、企画室のバンサンを呼んだ。
 まもなくやってきた企画部長も、エノミの描いたラフスケッチを一瞥するなり、おもわず驚愕に目をみひらいた。
「いかがなものかな?」
 いつまてたっても、その場に黙ってたちつくすばかりのバンサンに、しびれをきらしてエノミは返事をうながした。
 バンサンは、我に返ったような顔で、大きく胸で息をついた。
「これは、すごい。よくこんなおそろしいクリチャーを想像できたものだ!」
「悪夢がヒントなんだ」
「悪夢が………なるほど。覚醒した精神じゃ、とてもこれはおもい描けんよ」
「オッケーかな?」
「もちろん。このクリチャーをみたら、恐怖のあまり失神どころか、なかにはそのまま昇天する観客もあらわれるかもしれないぞ」
 バンサンの横にならんでエノミも、いっしょになってじぶんが創作したクリチャーのスケッチをながめた。
 すべすべした皮膚におおわれた丸い頭、両肩から垂れる二本のひょろながい腕、ずんぐりした胴体をささえるやはり二本の脚、顔には二つの目が光り、二個の穴があいた鼻と、赤身をおびた肉と肉がかさなりあようにしてできた口………。じぶんで描いておきながら、本当によくこんな不気味な生き物がつくりだせたものだと、いまさらながら彼は首をふった。
「でかした、エノミ。これならこんどの映画は成功まちがいなしだ!」
 バンサンが感極まったかのようにエノミに、うねうねした粘着質の腕をからませてきた。
 顔の前後つごう六個の目を、うれしさのあまりオレンジ色にまたたかせ、さらに高まる気持ちをおさえきれずに口から何十センチも前に伸ばした牙を、笑いながら開けたり閉めたりした。
 そんな企画部長に影響されてかエノミのほうも、ぱっくりあけた腹から第二の顔を突き出して、得意満面の笑みをうかべてみせた。







コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン