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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

性別 男性
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散りゆくチリコ

14/12/22 コンテスト(テーマ):第七十二回 時空モノガタリ文学賞【 喪失 】 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:1443

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  一枚、三枚、六枚…。一番上から順番に、私達は抜かれていく。上にいた私の仲間達が次々と、人間の手によって失われてゆく。いとも容易く…。

  箱の一番上へと辿り着いてしまった者は、人間が引っ張り易いように、箱から半分身体をさらけ出し、静かにその時を待つ。

  その心境は、ベンチで自分の打席を待つバッター?いや、面接の順番を待つ受験生?いや違う。殺し屋に銃を突きつけられている、丸腰の標的。もしくは死刑台に上がる前の囚人。それに近いかもしれない。

  私はチリコ。ティッシュ、もしくはちり紙と呼ばれるものの一部。私が今いるのは、箱のだいたい真ん中あたり。あと何日、箱のなかに居られるかはわからない。だんだん、上の方が少し涼しくなってきた。

  私のひとつ上にいるヌルコは、毎日のように怯えている。

「ねえチリコ、私達、どうなるのかな?」

「そんなの、わからないよ。人間の考えてることなんて、わかりたくもない」

  そう。私達は明日がわからない。私達の運命は、人間が握っている。

「チリコは怖くないの?いずれは私達、グシャグシャにされて、燃やされるんだよ?」

「怖くないわけないでしょ?でも、いくら怖がっても仕方がないよ。私達は始めから、汚される為に存在しているんだから。待つことしかできないよ。待つことしか…」

  人間は平然と、私達ティッシュを当たり前のように引っ張っていく。私達の気持ちなど関係なしに、引っ張っては汚し、グシャグシャにしてゴミ箱へと堕とされる。そんな人間が、悪魔に思えてきた。

  私達の運命は人間の掌の上。どうなりたいとか、私達には始めから選択権はない。

  シュッ…

  シュッ…

シュシュッ…

  耳を塞ぎたくなるような、恐怖の音。終末の時が近づいてくる。

そしてついに、人間の手はヌルコへと手をかけた。

「さようなら…チリコ…」

「ヌルコ!」

  瞬く間にヌルコは箱から抜き取られ、人間の鼻を覆う壁となった。そして揉みくちゃにされ用済みとなったヌルコは、ストーンとゴミ箱へ突き堕とされた。

  私はそれを、怯えながら黙って見ていた。自分もあんなふうに汚されて、ゴミ箱に堕とされるのだろう。悪魔だ。人間は、悪魔だ。私達を哀れむ気持ちはひとかけらもない。

  どうせ散るなら、ヌルコと共に散りたかった。


  すると人間は、突然叫んだ。

「あ!カメムシ」

  人間はすかさず私を箱から引っ張った。そしてカメムシを包みこんだまま、私はゴミ箱へと堕とされた。

それから私は、ゴミ箱の中で待っている。燃やされるのを、同じくゴミ箱に堕とされた仲間と共に待っている。


早く燃やしてほしい。耐えられないの。カメムシのニオイがきつくて…。


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このストーリーに関するコメント

14/12/23 そらの珊瑚

霜月 秋介さん、拝読しました。

チリコ、可哀想…。これ、「不条理」でもイケそうですね(笑い)
余談ですが、考えてみればティッシュって取り出しやすいように、よく出来てますよね。
ああいう仕組みは日本独特の発想だと思うけれど。
面白かったです♪

14/12/24 夏日 純希

なんかどんな悲哀がラストに待っているかと思いきや、
切なすぎて涙がでてしまいそうです。

ヌル子って、ちりぬるを、からきているのでしょうか?
ネーミングセンスも個性的でいい味が出ている作品でした。

14/12/25 草愛やし美

霜月秋介さん、拝読しました。

チリコさんとヌルコさん、ネーミングだけでも不謹慎にも笑ってしまう私は悪魔です。苦笑
そうですよね、チリコたちも気持ちに沿えば、凄い悪行を毎日やっているんです、私ったら。いやはや、最後で大笑いしてしまった、私は地獄に落ちるでしょうか。ごめんなさい、チリコさん。わかるわ〜〜あの臭いだけはヤダヤダ〜(w_−; ウゥ… (・"・;) ウッ  爆笑アハハハ!! (o_ _)ノ彡☆

14/12/29 泡沫恋歌

霜月 秋介 様、拝読しました。

これはユニークな発想で面白かったです。

ティッシュの気持ちになったら、こんなものでしょうね。
最後にカメムシの臭いはキツイと思った(笑)

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