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隣でよかった

14/12/17 コンテスト(テーマ):第七十三回 時空モノガタリ文学賞【 隣室 】 コメント:1件 五助 閲覧数:1204

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 出張先のホテルでの出来事である。
 部屋で、明日の会議に使う資料の見直しをしていた。いくつか修正を行ない、そろそろ休もうかと、伸びをしたとき、壁に三角形の白いものが出てていることに気がついた。
 はがれた壁紙だろうか。
 主張先から近いという理由だけで選んだビジネスホテルだ。外観も内装もどこか薄汚れている。劣化したのか湿度の所為か、白い壁紙が一部めくれたのだろう。
 それにしても、少しおかしなところがめくれている。壁紙がめくれるとしたら、壁の端か、壁紙のつなぎ目だろう。窓のある柱から、一メートルほど左に離れた、私の膝辺りの高さにある壁から、その三角形の紙は壁に対して直角に出ていた。刃物で三角形に切り取った壁紙を、誰かが無理矢理、はがし、立たせたような、そんな様子である。
 私は少し気になり、腰をかがめ、それを指でつまんでみた。壁紙を少しめくってやろうかと、子供じみた感情も多少はあった。人差し指と親指でつまめるぐらいの大きさだ。感触は、紙と言うより布に近い、少し厚みがあった。
 指先で少し引っ張っただけで、三角形のそれは、広がり、手のひらサイズほどの大きさに増えた。
 これはまずい。ずいぶんはがしてしまった。
 しかし、よく見るとおかしい。これが壁紙なら、壁紙がめくれた跡が残るのではないだろうか。壁の地の部分が、壁紙がめくれた分、現れるはずだ。それが無い。まるで、三角形の紙が壁から生えてきたような印象すら受ける。
 私は、何となく嫌な予感を感じながらも、三角形の紙の正体を知りたいという欲求にかられ、再び引っ張ってみることにした。
 壁紙の接着面をはがすような、手前に引くような力の入れ方ではなく、壁に対して直角に、軽く引っ張っただけで、するすると出てきた。三角形の面積が増えていくと、たるみと皺が現れ、布のように広がった。
 どこまで出てくるのだろう。
 私は、恐怖を感じながらも、それを引っ張り続けた。ゆっくりと、まだ出てくる。
「ひっ」
 思わず声が漏れた。
 腕の長さほど引っ張ったところで、布の、十センチほど下、何もないはずの壁から、だらりと下を向いた人間の足が、宙を浮いているような状態で、くるぶしの辺りまで出てきた。ふらり、細い、青い、女の足。
 慌てて指を離すと、音もなく布は壁の中に消え、足もまた消えた。
 後ろに下がり壁を見る。
 何も出ては来なかった。
 壁の上の方から、ぎしぎしという、音が、聞こえてきたような気がした。


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このストーリーに関するコメント

14/12/18 霜月 秋旻

拝読しました。ミステリアスな内容でした。足は隣の部屋の方のなんですよね?霊的なものではないですよね?
夜に読んだことを後悔してます(笑)

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