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坂井Kさん

今年(2014年)は思い付きと勢いだけで書いてきましたが、来年(2015年)は、状況設定をもう少し固めてから書こうかな、と思っています。スティーヴン・キングによると、「状況設定をシッカリとすれば、プロットは無用の長物」らしいですから。

性別 男性
将来の夢 夢というより目標として、来年(2015年)こそ長編小説を書き上げたい。
座右の銘 明日はきっと、いい日になる。

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元の姿

14/12/11 コンテスト(テーマ):第七十一回 時空モノガタリ文学賞【 不条理 】 コメント:0件 坂井K 閲覧数:1175

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 元の姿に戻りたい。この世に産み出されて来たときの、あの姿に。

 あなたの生命を維持するために、必要な食物として私自身を摂ってもらいたい、と私は心から願ってやまない。――この私は、太陽系の第三番目の惑星表面に広がっている塩水をたたえた部分の中に存在する、周りのものよりも際立って盛り上がっている地形に産み付けられた受精卵から離れ出て、この天体の、自由に動けて他の動植物を食物として摂ることができる生き物の中で最も小さい状態で、一個体としての生命活動が始まった。しばらくして、自分自身が一個の生き物である、ということがハッキリと理解できる心の状態になったとき、私の、動物の身体の中で最も上部に位置する部分には、(私と比較してもっと程度が進んでいる生き物に、生命の維持に必要な食物として、どうしても私自身を摂ってもらいたい!)というシッカリした心の働き、ただそれだけが存在していた。私は、自分自身に比較してもっと程度が進んでいる生き物の、物を見るための器官の向いている方向に強い勢いで姿を現し、(産まれてすぐこのような良い出来事にあうとは、とても嬉しいことです! とてもありがたいことです!)という思いを伴って、一切噛まれることなく呑まれて、その生き物の身体の内部に入れられた。敢えてそのようなことをされた私は、次いでその生き物の心の自由を奪い取ると、その身体を自分の思い通りに動かせるようにした。そして今、近くにいるであろう、もっと程度が進んでいる生き物に向けて、(あなたの生命を維持するために必要な食物として、どうか私自身を摂って下さい!)という心からの願いを込めたメッセージを発信し続けている。

 余計だ。大部分が余計だ。以前の姿は、もう少しシンプルだった。

 生命維持のため、食べ物として私を摂ってもらいたい。――私は、地球表面に広がる塩水をたたえた部分の中にある、周りのものより盛り上がっている地形に産み付けられた卵から離れ出て、この星の動物の中で最も小さい状態で、個体としての生命活動が始まった。自分が一個の生き物である、ということがハッキリと分かる心の状態になったとき、私の、動物の身体の中で最も上部の部分には、(私に比べて程度が進んでいる生き物に、必要な食べ物として私を摂ってもらいたい!)という強い思いだけしか無かった。私は、自身に比べて程度が進んでいる生き物の、物を見るための器官の向いている方に勢い良く現れ、(良い出来事にあって嬉しい! ありがたい!)という思いを伴って、丸呑みされて、その生き物の体内に入れられた。敢えてそうされた私は、次いでその生き物の心を奪い、身体を思い通りに動かせるようにした。そして今、もっと程度が進んでいる生き物に(必要な食べ物として私を摂ってもらいたい!)と心から願っている。

 まだだ。まだ余計な部分が多い。思い出せ! 以前の自分の姿を。

 私を、食べて欲しい。――私は、海の底にある山脈に産み付けられた卵から誕生し、生命活動を始めた。その姿は小さく、この星の動物の中で最も小さい部類であった。自分は一個の生き物である、という意識が芽生えたとき、私の頭には、(より大きな生き物に、私を、食べて欲しい!)という強い欲求しか無かった。私は、自分自身より大きな生き物の眼前に飛び出し、(ありがたい!)という喜びの感情を伴って、その生き物に呑み込まれた。その後、私はその生き物の意識を乗っ取り、身体を思い通りに動かせるようになった。そして今、私は(もっと大きな生き物に、私を、食べて欲しい!)と望んでいる。

 かなり近付いて来た。もう少しだ。もう少しで最初の姿に戻れる。

 喰うてくれ。――私は、海底の山脈で小さな存在として生まれた。意識が芽生えたとき、私の頭には、(より大きな生き物に喰われたい!)という欲求しか無かった。私は、より大きな生き物の眼前に飛び出し、喜んで呑み込まれた。そして、その生き物の意識を乗っ取った私は、今、さらに大きな生き物に喰われることを望んでいるのだった。

 今度で最後だ。あと一歩。いや、あと半歩といったところか……。

 喰え。――私は海で生まれた。生まれてすぐ、(喰われたい!)という欲求が芽生えた。だから私は、より大きな生き物に喜んで身を捧げた。が、私は死なず、そいつの意識を乗っ取った。そして、また(より大きな生き物に喰われたい!)と望むのだった。

 これだ。これが元の姿だ。ここからまた始めることにしよう。新しい物語を。


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