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縁合 紫さん

普段は小説家になろうで長編書いてます。

性別 女性
将来の夢 書籍化
座右の銘 行動が全て幸福につながるとは限らない。しかし行動のないところに幸福はない

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願い事は…。

12/07/08 コンテスト(テーマ):【 水族館 】 コメント:2件 縁合 紫 閲覧数:1765

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 水槽の前、僕は立ち止まる。たくさんの水槽ごとに違う魚。ここは水族館。水族館の目玉である大水槽ではなく種類ごとに分けられている壁に埋め込まれた水槽が目的だ。
そして僕は彼らと自分を重ねて歩く。
 ここに居る魚達は大海原にいるよりも気楽だと思っていた。だって食べるのには困らないし、天敵からは隔離され、同じ自分と種類の魚しかいない。自由以外のものはなんでもある。
 しかしそうではない。と数年前の新聞で読んだときは衝撃を受けたのだ。水槽の魚たちは、同じ仲間しかいないから同じ仲間を攻撃することがあるという。人間の世界で言うところのいじめだ。いじめる魚を水槽から除いても、いじめている魚を水槽から除いても永遠に終わらないという。広い海ではそんなことはないのに水槽の中だけで起こる特殊なことだそうだ。
 なぜそんなことが起こるのかは分かっていないそうだが案外、人間も魚も同じかもしれない。狭いハコの中、他に娯楽もないと、生物とは嗜虐に走るのか。「退屈だから」、「ふざけたつもりだった」ふざけるな。
 ちっぽけなハコを世界の全てだと思わせて、逃げる場所さえなくて追い詰められてた魚はどこへ行けばいいのか。外から見ると綺麗に整えられた水槽を僕は皮肉を込めた目で凝視する。一見するとわからない魚のいじめは僕が見てもわからないのだ。平和そうに見える水槽は本当にちっぽけだ。そしてそれは僕の世界を誰が見てもわからない。お互い様か。僕が魚を助けられないように、誰も僕を助けてくれない。
 大海原ではいじめは無いのだったら、僕もそこへ行きたいと思ったんだ。ちっぽけな箱を飛び出して、海へ――。
 仲間がみんなで協力するなら飢えも天敵も乗り越えてみせます。だからどうか神様、心の叫びは届いた事はなくて、今まであなたを信じたことはないけれど、どうか一度だけ願いが叶うなら生まれ変わったら大海原を泳ぐ魚にしてください。狭い水槽で戦えなかった僕のたった一度の願いです。


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このストーリーに関するコメント

12/07/08 汐月夜空

緑合さん、初めまして。
汐月夜空と申します。コメントまことにありがとうございました。

水族館の魚たちにいじめがあるなんて初めて聞きました。衝撃的なお話ですね。いじめに合っている少年が、水槽の中の魚に感情移入して、生まれ変わったら海の魚になりたいと思うお話ですね。
少年の切実な願いが伝わってくるようで、こういう視点から見た水族館もあるのだなと驚きました。
かつての私もきっと水族館に行ったら同じようなことを思っていたかもしれません。いじめられていたわけではないですが、苦しいことが多かったので。

12/07/08 縁合 紫

汐月夜空さん

コメントありがとうございます。
魚のいじめの話はちょうど今のようにいじめが社会問題化した時に、さかなクンが朝日新聞に寄せていた文章でした。私も当時衝撃を受け、ずっと心に残っていたので今回のテーマに合わせて使わせていただきました。今でも検索すれば全文がWeb上で読めるようです。
題材が題材だけに切なくなりましたが、苦しい時に別の環境に憧れるのは誰しもあることだと思います。

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