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そらの珊瑚さん

🌼初めての詩集【うず】を上梓しました。  (土曜美術出版販売・現代詩の新鋭シリーズ30) 🌼小説や詩、短歌などを創作しております。 🌼作品を置いています。よろしかったらお立ち寄りくださいませ。 「珊瑚の櫂」http://sanngo.exblog.jp/14233561/ 🌼ツイッター@sangosorano 時々つぶやきます。 🌼詩の季刊誌(年4回発行)「きらる」(太陽書房)に参加しています。私を含めて10人の詩人によるアンソロジー集です。アマゾンでお買い上げいただけます。      ✿御礼✿「馬」のオーナーコンテストにご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

性別 女性
将来の夢 星座になること
座右の銘 珊瑚の夢は夜ひらく

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海辺の水族館

12/07/06 コンテスト(テーマ):【 水族館 】 コメント:7件 そらの珊瑚 閲覧数:2117

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 はい、私は安藤さんと付き合っていました。

 私は『海辺の水族館』に就職しました。ご存知のように「海辺の水族館」という名称の水族館です。早いものでそれから十年がたちました。今春の異動で私はペンギン館に配属されました。あこがれのイケメン安藤さんと同じ部署になれて内心毎日が楽しかったのを覚えています。もちろん安藤さんとどうのこうのなんていう気はありませんでした。だって彼は既婚者で三才になる子どももいましたから。
 安藤さんはイケメンというだけでなく、とても優しかったのです。私が髪を短く切って出勤した朝、声をかけてくれました。
「おっイメージチェンジ? 似合うよ」と。
 嬉しくなって私はその日の帰り道、ドラッグストアで赤い口紅を買いました。予想通り翌日安藤さんは私の赤い口紅に気づいてくれました。
「気を悪くしたらごめん。星野さんにはもっと淡い色の口紅の方が似合うと思うよ」と。 私は顔がカァと熱くなり、すぐさまトイレの洗面で口紅を落としました。冴えない私が化粧なんて身分不相応なことをして……と思うとぽろぽろと涙がこぼれてきました。
 驚いたことに翌日安藤さんが淡いピンクの口紅をプレゼントしてくれました。それをきっかけに私たちはつきあうようになったのです。
 半年位してから、今回の事件が起きたのです。まさか安藤さんの家が火事になり、奥さんとお子さんが亡くなってしまうなんて。
 火事のあった夜ですか? はい、確かに安藤さんは私の家に泊まっていました。私は安藤さんに勧められるままワインを飲みすぎてしまい、夜の十一時頃から朝の六時までぐっすりと睡っていました。朝起きると着替えを済ませた安藤さんが「家が火事になった。どうしよう」と青い顔をして携帯電話を握っていました。あれは警察からの電話だったのでしょうね。
 えっ? なんですって? 安藤さんが夜の間外出した形跡はないか、ですか? 私は一度も目を覚まさなかったので、そう言われたら断言はできませんが。アリバイ……まさか安藤さんが家に火を点けた? 動機は借金。保険金目当て? ええ、確かに安藤さんはお金に困っていたようです。ギャンブルなんてそんなに面白いのでしょうか? ええ、私も二百万円ほど貸していました。でも刑事さん、本当にあの人がやったのでしょうか? 私には信じられません。

         ◇
 
 警察での事情調書を終えて、私はまっすぐ家に帰る気が起こらず、水族館のペンギンの様子を見に行った。よちよちと歩くペンギンの様子はまるで幼い人間の子どものように愛らしい。私が殺めてしまった安藤さんのお子さんもあの位だったのかしら。
 安藤さん、あなたが悪いのよ。せっかく出来た私たちの子どもだったのに。産むなら別れるなんていうから、私はお腹の子を堕ろしてしまった。けれどそれからあなたは妙によそよそしくなって。貸したお金も返す気はなかったのでしょう。あの晚別れ話になるのを覚悟していた私はあなたの好きな赤ワインにこっそり睡眠薬を入れたの。もちろん私は白ワインしか飲まなかったけれど。ぐっすり眠ったあなたを残し、私はあなたの家へ行き、火を点けた。
 
 そこまで回想すると、突然一匹のペンギンが私の元へ歩いてきた。
「ハンニン ハ オマエ ダ!」
 と言って私に飛びかかってきた。それを合図に周りのペンギンが狂ったように、私の上に群がる。鋭いくちばしにつつかれて私は意識を失った。永遠に。
 翌日海辺の水族館で、私は無残な死体となって発見された。けれど魂はなぜかここを離れられず、今でも水槽をたゆとう泡のように、ここでさまよい続けている。
 それがきっと私への罰ね。
 
 ここは「海辺の水族館」という水族館。


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このストーリーに関するコメント

12/07/06 そらの珊瑚

すみません。事情調書→事情聴取の誤りでした。

12/07/06 ドーナツ

面白い展開ですね。不倫の話で物語が進むかと思ったら、意外な展開。しかも、ホラー自立てで、後半は ギョッとしました。

世の中 一番怖いのは女性かも。

12/07/07 そらの珊瑚

ドーナツさん
ありがとうございます。

季節柄ホラーなものを描きたくなりました。

12/07/07 泡沫恋歌

珊瑚さん、拝読しました。

今回はちょっと怖いサスペンス風で来ましたか?
私の水族館も偶然ですが、サスペンスっぽい話になりました。

何だか水族館って、背中が寒くなるお話が合いますよね(笑)
実はあの暗さが好きです。

12/07/07 そらの珊瑚

恋歌さん、
ありがとうございます。

水族館は独特の暗さがありますね。
そして本当は暗いはずの海は照明によって青く明るい。
非日常、もしくは異次元的なものを感じてしまいます。

12/07/08 汐月夜空

 珊瑚さん、拝読しました。
 海辺の水族館に永久就職するお話ですね。ペンギンに襲われて永遠に意識を失ったというのが果たして現実なのか、それとも比喩で違う死因があったのか色々想像が働きますね。
 想像するとなかなかホラーな光景ですが、それでも違和感なく想像できるのは水族館ならではの雰囲気のためでしょうか。

12/07/11 そらの珊瑚

夜空さん
ありがとうございます。

ペンギンに襲われたのは実は幻で、自殺だったとも考えられますね。
そのあたり、想像していただけるよう、ぼやかしてみましたので
お気づきいただいて、嬉しかったです。
鳥のくちばしに襲われるというのはヒッチコックの「鳥」を想像させますが
可愛らしいペンギンでは、今ひとつだったかもしれません。

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