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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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もし、これが夢ならば…

14/10/19 コンテスト(テーマ):第六十八回 時空モノガタリ文学賞【猛スピードで】 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:2125

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 ジリリーン、遅巻幸介は心地よい朝の眠りを破られ、腹立たしい。そのせいか、すぐさま目覚まし時計に手を伸ばし、ブツリと切った。それから寝返りを一つ打ち、後は仕事仕事、会社に行かねばと気合いを入れてベッドから抜け出す。
 まだ薄暗く肌寒い。それでも42度の朝シャンでシャキッと目覚め、ビジネススーツを身に纏い、アパートを飛び出す。朝食は会社近くの喫茶店でトーストを囓るつもりだ。
 幸介は運良く大手の早井自動車(株)に入社できた。あれから七年も経てば、こんな独身生活にも慣れるものだ。いつもの経路を辿って、いつもの時間に出勤する。そこには苦痛はなく、むしろマンネリとなっている。

 その日も毎日のパターン通りに、幸介は最寄り駅へと。しかし幸介は感じた、様子が普段とちょっと違うと。
 そして、その勘は当たった。改札を通り、混雑したホームへと降りて行くと、乗車口に並んでるはずのサラリーマンたちが、みんな倒れているではないか。
 えっ、これって…テロ?
 この光景を目の当たりにした幸介、血の気がさあっと引いて行くのがわかる。それでも気を落ち着かせ、一番近くにいる男性に駆け寄り、大丈夫ですか? と声を掛けてみる。
 しかし、返事がない。さらに奥へと目をやると、朝っぱらからだが、艶めかしく足をほっぽり出して横になってる女性がいる。すぐに走り寄り、「どうされましたか?」と揺すってみる。 ムニャムニャムニャと何かを呟き、それから横を向いて、スースーと。その横顔に泣きぼくろ、うーん、ちょっと可愛いかな。
 されども大事件。不純な雑念を追っ払い、失礼しますと一礼し、そっと女の手を握ってみる。意外に温かい。ならばということで、手首に指先をあててみると、ト−ン、トーン、トーン。規則正しい脈を打っているではないか。

「おっおー、生きてるぞ!」
 思わずこう叫んでしまった幸介、もう放っとけない。起きろよとお姉さんの白いほっぺをパチパチと平手打ち。それに反応してか、口をモゴモゴと動かして応答してくれた。「猛スピードで」と。
「はっ?」
 幸介は何のことかさっぱりわからない。しかし女は続けて放つ、「惑星が落ちてくる」と。
 なるほど、これは一大事だ。そこで幸介は思い出した。
 地球滅亡の事態に陥る時、人類はパニックとなる。そして社会は大混乱する。これを沈静化するため、人の脳内に一時強制睡眠を命じるチップを埋め込むこと、これが最近義務付けられたのだ。
 だが幸介はまだそれを実行していない。結果、この女からのまた聞きだが、明後日辺りに小惑星がぶつかってくると理解し、やっぱりパニックに。
「安全な所に逃げましょう」
 幸介は女を無理矢理起こし、手を引っ張って、道路でガーグーと高鼾の人たちの間を猛スピードで駆け抜ける。されどもサラリーマンの性、安全な場所と言っても、勤務するオフィスくらいしか思い付かない。

 ハアーハアーと息を切らせて、女と一緒に雪崩れ込んだ事務所、意外や意外、部長が前に立ち、朝礼中。
「こら、遅巻、おそまきながら出社なんて言うなよ。惑星衝突は誤報だ。いいか、うちの社名は早井だ。もっと猛スピードで走って来い」
 部長からいきなりドカーンと、惑星の代わりに雷が落ちて来た。これは理不尽だ。だがクッソーと唇を噛む耕介は無視され、「さっ、お嬢さん、みんなに紹介しましょう」と部長は茶坊主のように微笑み、手招きをしてるではないか。
 俺が救った泣き黒子のかわい子ちゃん、一体どうするつもりなんだよ、とムッとすると、部長からさらなる言葉が。
「課長が転勤に。その後任として、米国でMBAを取得され、ベンチャー企業を渡り歩いて来られた女史…」
 これに合わせて、女性は前へと進み出た。そして、まるでアスパラガスのように突っ立って、自己紹介をする。
「早井詩琴と申します。仕事は猛スピードで、これが私のモットーです」
 えっ、えー、ということは、早井一族のお嬢さん? それにしても猛スピードの早井詩琴って、早い仕事ってこと?
「今朝は早速、遅巻君に、少し荒っぽかったですが、助けてもらい無事初出社できました」
 おいおいおい、なんで俺のこと、君付けなんだよ? ということは…、俺の新しい上司?
「巧遅は拙速に如かず、業務はこの諺通りに推し進めます。だけど法の遵守、つまりコンプライアンスだけはしっかり守ってくださいね。例えば遅巻幸介君、早く強制睡眠チップを、その雑念一杯の脳に埋め込みなさい」

 今朝、いつも通り駅に行ったら、泣き黒子の可愛い女が寝ていた。あわよくば恋人にと、猛スピードで頑張った。
 その女が早井詩琴で、法遵守を命じる上司になるとは…、なんだよ、これ!
 幸介はこんな支離滅裂な展開に、ガーン!

 それにしても、あ〜あ。
 もし、これが夢ならば…猛スピードで、覚めてくれ!


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このストーリーに関するコメント

14/10/19 鮎風 遊

みな様へ

表紙の写真は
GATAG|フリー画像・写真素材集 4.0
著作者: Muska Hung (改変 gatag.net)
ライセンス: クリエイティブ・コモンズ表示
ID: 201403141500
から借りてきました。
よろしくご理解ください。

14/10/20 泡沫恋歌

鮎風 遊 様、拝読しました。

もしかして、この物語の主人公の遅巻君は強制睡眠チップで、すでに眠らされて、
こんな夢を見ているんでしょうか?

何だか、不思議なストーリー展開に夢か、真かと悩んじゃいました。

14/10/21 草愛やし美

Σ( ̄。 ̄ノ)ノ鮎風游さん、拝読しました。

ぶったまげの設定に驚きました。大変、面白くて一気読み終えました。
早井家って、凄い家でしょうね、食事も数分で食べ終わるとか、もちろんお風呂はカラスの行水に決定ですよね。笑
遅巻君の今後が心配──してません。だって、こんな雑念妄想男私も嫌かもです。苦笑 

14/11/01 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

うーん、実のところこれは夢か現実かわからないんですよ。
このまま続いてくれても良いような気がします。

14/11/01 鮎風 遊

草藍さん

コメントありがとうございます。

そうです、早井家ってスゴイんですわ。
それに対抗できるのは遅巻君だけと期待したのですが、
上司ではね、なんともなりません。

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