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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
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午前4時の通り雨 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/09/28 コンテスト(テーマ):第六十六回 時空モノガタリ文学賞【 舞い降りたものは 】 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:2129

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 朝まだきにザァーと通り雨。それが止み、東の山際に朱の太陽が昇り始める頃、女がヒラヒラと落ちて来た。しかし、衝撃は強いものだ、タワーマンションの屋外は血の海に。
 早朝に出勤する人たちはあっと声を詰まらせた。そして後退りをし、反射的に屋上を見上げる。

 演技派女優の折鶴蘭子、朝陽に飛翔!
 女流写真家でもある蘭子は、岸演出の超大作ミュージカル「舞い降りたものは」のヒロイン役を小悪魔女優のユーユとヒロイン役をめぐって争っていた。しかし、岸氏は昨今ユーユの抜擢に傾いたと噂されている。
 本マンションの10階に住む蘭子、ヒロイン役争奪戦で敗れ、それを悲観し、自ら身を投げたのか? その裏付けとして、屋上には蘭子のパンプスと遺書が残されてあった。皮肉にも、蘭子はミュージカル「舞い降りたものは」を先立って演じてしまったとも言える。
 エンタメ・マガジンはこうネット速報した。

「許せないわ、こんな憶測記事。ビジュアル女優、ユーユのファンの百目鬼刑事さん、まさか賛同されないでしょうね」
 芹凛(せりりん)こと芹川凛子刑事が朝から絡んでくる。百目鬼にとってそれは当たらずとも遠からず。だがここは上司らしくキリリと立ち上がり、「さっ、事件性があるかどうか調べに行くぞ」と告げ、大股で外へと向かった。芹凛は無言でその後を追い掛けるしかなかった。

 現場に入った二人、すぐに検死をし、それから屋上へと上がる。周囲は落下防止の金網が張り巡らされている。だが女性でも充分乗り越えられる高さ、それを確認し、遺留物をチェックする。
「えっ、濡れてるわ!」
 蘭子の靴に触れた芹凛が叫んだ。百目鬼はわかってる。「時間のズレがあるぞ」と呟く百目鬼に、芹凛は頬に手を当て、「蘭子が飛び降りたのは午前6時、その時靴を脱いだのであれば濡れてないはず。ということは、4時頃のにわか雨の前に、パンプスはここに置かれたと考えられる。つまり蘭子の飛び降り自殺に偽装の疑いがあるわ」と。これに百目鬼は「遺体の損傷具合から、投身地点は30階以上の高さ。マンション東面の墜落線に沿う住人を調べてくれ」と指示を飛ばした。

 30分後、百目鬼は報告を受ける、37階の住人は演出家の岸でした、と。重要情報だ。早速二人は訪ねてみる。岸は在宅で、室内へと招き入れてくれた。蘭子の死にショックを受けた様子、それでも快く事情聴取に応じてくれた。
 岸の弁によると、昨夜3時まで在宅していた。その後友人から誘いの電話があり、深夜パブへと出掛けた。そして朝7時に帰宅した、と。
 この裏を取った結果、岸のアリバイは成立した。また室内を検分するが、実にシンプルな住まいだった。
 壁に1.9mx1m、多分120号であろう大きな風景画が飾られてあるだけで、後はソファにテーブル、他に一応の電化製品、あと目に付くものとしてはカゴに入れられたフランスパン程度のもの。
 またベランダには金属製物干し竿とホースが2本、他に25リットルのバケツ2個だった。さらに防犯カメラには異常な物を運んだ形跡はなく、以上からして、蘭子の飛び降り自殺への岸の繋がりは見出せなかった。

 署に戻った百目鬼と芹凛、しかし、しっくり来ない。長い沈黙の後、「芹凛、あの部屋にある物で蘭子を殺害し、その後、アリバイ工作はできないか?」と問うた。だが、さらに沈黙は続く。しかし、30分後芹凛が口を開く、「コーヒーでも入れましょうか」と。百目鬼はわかってる、芹凛が推理を組み立て終えたのだと。「うん、濃い目でな」と目配せすると、芹凛は嬉々として語り始める。
 岸は蘭子を夜2時頃に撲殺。その凶器は水を含ませ、冷凍室で凍らせたフランスパン。殺害後、蘭子のパンプスと偽造遺書を屋上に置き、部屋へと戻る。それから壁の絵を取り外し、裏返してベランダの柵の上に一方を乗せる。そして後方の金具にロープを結び、物干し竿の上を通して、その端にバケツをぶら下げる。そこへホースで僅かずつ水を注入して行く段取りをする。そして、つっかい棒により水平にした絵の上に死体を乗せて、マンションを後にする。時間とともにバケツの重量は増し、後方は持ち上がって、朝6時頃に傾きは45度となる。結果、蘭子は空中へと舞い落ちた。

 見事な推理だ。しかし、芹凛は動機が分からない。これを察した百目鬼、この分野は得意だ。「岸とユーユは男女の仲。それを写真家でもあった蘭子はフォーカスし、それをネタに、ヒロインに抜擢せよと岸を強請った。暴露されれば、岸の評判は地に落ちる。後は計画的に、岸は保身のため、蘭子を殺害したんだよ」と揺るぎない。
「ドロドロのオヤジの勘だわ」
 こう思わず吐いてしまった芹凛に、百目鬼はギョロッと鬼の目を剥いて、檄を飛ばすのだった。
「舞い降りたもの――それは死体だった。さっ、芹凛、マンションへ行くぞ!」


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このストーリーに関するコメント

14/09/28 鮎風 遊

みな様へ

表紙の写真は
GATAG|フリー画像・写真素材集 4.0
著作者 : StephaniePetraPhoto
ライセンス : クリエイティブ・コモンズ表示
ID : 201409212100
からお借りしてきました。

よろしく。

14/09/30 草愛やし美

鮎風游さん、拝読しました。

舞い降りたものは死体。恐ろしい殺人事件だったのですね。想像力が乏しくて、情けない私は、あれやこれやと、殺人場面の推理を想像して脳裏に浮かべています絵にするには乏しい脳のようです。推理が映像だったらと切に思いました。
2千文字の掌編を推理小説に仕上げる手腕は凄いと思います。このプロット相当考えられたのでしょうね。ああ、そうかそういうことかと、ほんと感心しました。

14/10/01 泡沫恋歌

鮎風 遊 様、拝読しました。

死体が舞い降りてきたら怖いですね。

それにしても見事なトリック! 短い話にミステリーのエキスがたっぷり詰まってますね。

「百目鬼 学シリーズ」の大ファンです。

14/10/01 そらの珊瑚

鮎風 遊さん、拝読しました。

最初にあったフランスパンが怪しいと思い、それが当たったので嬉しいです。
これぞ推理小説の楽しみです。

14/10/03 鮎風 遊

草藍さん

コメントありがとうございます。

それは恐ろしい事件だった。
百目鬼と芹凛の名コンビでなんとか解決に。

これからも解けそうにない難事件に挑んで行きますので、
ご愛顧に。

14/10/03 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

どこにでもあるシンプルな物で、殺人とアリバイ工作。
百目鬼と芹凛は頑張りました。

また登場しますので、よろしく。

14/10/03 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメントありがとうございます。

フランスパン、的中しましたか。
それは良かったです。

今度は絶対見抜けない方法に挑戦しますので、
楽しみにしてください。
よろしく。

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