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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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すーちゃんのおねえちゃん

14/09/21 コンテスト(テーマ):第六十五回 時空モノガタリ文学賞【 守る 】  コメント:13件 泡沫恋歌 閲覧数:2711

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『すーちゃん、すーちゃん』

「ママ、今、だれかの声がしたよ」
「えっ? そんな筈ない。この家には涼香(すずか)とパパとママの三人しかいないわ」

 田舎にある古家に住むことになった。
 この家はパパのお祖母ちゃんが亡くなる日まで一人で暮らしていた。戦前に建てられた日本家屋で、地主だったという旧家の立派な建屋である。
 こんな辺鄙な山の中に住む人もなく、取り壊すにも費用が掛かるので放って置かれた古家だが、パパの会社が多忙過ぎて体調を崩して、しばらく休職することになったので、転地療養を兼ねて都会から引っ越ししてきた。
 パパは自由な時間がいっぱい、この家で小説でも書くと作家気取りで張り切っている。イラストレーターのママはパソコンがあれば原稿も送れるので仕事に支障なし、田舎暮らしに興味深々。五歳の涼香は幼稚園をお休みしているが、元々人見知りの激しい子なので家族水入らずの毎日が楽しいようだ。 

『すーちゃん、お帰り。ずっと待ってた……』
「あなたはだぁれ?」
『すーちゃんのおねえちゃん』
「スーは一人っ子だから、おねえちゃんはいないよ」

「なに独りごと言ってんの?」
 不思議しそうに、ママが涼香の顔を覗き込んだ。
「ううん。そこにキモノを着た女の子がいるの」
 涼香が座敷の隅を指差しましたが、
「嘘!? 誰もいないわ。気味悪いこと言わないで!」
 怖がりなママの顔が引き攣った。

 その夜、ママはパパに相談しました。
「スーが見えない誰かと話をして気味悪いわ」
「古い家だしお化けくらいは出るだろう」
 パパは笑って相手にしません。
「キモノ着た女の子がいるって言うの」
「以前、独り暮らしのお祖母さんをうちで引き取ろうとしたら『あたしゃ、一人じゃないよ。寂しくなんかない』と頑なに拒否したんだ。やっぱり、この古家にはお化けが居るかも……」
「止めてよー! 怖くて夜中にトイレに行けなくなっちゃう」
 ママは半ベソをかきました。

「パパ来て! 宝物があるの」
 昼寝中のパパの元に涼香がやって来て、突然そんなことを言う。
「……宝物?」
「うん。おねえちゃんが教えてくれた」
「お姉ちゃん?」
「すーちゃんのおねえちゃん」
 パパは涼香に連れて行かれるまま台所へ……水屋箪笥の隠し戸棚から風呂敷に包まったものが出てきた。それは戦前に流行した『ぶらぶら人形』という布で作られた古めかしい人形だった。
「おねえちゃんが、これスーにくれるって!」
 なぜ人形の在り処を涼香が知ったのだろうか、パパは不思議で堪りません。
「お人形のことを教えてくれた、おねえちゃんってどんな子?」
「う〜んと、スーよりも少し大きい、白いキモノ、オカッパ頭」
 その説明を聞いて、パパは死んだお祖母さんの話を思い出した。

『あたしゃ、姉ちゃんがおったんよ。年子で仲良し姉妹やった。一緒に遊んでいたら、ぶらぶら人形の取り合いになって、姉ちゃんが隠しよった。姉妹喧嘩になって揉み合っていたら、足元にマムシがおった! 昔は鶏を放し飼いにしとるで、蛇が卵を狙って庭に入って来るんじゃ。そん時、先に気付いた姉ちゃんがあたしを突き飛ばして、自分が噛まれたんじゃ。医者を呼んだが血清も間に合わず姉ちゃんは死んでしもた……。人形の在り処も分からんまんま――』

 夏休みにクワガタ獲りに来ていた小学生だったパパは、そんな話を聴いた記憶があった。当時はお祖母さんの話なんか興味なくて、クワガタに夢中だった。
 すーちゃんのおねえちゃん……お祖母さんの名前は“すずえ”という。その子はお祖母さんの姉の霊かも知れないとパパは思った。涼香もスーちゃんだし、妹と勘違いしているのかな?
 座敷童みたいに悪い霊ではなさそうなので放って置こうと決めた。

 
 見えない誰かとお喋りしながら涼香は一人遊びをしている。それを見る度、ママは気持ち悪がって、早く都会に帰ろうとパパをせっついた。
 そんなある日、庭先から泣き声が聴こえた。見に行くと石灯籠が倒れて、既の所で涼香を直撃だった。古い灯籠だし、雨や地震で台座がずれて倒れたようだ。
「すーちゃんのおねえちゃんが、スーをグイッ引っ張ったから……」
 あの子に涼香は助けられたようだ。この家と家族を守る自縛霊なのかも知れない。
 パパは都会に戻る前に、お寺からお坊さんを呼んで、すーちゃんのおねえちゃんを手厚く供養しました。

 引っ越しの車の中で『すーちゃんのおねえちゃんが“ありがとう”そして“また会いましょう”って、言ってたよ』そんなことを涼香が両親に話した。

 十ヶ月後――ママは赤ちゃんを生みました。可愛い女の子を。
「スーがおねえちゃんになった!」
 妹の誕生に涼香は大喜びです。

 この赤ちゃんは、あの子の生まれ変わりかも知れない。大事に育てようとパパは思いました。


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このストーリーに関するコメント

14/09/21 泡沫恋歌

大正時代から昭和初期にかけて、女の子の間で流行った『ぶらぶら人形』と呼ばれる布製のお人形です。

人形の写真は検索してお借りしました。

14/09/22 夏日 純希

ぶらぶら人形ですかぁ・・・そんなもんがあったんですねぇ・・・。
圧倒的に雰囲気を際立たせてくれる存在でした。
あと、構成がしっかりしてるので、読後はすっきり感が漂ってました。

にしても、かめかめさんと二作連続で幽霊物なんて読んでしまい、
夜中にトイレに行けなくなっちゃたら、どうしたらいいんですか・・・。

14/09/22 メラ

恋歌さん、拝読しました。
一瞬怪談ものかと思いきや、とても心温まるお話でした。こういう不思議なことってあると思います。赤ちゃんは生まれ変わりなら、あの古屋にはもうおねえちゃんはいないのでしょうか。

14/09/22 そらの珊瑚

泡沫恋歌さん、拝読しました。

ぶらぶら人形、なんだか中原淳一さんの描いた女の子の顔によく似てますね。
座敷童は守護霊だって聞いたことあります。きっとすーちゃんのことを守ってくれたのでしょう。パパも元気になって良かったです。
怖くない怪談(?)みたいで、読み終わって優しい気持ちになりました♪

14/09/23 黒糖ロール

ぶらぶら人形という名前は何やら怖いのですが、お写真は可愛らしいですね。
ほんわか幽霊もの、楽しませていただきました。

14/09/23 草愛やし美

泡沫恋歌さん、拝読しました。

お姉ちゃんがいたのですね、不思議な縁でしょうか、守るためにあえて出てきたのかもしれませんね。優しい生まれ変わりの赤ちゃんがきっと生まれることでしょう、涼香ちゃん、いいお姉ちゃんにきっとなるでしょうねえ。ほのぼのするお話でした。

14/09/23 鮎風 遊

郷愁を誘う物語で、なにかほのぼのとさせてもらいました。
確かにいますね、こんな霊。

私の田舎の家も、子供じゃなくておっちゃん、おばちゃんだらけです。
毎晩宴会やってられるようで、結構騒々しいです。

良い供養をされましたね。
生まれ変われて良かったです。

14/09/30 ドーナツ

拝読しました。
ぶらぶら人形というのは初めて知りました。

怖いけど おどろおどろしたものがないので、 心の温かさを感じます。

14/10/01 泡沫恋歌

夏日 純希 様、コメントありがとうございます。

そうそう「ぶらぶら人形」って名前分からなくて、いろいろ検索して調べたんですよ。
この人形が作品のイメージだったのに、肝心の名前が分からず困ったあ〜



メラ 様、コメントありがとうございます。

すーちゃんのおねえちゃんは生まれ変わって、再び、家族になったんだと思います。
古屋には何か棲んでいそうで怖いです。



そらの珊瑚 様、コメントありがとうございます。

座敷童は生前徳の高い子どもが死んでから、家についた自縛霊だそうです。
基本は幽霊ということですが、とりついたり悪さはしないで、その家を繁栄させてくれる有難い霊です。

きっと、良い子になって転生してくれることでしょう。

14/10/01 泡沫恋歌

黒糖ロール 様、コメントありがとうございます。

まさしく怖くないほんわか幽霊話でした。
すーちゃんのおねえちゃんは、たぶん寂しい幽霊だと思います。



草藍 様、コメントありがとうございます。

この物語の「すーちゃんのおねえちゃん」というのは、実は私の母の亡くなった姉のことを
イメージして考えました。

母は「スエノ」という名前で、すーちゃんと呼ばれていて、6歳くらいで病気で亡くなった姉がいたのです。
とても気の優しい姉だったと聞いています。



鮎風 遊 様、コメントありがとうございます。

田舎の古屋におじいさんやおばあさんの幽霊がいて毎晩宴会ですか?

そういう陽気な幽霊なら、ぜんぜん怖くなくてイイですね。
「すーちゃんのおねえちゃん」は、ほのぼの系の幽霊話ですから(笑)

14/10/01 泡沫恋歌

OHIME 様、コメントありがとうございます。

読みに来てくれて、とても嬉しいです♪ 感謝☆(人∀`*)☆感謝

この話は実際、私の母と幼くして亡くなった姉の話を元に考えたもので、姉妹というのは、
ケンカばかりしているようでも本当は仲良しなんですよ。

人形の取り合いでケンカになって、その後、姉が亡くなって消えてしまった人形が
再び、現代に戻ってきたんです。

すーちゃんのおねえちゃんも生まれ変わって戻って来てくれました。



メイ王星 様、コメントありがとうございます。

すーちゃんのおねえちゃんは誰も住まなくなった古屋で、ずっと一人で家族が帰ってくるのを
待っていたのでしょうね。

そう思うと悲しい幽霊ですから、もう一度、命を与えてあげたいと思いました。



ドーナツ 様、コメントありがとうございます。

ぜんぜん怖くない怪談でした(笑)

あの人形のことを戦前の女の子たちは「ぶらぶら人形」と呼んだようで、お母さんごっこで
赤ちゃんの代りに紐でおんぶして、遊んでいたみたいですよ。

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