1. トップページ
  2. ため口のおっぱい

草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

投稿済みの作品

13

ため口のおっぱい

14/09/17 コンテスト(テーマ):第六十五回 時空モノガタリ文学賞【 守る 】  コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:2014

この作品を評価する

「聞こえてるんでしょ、帆花」
「誰?」
「あんたのおっぱい」
「嘘、乳房が話すわけない」
「こないだからずっと話しかけてるのに無視してたでしょ。私は右ぱい」
「右のおっぱい、ってことは、左右は別人格、知らなかった」
「知っておくとよいよ、おっぱいは左右対称じゃないでしょ、別物だからなのよ」
「右だけが話せるって左は、寡黙な詩人とか?」
「ほら、しゃべんな、左」
『私はいいです……』
「ほらね、左はあたしみたいなため口きかない上物さ。そんなことより、あんた、休日も昼間ブラしないさいよ、年齢考えなきゃ、垂れてきているよ、自己管理。自分を守るのは自分自身。隠してるとこだから、他人は気づかないけど、今に彼氏にばれるよ」
「何であんたに彼氏のことまで言われなきゃなんないの」
「彼がいい人だからって甘えは良くないよ、休日もブラしなさい。ああ、もう手遅れでハミ肉は確実かもだけど、つけないよりはましかも」
「だって、休日は楽で良いじゃない、選択は私の自由よ、ため口で命令しないでよ」
「ため口は持ち主似。悲しいよなあ、あんたのおっぱいとして三十七年間も頑張ってきたのに、酷いよぉエーン」
「泣かれても……」
「ウエーン」
「ちょっと、胸でワンワン泣かないでうるさくってゆっくりお風呂入れないじゃないの」
「だったら言うこと聞きなさい、あんたの体を守るのはあんた自身、検診受けなさい」
「ブラの話だったんじゃないの、検診って何よ」
「実は左の奴が最近しつこく検診受けて欲しいって泣くんだ」
「あんたが苛めたんじゃないの」
「あたしじゃない! 体は自分で守るもの、あんたが守ろうとしないと、あたし達はどうしようもできないの、左はあたしと違ってまともな子だから言うこと聞いてやってよ」

 帆花は右のおっぱいに言われ生まれて初めて癌検診に行った。
「乳癌です、すぐに右乳房の摘出手術をお勧めします。間に合いましたよ、検診来られ良かったですね、浸潤はしていなかったですよ。今後、色々な検査や形成も含めて決めていきましょう」
「乳癌……、右のおっぱいが教えてくれたんだ」
「えっ、何て?」
「いえ、何でもありません。摘出……」
「形成受診して先生のお話を聞いて下さい、今は形成術も進んでいますから大丈夫ですよ」
 帆花はそれ以上は口を閉ざした。家に帰ると鏡の前で自分の乳房を見つめ泣き出した。
「うう、嫌だー、乳房がなくなるなんてどうしよう」
「泣かないの、帆花よく検診行ったね、左の子は無事で良かった」
「あんたはどうなるの?」
「ずっとあんたと話したかったけどさ、運命って奴には逆らえないもんだ」
『私も一つになるのは悲しいです。右のお方、何とかならないのでしょうか?』
「でもさ、本体の帆花がいなくなるよりずっと良い。左は残ってくれて安心したよ。さよならだけどあたしは帆花と左が残れば満足。覚悟している、でも、駄目だ……ごめん、泣きそうだよ」
「泣かないで。私の責任だね、ごめん、もっとちゃんと自分の体を守るべきだった。自己管理、自分を守れるのは私自身、これから検診ちゃんと受けるよ、友達にも言うよ、何かわかんないけど、自分を守ることは他人にも優しくなれそうに思う、ありがとう私のおっぱい達」
「いいってば、今どきは形成外科手術っての発達してるからさ、あたしの代わりになる良いもの医者が作ってくれるって」
「でも、本物の乳房がなくなるなんてどうしたらいいの、結婚もまだなのに彼はどう思うだろう……」
「彼氏にちゃんと伝えれば良いよ。あいつなら大丈夫、あんたの胸でずっと二人の様子見てきたけどいい奴で良かったよ」
 右のおっぱいの言う通り、彼氏はとてもいい奴で心配して手術当日も付き添っていた。
「乳房よりも、君の命の方が大事だ、僕は、君がいてくれるだけでいい。頑張ろうよ二人で」
 麻酔がかけられ意識が朦朧としてきた帆花の耳に右のおっぱいの声が聞こえてきた。
「帆花、いよいよお別れだ。あたしはいなくなるけど、あたしはあんたが生き続けて頑張ってくれることが一番嬉しいよ」
「右おっぱい……ずっと話していたかった、うう」
「泣かないの、帆花。あたしは、パイパイだから、バイバイじゃなくパイパイって言ってお別れだ。後は左の子に頼んどいたから安心しな。あたしに涙は似合わないから笑って、ふふふ」
「パイパイ……どこまでもあんたって子は」
 ため口の右パイの笑う声を遠ざかる意識の中聞きながら帆花は微笑んでいた。みなの祈りが通じ手術は無事成功、形成で見事な乳房が作られた。

 その後二度とおっぱいは話さなくなったが、帆花はきちんとブラを着用するようになり、普段から鏡の前で乳房チェックも欠かさなくしている。自分を守ることがどれほど大切かを知った帆花は、結婚後、乳癌検診を勧めるピンクリボン運動の推進に努めている。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

14/09/17 草愛やし美

説明させていただきます。

ピンクリボンとは、乳癌の正しい知識を広め、乳癌検診の早期受診を推進することを目的として行われている世界規模の啓発キャンペーンのシンボルです。日本人女性の、乳癌発症率は約二十人に一人と言われています。乳癌で死亡する女性の数は年間約一万人弱とされ、そのキャンペーンは年を増すごとに拡大していっております。

十月一日には、「ピンクリボンデー」と銘打ち、東京都庁舎、レインボーブリッジ、東京タワー、スカイツリー、表参道ヒルズ、名古屋城、大阪の通天閣、神戸ポートタワー、明石海峡大橋などをピンク色にライトアップしたり、ピンク色の電球に交換。いずれも大勢の人へ視覚の形で、ピンクリボン運動の認知度向上へ貢献させています。

画像はピンクリボン運動からお借りしました。右画像はキャンペーンでライトアップされた東京タワーとスカイツリーです。

14/09/18 夏日 純希

草藍さんのピンクリボン活動、拝見いたしました。

どこから褒めていいのかわからないですが……。
まず、タイトルですかね。自然と男を引きつ……いや、何でもないです。
ダイレクトに書くと重たい話ですが、おもしろ悲しく仕上げてらっしゃるのが、ほんと素晴らしいと思います。
社会貢献までしてしまってほんとにどこまで素晴らしいのやら。
パイパイという表現ができるのは女性の特権ですね(男が書くと多分変な目で見られると思うので)。
最後に微笑みを残して去った右の子は最高のパートナーでしたね。

3回ぐらい、評価ボタン押したかったです。

14/09/18 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

おっぱいが帆花を守ってくれたのですね。癌は早期発見が何より大切ですから、自分の身体がしゃべるなんて鬼に金棒です。
昔は乳がんは全摘出の場合がほとんどだったらしいですが、最近は浸潤がない早期発見であれば部分摘出がほとんどらしいですよ。(いろいろなタイプがありますから、全てというわけではないでしょうけど)だから怖がらずに検診を受けてほしいです。
乳がんは自分で発見出来る癌の場合が多いですから、日頃のチェックは大切だということは結構浸透してきているんじゃないでしょうか。
これもピンクリボン運動のおかげですね。
重いテーマでありましたが、楽しく読ませていただきました♪

14/09/18 滝沢朱音

草藍さん、こんばんは。

おっぱいのお話、読ませていただきました(*ノωノ)
(いや、照れてちゃダメですよね、大切なことです)
重いテーマをユーモアたっぷりに、読みやすく説いてくださったのだと。。

私も右パイ・左パイと会話して、検診に行って、
ちゃんと守っていきたいと思います(`・ω・´)ゞ

14/09/19 泡沫恋歌

草藍 様、拝読しました。

女性にとってとっても重大な問題を、明るく楽しく読ませるテクニックはさすがだと
感心させられました。

ピンクリボンのキャンペーンはいろんな所で行われていて、先日購入したLesorisacの
バッグにもこのリボンが付いてました。
出来るだけ、ピンクリボンに協賛している商品を購入するように心掛けています。

「ため口のおっぱい」は、心に残る良い作品だと思いました。

14/09/20 kotonoha

ピンクリボン運動のリボンだったのですか。
何となく見ていましたが。この小説を読ませた頂いて良かったです。
右乳房がなくなるときバイバイではなくパイパイだなんて悲しいですね。
片方のおっぱいよりも君の命が大事といってくれた彼は優しいですね。

恥ずかしながら私も外出から帰るとブラを外します。
締め付けつのが大嫌い何です。^^

14/09/21 suggino

面白かったです!
ピンクリボン運動は知っていましたが、無関係のような気がしていました。こいうものが書けるのは、すごいな。ユーモアがありながらしっかりとしたメッセージが込められていて、勉強になりました。

14/09/21 鮎風 遊

男の私には、切実そうで、息が詰まりました。
ただただ健康パイでありますようにと祈るばかりです。

それにしても……、焼酎飲んで読んでる場合じゃないですよね。
オロオロ。

14/09/23 黒糖ロール

けっこう重たいテーマなのに、文中に差し込まれる「おっぱい」の四文字が和らげてくれる。おっぱいのすごさを実感しました。
乳房じゃきっとだめで、ここはやっぱりおっぱいでなければ。
面白かったです。

14/09/30 草愛やし美

>夏日純希さん、お読みいただき、コメントいつも感謝しています。

男性には書けない言葉かもですね、変に思われる? でも、お医者さん男性もおられます。でも、女性側が婦人科と乳房専門医は女性を望むらしく、私の住む大阪には女性スッタフが検診を担当していますとのうたい文句のクリニックが増えています。
身に余るようなお褒めいただき恐縮しています、ありがとうございました。

>そらの珊瑚さん、お読みくださって嬉しいです。

近年の医学の進歩は素晴らしく、ご指摘のように乳房全摘はかなりの重篤な場合になってきているのが現状のようです。創作上、浸潤していないの一言で済ませてしまいましたが、大汗かいています。明るいラストでとの願いでこういう設定にさせていただきました。貴重なお言葉、これからの創作の糧にしたいと思います。コメントありがとうございました。

>滝沢朱音さん、照れますよね。お若いからです、きっぱり! もうある程度の年を生きてきますと、照れるというようなそういう大切な感情を置き忘れた感があります。みんなではないですが、とりわけ大阪在住30年超えましてたとえ京都生まれでも、もはや立派な大阪のおばちゃん化しています。そういう点で、恥ずかしさがあまりなくなっていると思います。汗 
恥じらいはとても大事なこと、今は女性スタッフのみで検診をしてくれる医療機関も増えています、ぜひ進んで検診うけてくださいね。コメントありがとうございました。

>泡沫恋歌さん、お立ち寄り感謝、いつも、コメント書いていただき創作への励みになっています。ありがとうございます。

ピンクリボン運動の他、今はブルーリボンや白いリボンなど、様々なリボンで訴えるという手段が用いられているようですね。視覚に訴えるこの方法は、簡潔で誰にでもわかり易く素晴らしいと思います。そのうえ、ピンクのリボンですから、可愛い点など女性にぴったりのキャンペーンの仕方だと思います。

>kotonohaさん、お立ち寄りいつも嬉しく感謝しております。コメントありがとうございます。

案外見ていても知らないものだったりってあります。私もTVのニュースでイルミネーションが変わることから、初めてこのキャンペーンも知りました。乳癌検診を勧めるこのキャンペーンは世界中に知れ渡っていることなので、海外に行ってもああこれだということあるかもです。エッフェル塔なども10月1日はピンクに染まるようですよ。

>sugginoさん、お読みくださって大変嬉しいです。コメントありがとうございます。
ピンクリボンご存じだったのですね。キャンペーンに関して、マンモグラフィーの良し悪しなど賛否両論あるようですが、乳癌の場合は自己検診ができる病気ですので、体を守るためにも普段から、自分の乳房をチェックしたいと思っています。

>ヽ(*⌒∇^)ノヤッホーイ♪OHIMEさんだあ〜〜お久しぶりです。嬉しい、読みに来てくださったのですね。コメントありがとうございます。

いやお仕事帰ったら外すでしょ。ハミ肉の場面は実話でして、私は若い頃からずっとノーブラでしたが、さすがに年と体重増加には勝てず、最近めちゃハミ肉しているのに気付き焦りました。ネットで楽ちんという振れ込みのスポーツブラを今は着用しています。かなりましになるのではと期待していますが、早く気づけよと自己反省の日々でして、そこを書かせていただきました。
OHIMEさんも新作どんどん書いてくださいね、楽しみに待っていますよ。でも無理しないでお仕事優先ですけどね。よろしくお願いします。

>鮎風游さん、お読みいただき理解深めてくださり嬉しいです。ああ、男はんはやはり照れますか。苦笑 素直なコメントに微笑んでいます。オロオロしながらも、貴重なコメントありがとうございました。

>黒糖ロールさん、字数多いのですが、やはり「乳房」よりは「おっぱい」が親しめるかと……。お褒め戴きおっぱいともども感謝しております。
コミカルにと思いましたので、親しみ込めておっぱいにしましたが、それが幸いしたとのコメントのお言葉大変嬉しいです。ありがとうございました。

14/10/08 草愛やし美

凪沙薫さん、お読みくださって嬉しいです。コメント感謝しています。

おっぱいが話しかけたらどうなるかなとふと思ったことをきっかけに書いてみました。男性は照れる内容だったようですね、あまり深く考えない単純人間の私は、コメント欄を見て初めてわかりました。きっと自分が女性だから感じていなかったのかもしれません。

ピンクリボンのことは以前から知っていました。以前、(かなり前ですが)子宮癌で亡くなった友人のことを書いた時に、医療の現場(検査技師)で働いておられる方からアドヴァイスをいただきました。
内容は医学は日進月歩、私の書いた知識が少し古かったようで、医学的にもっと良い方法があるというご指摘でした。その折に、色々と検索して調べている過程で、ピンクリボンのことも知りました。
その方から、医療のこと、とりわけ予防できる検査に関心を持つことがとても大切だと思いました。
こういう思いは、創作の目標のひとつと考えていますが、基本は誰かに読んでいただき、楽しんでもらえればいいなあという願望で書いています。コメント大変ありがとうございました。

ログイン