奈良春水さん

奈良春水(なら しゅんすい)と言います。 読み手の心をホッと温めたり、時には涙を誘う(?)小説を書くこと心掛けたいと思います。 よろしくお願いします。

性別 男性
将来の夢 自転車で日本一周の旅に出る
座右の銘 臥薪嘗胆 →中学か高校の漢文の教科書に載っているアレです。メンタリティーが好き。 なんくるないさぁ →沖縄の方言で「なんとかなるさ」という意味。響きが好き。 辛いことや苦しいことがあった時は、いつもこの2つの言葉を呪文のように呟いてます(笑)

投稿済みの作品

0

晩酌

14/09/16 コンテスト(テーマ):第六十六回 時空モノガタリ文学賞【 舞い降りたものは 】 コメント:0件 奈良春水 閲覧数:782

この作品を評価する

 私たち夫婦は揃って大のお酒好きだ。アルコール類ならなんでも好きだ。特に、一日の終わりに二人で晩酌をする時間は私たちにとって至福の時だ。
 だから、今日も私は風呂上りに冷蔵庫に向かい、冷やしてあった缶ビールを二つ取り出し、ソファーに座る妻の茜に一つ渡した。
「はい、今日も無事に終わりました。お疲れ様」
「うん。あなたもお仕事お疲れ様」
 いつもはそんなやり取りの後、二人で飲むはずなのに、今日は茜がなかなか飲もうとしない。
「どうした?」
「うん、ちょっとね・・・」
 歯切れが悪い茜は、このタイミングを狙っていたのか、近くにあったバックから1枚の写真を取り出して、それを私に渡した。
 エコー写真だった。
 唖然とする私に、茜が「そういうことだから、今日からはあなたが一人で飲んでよ。私はもう飲めませーん」とおどけて笑った。
 結婚して三年目。初めて授かった子供だ。
「今日、わかったの?」
「うん。病院行ったら、おめでとうございます、だって」
 私の目に映る景色が急に揺れた。
「やだぁ、泣いてるの?嬉しいのはわかるけど、泣くことはないんじゃない?」
「ばか、俺たちの初めての子供だぞ。泣くに決まってるだろ」
 写真の中のものは、まだ人間の形をしていない。でも、確かにそこに命があった。私たちの家族がいた。
 私は持っていた缶ビールを開けて、勢いよくグビグビと喉を鳴らしながら一気に飲み干した。いつもは一杯ほどでは酔わないのに、なんだか頭がぼうっとしてきた。でも、それはとても心地よい気分にさせてくれるものだった。
 私はたまらず、茜の分のビールも開けて勢いよく飲む。
 目からまた新たな涙があふれ出した。
 それを見ていた茜が、お腹にそっと手を当てながら、まるで歌うように優しく、新たな家族に語りかける。
「パパは泣き虫ですねぇ。困りましたねー」
 その声はどこか懐かしいような・・・
 そうだ、私がまだ幼かったころのおふくろの声によく似ていた。

(了)


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン