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松定 鴨汀さん

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安寧の日々の終わり

12/06/25 コンテスト(テーマ):第七回【 結婚 】 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:1888

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「汝はこの男を夫とし、良きときも悪きときも……」
 ついにこの日がきた。
 待ちわびていたこのときが。
 
 思えば長かった。幼馴染は成人する一歩手前で病死し、一人目の彼は結婚式前日に圧死した。
 もう誰も好きになるまいと思っていたところにあらわれたのが、今、隣で神妙に神父様の言葉を聴いている彼である。

「……死が二人を分かつまで、ともに添い遂げることを誓いますか?」

 はい、と言おうと口を開きかけたその時、突然、大きな揺れがおきた。
 参列者の悲鳴。幾人かが吹き飛ぶ。
 こんな揺れは、久しぶりだ。元彼が死んだ時を思い出した。

「あなた!! 大丈夫!?」
「だ、大丈夫だよ!」

 大きな上下振動が続く。
 小柄な彼は、必死に足場にしがみついていた。
 参列者の幾人かは、足場にとどまれず、ふるい落とされていった。

「気をつけて! 天井に押しつぶされて死ぬこともあるのよ!」
「君こそ気をつけて!」

 そう励ましあってしばらく。
 最後にぐっと大きなひと揺れがきて、揺れは終わった。
 床にしがみついていた神父様が汗をぬぐった。

「皆さん、無事でしょうか?」

 参列者が半分ほどになっていた。

「ではまず、行方不明になられた方の無事を祈りましょう」

 神父様の言葉に、皆が黙祷をささげる。
 祈りの甲斐あって、何名かが戻ってきた。道に迷って大変だったと言う。

「では、そろそろ式を再開しましょうか?」

 その言葉で私が内心ガッツポーズをしたとき、次の苦難がおそってきた。
 気づいたのは彼だった。

「なんか、暑くないですか?」

 いわれてみると、確かに暑い。
 気づけば、あたりは揺れの前より、だいぶ明るくなっていた。
 まぶしい、体がひりひりしてきた、と参列者もパニックになり始めた。
 そんなみんなを、神父様がすっと片手を挙げて落ち着かせる。 

「皆さん、どうやらここはもう駄目です。安全な場所に移住しましょう」

 神父様いわく、神に約束された塵と埃の大地という地上の楽園があるらしい。
 我々はその地をめざして歩き始めた。
 結婚式のつづきは、どうやらずっと先になりそうだ。

「まあいいじゃないか、お互い生きているんだし」
 彼が優しく慰めてくれた。
 それもそうだ。


******
「ただいま〜。げっ、母ちゃん! 来てたの!?」
「ふん、どんなちゃんとした大学生活を送ってるかと思ったら、ぜんぜんできてないじゃない! そうそう、ふとんほしといたわよ。あんなせんべい布団、そのうちダニがわくわよ! もうわいてるかもね!」


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