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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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告白の続きを

14/08/24 コンテスト(テーマ):第六十三回 時空モノガタリ文学賞【 告白 】 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2053

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 大輔は通勤帰りに書店に立ち寄った。その支払い時に、並べられてあるイベントパンフを手に取ってみる。
 ――新進気鋭の女流画家・花井ミツ子の個展開催――
 これを目にした大輔の身体に緊張が走る。なぜならミツ子は初恋の人。そして今も恋心を抱いている。
 ――運命に翻弄された過去を捨て、私は未来へと踏み出したい。キャンバスに、そんな思いをぶつけてきました。――
 開催にあたってのミツ子の思いが載せられてある。大輔はこのミツ子の苦悩がわかるような気がする。

 あれは高校二年生の夏休みのことだった。
 当時大輔には誠という親友がいた。誠の父は鉄工所を営み、経済的に恵まれいた。一方大輔は母子家庭で貧しかった。そのせいか誠の元気良さが目映く、それでも負けないぞと共に行動していた。
 その誠のガールフレンドがミツ子だった。白いブラウスに紺のスカート、うなじが透き通るように白く、後れ毛がくるりと巻いていた。清純、しかし意志を貫く女学生だった。だが、大輔が恋したミツ子はすでに誠の彼女、そのためいつもミツ子を目で追うだけだった。
 そして夏休みも後半に突入したある日、誠も大輔も自由研究が出来上がっていない。そこで美術部のミツ子を頼り、デッサンをしようとなった。しかし、絵を描くなんて、と大輔は自信がなく、誠の後から美術室へと入って行った。するとミツ子がブルータスの石膏像に向き合っていた。
 ようこそとミツ子は大人っぽく微笑み、陸上部の大輔君がデッサンに挑むなんて、もう走れなくなったの? と悪戯っぽく訊いてきた。これにドギマギし、目を逸らした視線の先に、ミツ子が描いたブルータスの力強い姿があった。大輔は思わず、これで飯食って行けるぜ、と下品に吐いてしまった。ミツ子はただコクリと頷き、これを使ってと画用紙と鉛筆を手渡してくれた。
 それから1時間が経過、男子二人は描き終えた。誠のデッサンはそこそこの出来映えだ。しかし大輔の作品は、まるでロボットね、大輔君、妄想で描いたらダメよ、とミツ子がぷぷぷと吹き出す。大輔はへへへと頭を掻くしかなかった。
 そんな時に、誠が自分の作品の上に鉛筆を走らせた。
 ミツ子が大好きです。だから、大人になったら……、と。

 これを読んだミツ子、そこで止めて! と絶叫し、後は気が狂ったようにナイフで絵を切り裂いた。そして、もう会わないことにしましょう、と誠に告げ、美術室から出て行った。
 それはあまりにも突然の出来事だった。
 しかし、なぜ?
 大輔はその理由を卒業してから知った。要は誠とミツ子は異母兄弟だったのだ。
 ミツ子を女性として愛することは許されない、誠はそんな禁断の恋に落ちてしまった。そして苦悩の果てに命を絶った。
 ミツ子も深い傷を負ったことは確かだ。それでも絵を描くことに没頭し、命を繋いできたように思われる。
 そんなミツ子が初めて個展を開くという。一体どんな絵を描いてきたのだろうか? 大輔は思いきって会場へと出掛けた。だがミツ子に会うつもりはない。きっと美術室の誠の告白で、心の闇へと落ち、そこからやっと這い上がろうとしている。それを邪魔したくなかったからだ。

 想像していた通り、展示作品はあの時のブルータスのように力強く描かれ、素晴らしいものばかりだった。そして最後のコーナーへと入った時、大輔は我が目を疑った。
 あの時の3枚のデッサン、すなわちミツ子のブルータス画と大輔のロボット絵、それに加え、ズタズタに切り裂かれた、つまり――ミツ子が大好きです。だから、大人になったら――と加筆された誠の絵が創作の原点として紹介されていた。
 鑑賞者には理解できないだろう。だが大輔にはわかる。誠が突然思い立ち、綴ろうとした告白、そこからミツ子のすべてが壊れた。だが最近、あれは単に青春の1ページ、そう考えられるようになったのではないだろうか。

「ひょっとして、大輔君?」
 そんな時、背後から声が。大輔が振り返ると、あの美術室にいたミツ子と同じ眼差しの女性が立っていた。大輔はフラッシュバックし、呆然と。「幽霊じゃないんだから」とミツ子は微笑み、ここまでの道程を一人喋った。大輔はそれに頷くだけだったが、嬉しかった。やがて時間となり、大輔はミツ子に暇を告げた。するとミツ子が気恥ずかしそうに囁く。
「告白の続きを、大輔君の絵の上に書いて欲しいの」と。
 確かに誠の告白は未完のままだ。ここは親友に代わって完結させるべきなのかも知れない。しかし二人は異母兄弟。どう終わらせるべきか大輔は迷った。そして遂に、大輔は男の意を決した。
 ロボットのような、高校時代のブルータスの絵の上に、まず――ミツ子が大好きです。だから、大人になったら、と筆を走らせた。それから深呼吸し、告白の続きを書き込んだのだった。

 ミツ子を奪い去ります。 大輔より


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このストーリーに関するコメント

14/08/25 草愛やし美

鮎風游様、拝読しました。

ミツ子さんは、もし兄妹でなければ、どちらの男性を選んだのかしらと、少し意地悪なことを考えてしまった私は、ミーハーかもですね。たぶん、ふたりとも好きだったのではないかと……かってな妄想を。苦笑

いろいろ想像を掻き立てられ興味持てる内容で面白かったです。オチで大輔は、何て書くのだろうと思いました、難しい告白場面ですが、粋な言葉で良かったなあと思いました。

14/08/25 そらの珊瑚

鮎風 遊さん、拝読しました。

ミツ子の時間は高校生のその時からずっと同じように続いていたのかもしれないなあと思いま下。
この告白でどういう答えを出すのかわかりませんが、終止符を打って、新しい時間を生きてほしいなあと思います。

14/08/25 泡沫恋歌

鮎風 遊 様、拝読しました。

二人の男性の想いがひとつの作品の中に綴られているんですね。
ミツ子さんは罪な人だと思うわ。

ミツ子を奪い去ります。 大輔より

生き残った者の勝ち! 最後は大輔と幸せになって欲しいです。

14/08/28 鮎風 遊

草藍さん

コメントありがとうございます。
もし兄弟でなければ、どこかで誠とは破綻が。
そして最後は大輔に、とどうしても大輔を応援したくなるわけでして。

これ、あかんかな?

14/08/28 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメントありがとうございます。
そうですよね、時として時間は止まったままになるのですよね。
ミツ子も大輔も、これで未来へと進めることになりました。

14/08/28 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

そうですね、生きた者勝ち。
しかし、まだミツ子は奪い去りますの告白返しをしていません。
一体どう返すのでしょうね。
大輔の思い通りになるかどうかはわかりません。

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