1. トップページ
  2. 君に伝える僕の言葉は

ゆうなぎ 真白さん

恋愛ものの短編が大好きです。

性別 女性
将来の夢 将来、自分の子供に私が書いた物語を読んでもらうこと。
座右の銘 「死ぬこと以外はかすり傷」

投稿済みの作品

1

君に伝える僕の言葉は

14/08/11 コンテスト(テーマ):第六十三回 時空モノガタリ文学賞【 告白 】 コメント:1件 ゆうなぎ 真白 閲覧数:957

この作品を評価する

 世界は簡単に変わる、と理佳は教室に夕方のオレンジ色のひかりを入れる窓から手を出して言った。
 桜が舞う、卯月のことだ。
「どういうこと?」
「あのね、好きな人ができると世界は簡単に変わるの」
 それは僕の知らない顔だった。
 そんな顔見たことない。そして僕は確信した。
 理佳は、確かに恋をしている。
 僕はその事実にどうしようもなく焦った。握りしめた両手の中に感じる手汗がやけに不快だ。
 僕と理佳は名前をつけるには微妙な関係だった。
 ただの友達というには近すぎるし、幼馴染というには中途半端。ドラマやアニメにでてくるような生まれた時からいつも一緒という関係ではない。
 小学四年生に出会って、五年生ではクラスがバラバラになって、六年生にはまた一緒のクラスになった。小学校を卒業すると、中学でもまた同じ学校に通って、そこでも二年間同じクラスになって……そうして、今同じ高校で同じ教室にいる。
 同じクラスになると苗字の関係で四月は必ず席が近くなった。同じ苗字が近いからという理由で一緒の班になることも多い。だから僕らはよく話す。席替えをしても、昔から知っていて明るい理佳と話すことは少なくなかった。
 そんな曖昧な関係だから、入学して数日経った今も、こうして二人きりの教室でも息苦しくなく、むしろ心地よささえ感じながら僕と理佳は話していた。それなのに理佳のたった一言で、心地よさはどこかへ吹き飛び、僕の心臓は早鐘を鳴らしている。それが五月蠅くて仕方がない。
「逞くんは好きな人いないの?」
 その質問にどんな返事をしていいか迷った。
 僕は理佳を特別に思っている。でもそれが恋愛的なものなのか、友情的なものなのか僕にはわからなかった。
「私はいるよ」
 何て言えばいいんだろうと考えている僕を置いて、理佳は言った。どうやら僕の答え何てどうでもよかったらしい。
 そこでまた僕はどうしようと頭を悩ませた。
 これにはどう答えたらいいんだろう。誰? と気安く尋ねていいのか。それとも適当に相槌を打って別の話題に変えたほうがいいのか。何か冗談を言ったほうがいいのか。例えば、その
「それって僕だったりする?」
 とか……。って、え?
 理佳が大きな目をさらに大きくして、僕を見ている。桜色の小さな唇が少しだけ開いていて、赤い舌がほんの少し見えた。って、そこに気を取られている場合じゃない。落ち着け。
 今、僕はなんて言った?
 え? 僕だったりする? はぁ? なんの冗談だ。何を言っているんだ、僕は。ちょっと待て、ちょっと待ってくれ。
 パニック状態の僕は理佳が何か口にする前に、何らかの対応を取らなければと思ってぐちゃぐちゃな頭をさらにぐちゃぐちゃにして考えていた。でもそんな状態でとてもじゃないけど、良い答えなんて見つからない。
「逞くん、」
 理佳が口を開いてしまった。
 ちょっと待ってくれ、理佳。ほんの少しでいい。僕に考える時間を、撤回する時間をくれ。
 こんな冗談の延長みたいな言葉じゃなくて、もっとちゃんとした言葉を君にあげるから!
 あれ? と自分の思考に首をかしげたのと、理佳が笑って言ったのはほぼ同時だった。
「そうだよ! 逞くんだよ、私の好きな人!」
「僕は、理佳が好きなんだ」

 あぁ、理佳の言うとおりだ。
 こうしてこんなにも簡単に、あっけなく、僕の世界は変わった。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

14/08/11 夏日 純希

こういうお話は、微笑ましくて好きです。
恋愛は世界を変えますよね。ほんとに。
ごちそうさまでした(笑)

ログイン