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タックさん

何を書いても平凡なのが悲しい。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 明日の自分に期待は持たない。

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放課後、想いは校舎裏で

14/07/31 コンテスト(テーマ):第六十三回 時空モノガタリ文学賞【 告白 】 コメント:8件 タック 閲覧数:1262

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吹きぬける微風が髪をゆらし、汗にぬれた首筋をそっとなでていく。
抜けるように青い空は夕方間近といえど衰えを見せず、白い雲は日光に透きとおり柔らかそうに漂っていた。  

湿り気のある、校舎裏の地面。
足を少し動かすだけで、細かい砂利が音をたてる。
その音も緊張した空気のなかに溶けていき、ふたりの交わらない視線だけが、しずかで人のない校舎裏には残された。

(……どうしよう。はやく言わなきゃ。はやくしないと、変に思われちゃう)

焦りが背中を押し、ミホは口を開こうと顔をあげる。
しかし、目の前の彼にのどはキュッと閉めつけられ、くちびるを噛んでは、うつむいてしまう。その繰り返しが、校舎裏の風景、そしてミホの、情けなくなるほど縮められた心のあり方だった。

校舎そばの木には何匹かのセミがとまり、命を燃やすように、けたたましく鳴いていた。勇気のでない自分を責めている。ミホには、そう思えて仕方がなかった。





彼とは違うクラスだった。話したことも近づいたこともない人だった。
彼の姿を見られるのは、きまって遠い場所。
ミホのクラスの真下で、彼が部活に精をだしているときだけだった。

最初は友人を待つあいだの暇つぶしに過ぎなかった。
でもそれがしっかりとした目的に変わるまでは、さほどの時間がかからなかった。
楽しそうにテニスラケットを振り、大勢いる部員のなかでも目立っていた彼。
容姿もそうだったけれど、溌剌とした自分にはない充実した姿に、ミホはいつしか恋心をいだきはじめていた。

――でも、彼はきっとわたしなんて知らない。わたしなんて、そばにもいられないんだ。

仲間にかこまれ、人のとだえることのない彼の世界がミホには遠かった。
だからミホは恋心をあこがれに無理やりに変換して、満足するしか、方法はなかった。
声をかけようなんて思いすらしなかった。まして付き合いたいなんて、考えもしなかった。
彼はあこがれで、それは離れているからこそあこがれなのだと、弱い心で強く納得していたのだった。

――夕日のなかの、テニスコート。かがやく彼を見つめる自分。
その行為に、いつしか悲しさを覚えはじめていたとき。
ミホの想いを知ったテニス部の親友のはからいで、チャンスは前ぶれもなく、おとずれたのだった。





「……あのさ」

びくりと、小さな肩がふるえる。そろそろと顔をあげた先には、彼のまっすぐな視線。その目にミホは、うつむくことさえできなくなった。

彼がぽつりと、話しだす。低音だが、優しさのこもった声だった。

「あの、いつも窓から練習、見てたよね。オレ、ずっと気になっててさ。最初はあきないのかな、とか、楽しいのかな、とか思うぐらいだったんだけど、そのうちに、たまに君がいないときとか、寂しく思うようになったんだ。……だから、今日。君がここで待ってるって聞いて、オレ……」

(え? ……それって)
 
恥ずかしそうに目をふせ、わずかにうかがえる顔には赤みのさしている、彼の姿。
その突然のことに、ミホの頭はぐるぐると空転し、考えは形にならなかった。
しかし、彼の言葉が理解されるにつれ、心臓は落ちつきを見せはじめ。
背中を押すのがあせりから勇気に変わったのを、ミホは感じていた。

「……あ、あの!」

ミホの声に、彼は跳ねるように目を向ける。
そのことに胸はあいかわらず鼓動したけれど。
障壁はもうとっくに、心からはとり除かれていて。
彼の向こうの空はひたすらに青い。ふたりの静かな、息をはく音。
そして顔を赤く染めながら、ミホははっきりと、彼に想いを告げた。

「……あの、わたし、わたし、ずっと、あなたの、――あなたの、体操服の匂い、ずっと嗅いでました!」


…………………。


…………………。


…………………?
   

ひたすらに、青い空。その下の彼の、ぽかんとした、表情。
――なにが、起きたんだろう? そんな唖然に、校舎裏の時間は停止した。

その表情を、恋に盲目なミホは、別の意味にとらえて。
かくして傷口は、ひろがっていくばかりだった。

「あ、か、かんちがいしないでください。わたしの想いは、それだけじゃないんです。わたし、あなたの室内履きの匂いとかも嗅いでましたし、実は中じきも、こっそりわたしのと交換してました。あ、あと、あなたが飲み終えた缶ジュースとか、ゴミ箱から取り出して、飲み口なめて、イェーイ、間接キスだ! ヒャッホーイ! イヤッホー! なんてひとり、さわいでましたし、あとは、えーと、あなたの捨てたガムを……」
 
――そうして。あごに人さし指をあてながら、次々と行為を告白するミホに。

一歩踏みだし、小さな肩に手をおいて。

爽やかな笑顔で、彼は言うのだ。


「――ごめん、オレ、今日は帰るよ。中じきだけ、後で返してね」


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このストーリーに関するコメント

14/08/01 クナリ

何か、切ないラストになるのかなーなんて勝手に想像しながら読んでいたのですが…。
告白も、やり方しだいなのですね…。
二人は、好き合っていたはずなのに…。
こういう、やりたいことをやった、という感じの掌編は好きです(違いますかね(^^;))。

14/08/02 草愛やし美

えー!! タック様、このオチですか。えええーーー!! 何度も叫んじゃいそうです。ええええええええええーーーー、どうして。そうなるの? 

だけど、人の好みですから、フェチなのねえ、愛されているからこそなんだけどなあ、凄く残念だあ〜〜〜惜しいよねえ。奇抜な話で度肝抜かれました、面白かったです。

14/08/02 夏日 純希

僕の少女漫画モードの気持ちを返して下さい(笑)

>あ、か、かんちがいしないでください。
勘違いしてんのはどっちやねん、と突っ込み入れてしまいました。

それにしても、彼はなぜ中敷きを返して欲しかったんだろう。
僕なら気味が悪いから使わないなぁ。。。
ということは?!もしかして、彼も!?
なーんて、邪推してしまって仕方がない

14/08/07 タック

遅れてしまい申し訳ありません。クナリさん、コメントありがとうございます。

おっしゃる通りで、オチを書きたいがために物語を作りました。
本当はもっと変態っぽくしたかったのですが、字数や、その他もろもろを考えると、まあ……といった感じです。
自分の中では楽しく書けたので、よかったのですが。(まともな恋愛小説なんて作れそうもありませんし……。ゲフンゲフン)
 
また、ご一読いただけたら幸いです。ありがとうございました。

14/08/08 タック

遅れてしまい申し訳ありません。草藍さん、コメントありがとうございます。

叫ばせてしまいすみません(笑)
テーマ『告白』ということで「よし、キュンとするような恋愛を書いてみよう!」と思い立った結果がこれです。なんでこうなったんでしょう。自分でも不思議です。
やっぱり、こんな話しか書けないんだな、と自分に幻滅したようでもあり、書いてて楽しかったからいいじゃん、と思うようでもあり……。
もし、楽しんでいただけたなら幸いです。
ご一読、ありがとうございました。

14/08/08 タック

遅れてしまい申し訳ありません。夏日 純希さん、コメントありがとうございます。

少女漫画モードに入っていただけたなら、こちらとしてもしてやったりの気持ちです。
なんとか普通の恋愛小説っぽく……、と思いながら書いたので、読み返すとあまりにテンプレみたいな感じもしますが、変態部分を楽しみながら作れたので、まあ、いいか、という感じです。(本当はもっとエグくしたかったのですが、色々とお叱りもありそうですし……。こんなもんかな、と思います)

中敷きは、たぶんあれですね。

(え? あの子、俺の中敷きで何してんだろう? 普通に履いてるだけ? それで済むのか? まさか匂いを? いや、口に入れたり……)

というような悪しき想像が膨らんでしまうので、その元凶を取り除きたい、そんな心理が働いたのではと思います。捨てた缶を舐めるような子ですからね、彼女。彼も、怖かったのだと思います。

ご一読、ありがとうございました。またお読みいただければ幸いです。今後ともよろしくお願いします。

14/08/24 光石七

拝読しました。
何というオチ(笑) 真面目に告白するミホと最後の彼が最高です♪
楽しませていただきました、ありがとうございます。

14/08/27 タック

光石七さん、コメントありがとうございます。

オチ一発を書きたいがために、作ったものでした。
本当はまじめに書くはずだったのですが……どうしてこうなったのでしょう。よくわかりません。
楽しんで頂けたなら幸いです。
また、よろしければご一読ください。ありがとうございました。

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