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さがみのさん

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未来予知者の分岐点

14/07/29 コンテスト(テーマ):第六十二回コンテスト 【 未来 】 コメント:2件 さがみの 閲覧数:1111

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「未来が、見えない」
 私は狼狽した。 

 未来予知という能力を使った占い師を私は職業にしており、業界ではそれなりに名が知られているとの自負がある。しかし、いつものように依頼人の未来を視ようとしたところ、特定の月を境に未来が全く視えないことに気がついたのだった。
 その後も何度も未来を覗こうと試みたが、やはり視ることが出来ない。最初は能力が枯れたのかと思って、それこそ先の見えない将来に絶望したのだが、幸い近い未来ならば視れることを確認できたのだった。

 私は同業者のボブに相談した。
「なあ、ボブ。どうも未来視ができなくなってしまったようなんだ」
「それは朗報だな。俺の仕事が増える」
「冗談ではないんだ。正確には半年後の未来までは視られるのだが、それ以降が視れなくなってしまったんだよ」
「ずいぶんと中途半端な話だな。どれ、俺がお前の半年後を視てやるよ」
 ボブは私の手を取り能力を発動させたが、すぐに彼の顔が歪んだのだった。
「どういうことだ。まったく視えないな。お前、半年後に死ぬんじゃないか?」
「私も始めはそう思ったんだが、でも他人のも視えないんだ。おかしくないか?」
「確かに妙だな。おい、バーテン、ちょっと手を借りるぞ」
 バーテンの手を取ったボブの顔が更に曇った。そのあと立ち上がり、片っ端から客の腕を掴んでは能力を発動させる。が、顔色が悪くなるばかりだった。
「未来が視えない」

 このことはすぐに同業者間に広まった。ボブが国際未来視協会の長だったからだ。
 世界中の有力な未来視能力者は協会本部に集まった。そこで判ったことは、それまで視ることの出来た半年後以降の未来が、全員全く視えなくなってしまった、ということだった。
 大騒ぎとなった協会は、何日もかけて議論をし、一つの結論を導き出した。
『半年後、地球が滅亡するのだろう。だから半年後以降の未来が視れなくなったのだ』
 この報は世界を駆け巡った。未来視能力者の中には国家のお抱えの者も少なくなく、多くの国で地球滅亡が発表されたからだった。
 人々は恐慌に陥り、荒む者、諦める者、祈る者で溢れるなど、世界は閉塞していった。
 未来視能力者たちは何度も集い、何度も議論し、何度も未来を視ようとしたが、結果は変わらなかった。そして打開策が無いまま滅亡の月を迎えたのだった。

 私はボブに告げた。
「すまないが、今日でこの協会に来るのは最後にさせてもらう」
「おいおい、どうしてだ」
「今月で地球が滅亡するっていうのにおかしな話かもしれないが、妻が妊娠していてね。さっき入院先から連絡があって、予定よりも早く産まれてしまうかもしれないらしくて」
 予定日は来月だったのだが、何のいたずらか、偶然街を歩いていた妻の近くに隕石の欠片が落ちてきたらしい。直撃はしなかったものの、その大きな音に驚いた拍子に破水が始まってしまったという。私は、たとえ今月地球が無くなるのだとしても、自分の子どもに会っておきたかった。
「そうか、わかった。残り少ない時間を家族に捧げてやるんだな」
 そう言ってボブは、会議室へと戻っていった。

 病室に入った私は、赤子を抱いた妻と面会を果たした。種としての大仕事を終えた彼女の顔は誇らしげであった。
 私は複雑な想いを抱えながら、産まれたばかりの小さい手に触れた。
 途端、その子の未来のイメージが私に流入してきた。今月どころか、来月も一年後も十年後も、その先も。
 私は驚愕した。今月地球は滅ぶのではなかったのか。これは一体どういうことだ。
 急いで病院の談話スペースへと走り、このことをボブに連絡するため携帯電話の電源を入れた。連絡帳に登録された同業者の名前を探し当てたところで、テレビに速報が挿し込まれたのだった。
『レーダーで捉えられない隕石が落下し、国際未来視協会の建物に直撃。生存者は絶望的の模様』
 私は携帯電話を取り落とした。

 未来視という能力は、自分の死より先の未来は視ることができないらしい。
 半年前、私が未来視ができなくなったことをボブに伝え、ボブが協会の人間にそれを伝えることで、隕石の墜ちる日に協会の人間を会議室に集める、という未来を確定してしまったのだろう。その結果、協会の人間はその日に死んでしまうため、全員が以降の未来を視られなくなってしまったようだ。
 そして偶然にも、同じ隕石の欠片が原因となって私の妻が早産になったために、本来会議室に留まる予定だった私は隕石落下地点から大きく離れることができ、命を失うことが無くなって、今日以降の未来視ができるようになったのだろう。

 私は、私のせいで失われた同僚たちの命に心の中で詫びた。
 そして、未来がある奇跡に懺悔し、赤子の将来を精一杯祝福しよう、今ある命を優先させよう、そう自分に言い聞かせたのだった。


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このストーリーに関するコメント

14/08/06 さがみの

清水様

読んでいただき、また「おもしろかった」とのコメントをありがとうございます。
未来総研さんというスポンサーのコンテストなのに暗い結末というのはどうかと思ったのですが、楽しんでいただける人がいらっしゃったということで、一安心しました。

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